8 オマケとマヌケー1
「へへへ…」
ベッドに寝転がりながらスマホを弄る。いつものSNSサイトの徘徊目的で。
相変わらずマイページに表示される友達は2人しかいない。もっと知り合いを増やしたかったが、どうやって他人にコンタクトをとれば良いのかが分からなかった。
絡みもない人にいきなり友達申請を出すのはここではマナー違反らしい。かといって何もしなければ進展もしない。基本的にはリアルの知り合いと繋がる為の場所なので現実に友達がいない人はサイト内でもぼっちだった。
「……ま、いっか」
それでも不満は特に無い。今のクラスで新しい友達を作れたし、同世代の女の子と繋がれているから。
「綺麗な部屋だなぁ…」
暇なので優奈ちゃんの日記を読み漁る。過去の記事も含めて。それは3日に一度ぐらいのペースで更新される近況報告。とても簡易的な文章だったが彼女の私生活を垣間見るには充分すぎる内容だった。
「お?」
スクロールしている途中、画像一覧の中に本人が写っている写真を見つける。誰かの部屋で友達と楽しそうに笑っている姿を。問題はその構図。カメラを床に置いて撮影したのか座っていた彼女のスカートの中が見えそうだった。
「んっ…」
画面に顔を近付ける。太ももの奥を覗こうと。けれど暗くて肝心な部分が見えない。画像を拡大してみたが下半身が大きく表示されるだけだった。
「やっふ~」
「う、うわぁっ!!」
「ん?」
下心を増幅させていると部屋のドアが開く。華恋の陽気な声と共に。
「入ってくるならノックぐらいしてくれよ!」
「何やってたの? 随分と楽しそうな顔してたけど」
「ゲ、ゲーム…」
「どんなゲーム?」
「え~と…」
咄嗟にスマホをポケットの中に移動。同時に窓の外に目線を逸らした。
「見せて」
「え?」
「スマホ。何のゲームやってたのか」
狼狽えていると彼女が真っ直ぐに手を伸ばしてくる。好奇心満載の笑顔を浮かべて。
「そ、それはちょっと…」
「何でよ?」
「プライバシーの侵害ってヤツ?」
表示されている画面を見られる訳にはいかない。変態の烙印を押されてしまうから。
「とうっ!」
「うわあっ!?」
「アンタにプライバシーなんか無い。大人しく見せなさいよ」
廊下に逃げ出そうとベッドに手を突いて移動。その瞬間に彼女が体の上に飛び乗ってきた。
「いてっ、いててっ!?」
「うらうらうらうらぁっ!!」
「頼むからどいてくれ、重たい!」
「スマホよこしたらどいてあげる。ほれ!」
「だから無理なんだってば!」
馬乗りになって貴重品を奪い取ろうとしてくる。ベッドをリングにした謎の攻防戦を展開。
はねのけようにも体勢がキツいので出来ない。更に彼女はスカートだったのでお尻の感触がダイレクトに伝わってきた。
「あっ!」
「も~らい」
「ちょ……返して」
抗っていると端末を奪い取られてしまう。あまりにも呆気なく。
「良いじゃん、減るもんじゃないんだし」
「ダメなんだよぉ…」
「……ん?」
彼女が食い入るように画面を直視し始めた。眉をひそめながら。
「あぁ…」
もうこうなっては電源が勝手に落ちているキセキを期待するしかない。微かな希望に祈りを込めた。
「……没収」
「へ?」
「さ~て、下に戻ろっかなぁ」
「ちょ、ちょっと!?」
制裁を覚悟していると華恋が立ち上がって部屋を出ていく。身勝手すぎる台詞を口にして。