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8 オマケとマヌケー2

「あの、スマホ…」


「はぁ? 没収って言ったでしょ」


「それ無いと凄く困るんですが…」


「良いじゃん。困れば」


「や、やだよ」


 後を追いかける形で一階へと移動。2人して客間へとやって来た。


「女の子の下半身見てニヤついてるとかアホなの?」


「うっ…」


「これ、この前連れて来た後輩の子?」


「そ、そうです」


「ふ~ん…」


 返却を申請するが拒まれてしまう。それどころか理不尽な尋問が始まってしまった。


「いつからこんな事してたわけ?」


「え~と、最近…」


「この写真、削除して良い?」


「あ、それサイトに貼られてる画像だから。送って貰ったのじゃないんだよ」


「ん?」


 言葉に反応して彼女の視線が画面に移る。目を細める仕草と共に。


「……なるほど、そういう事か」


「という訳でその写真は消せません。残念でした」


「ちっ…」


 仕返しとばかりに皮肉めいた言葉を投下。その行為に返ってきたのは不快さを表した舌打ちだった。


「わああぁあぁぁっ! な、何する気さ!?」


「ブッ壊す」


「やめてくれぇ!」


「今の反抗的な態度がムカついた。雅人のクセに生意気」


「そんな…」


 大切な私物が頭上に移動する。破壊行為を阻止しようと無我夢中で飛びついた。


「きゃあっ!? 何すんのよ」


「返してくれって」


「やだ。この場で叩き割ってやるんだから!」


「そんな事されたら困るし」


「とか言ってドサクサ紛れに私に抱きつきたいだけなクセに」


「ち、違…」


 顔を熱くしながらも奪い返す事に成功する。先程と攻守を入れ替えた形で。


「あぁ~ん……私のオモチャ」


「違う」


「ケチ。お兄ちゃんなんだから妹に優しくしなさいよ」


「それとこれとは話が別…」


 すぐさま外傷の有無を確認。特に目立った傷は見当たらなかった。


「ねぇ、さっきのサイトの名前教えてよ」


「どうして?」


「もちろん私も登録するからに決まってんじゃん、ひひひ」


「えぇ…」


「雅人の交友関係、全て調べるから」


「や、やめてくれ」


 彼女がいやらしい笑みを浮かべる。背筋が凍りつきそうな表情を。部屋には無断で入って来るし、私物は無理やり強奪。もはやプライバシーという言葉が消え失せていた。


「ふぅ…」


 客間を出るた後は階段を上がる。溜め息をつきながら自室へと戻ってきた。


「ん?」


 そしてサイト巡りを再開しようとしたタイミング良く電話がかかってくる。スカートの中をなかなか見せてくれなかった相手から。


「もしもし」


『あ、先輩ですか?』


「どしたの?」


『あれ? そっちから着信があったからかけ直したんですけど』


「嘘!?」


 どうやら数分前にこちらから通話を試みていたらしい。タイミング的に考えて華恋と揉み合っている時だろう。暴れまわっていたせいで誤作動が起きていた。


「あの教えてもらったサイトさ、結構楽しいね。毎日お世話になってるよ」


『それはどうもです。お役に立てて何より』


 せっかくなのでそのまま会話を開始する。お礼の言葉を告げながら。


「ただ交友関係が狭いからもっとたくさんの人と知り合いになりたいと思って」


『友達を増やしたいって事ですか?』


「そうそう」


『学校の知り合いとかで登録してる人を探してみてはどうでしょう』


「それはもうやってみた。でも誰も見つけられなかったんだよね」


『……そうですか』


 ネットの世界でも消極的。何より要領が悪かった。


『ていうか先輩、サイト内で友達を増やしたいならもっと活動しないと』


「活動? どういう風に?」


『プロフィールの設定以外、何もしてないじゃないですか。呟いたり日記を書いたりしないと業者と間違われる可能性がありますよ?』


「は、はぁ…」


 指摘されて気付いたがまともに活動していない。行っている事と言えば優奈ちゃんや丸山くんの日記にコメントを残す作業だけ。


「日記って具体的にはどういう事を書けば良いのかな?」


『何でも良いんですよ。今日の出来事とか趣味の紹介とか』


「バイト先にいる後輩の失態を写真付きで紹介する記事とかはどうでしょう」


『すいません、ちょっと何言ってるか分からないです。とりあえず今度会った時にトレイで思い切り殴っても良いですか?』


「ご、ごめんなさい…」


『でも写真を貼り付けるアイデアは良いですね。適当に撮影した物を使って日記を書くとか』


「それなら出来そうかな。ただ画像の載せ方が分からないけど」


 周りの人間が当たり前にこなしている作業を年下に指導してもらう。本来なら情けない出来事なハズなのに不思議と劣等感は湧いてこなかった。


『私が直接行って教えてあげましょうか?』


「え? 良いの?」


『良いですよ。明日は休みですけど先輩は用事ありますか?』


「ないない。ヒマでございます」


『じゃあ明日の昼にそっち行きます。借りっぱなしの漫画も持って行きますから』


「ん、了解」


 思わぬ流れで約束を取り付ける。プライベートでの面会の取り決めを。


「へへへ…」


 用事が済んだ後は通話を切断。切り替えた画面を見ながら声を漏らした。


 うちに来ると言い出した彼女の心境を考えると前回の騒動については気にしていないと考えて構わないだろう。むしろ好意的に捉えてもいいかもしれない。

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