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6 メガネとイケメンー4

「お、おはよ」


「……はよ」


 そして翌日、休み時間にガンナーこと丸山くんに近付く。挨拶目的で。


「ん…」


 お互いにたどたどしい態度全開。目をハッキリと合わせる事が出来なかった。


「あ……えと、昨日はありがとうね。申請承認してくれて」


「別に…」


「まさかクラスメートがいるとは思わなかったよ。ビックリしちゃった」


「そ、そうなんだ」


「僕は登録したばかりだからまだ分からない事あるんだけど教えてくれるかな?」


「……良いよ」


 それでもどうにかしてやり取りを進めていく。人見知りなりに。


「うおりゃあっ!! 世界史の授業始めるぞ、うおりゃあっ!!」


「あ……じゃ、じゃあまたね」


「うん…」


 だが会話中にタイミング悪く先生が登場。仕方ないので自分の席へと戻った。


「へへへ…」


 教室を移動しながら密かに笑う。なんとなく彼とは上手くやっていけそうな気がして。


 とはいえ1つだけ懸念材料が存在。また昨日みたいに掃除に遅刻してきて班の空気を悪くしてしまうのではないかという事だ。



「……あ」


 昼休み後に駐輪場に向かう。不安な気持ちを抱えながら。


 するとそこに期待していた人物を発見。イケメン君とは離れた場所にひっそりと丸山くんが存在していた。


「ん…」


「……へへ」


 小さく手を掲げてきたので同じポーズで返す。愛想笑いを浮かべて。


 更に彼だけではなく女子2人も参上する事に。結成初日以来、初めてまともな班活動を行う事が出来た。


「雅人~」


「ん?」


 枝や葉をまとめていると名前を呼ばれる。甲高い女子の声に。


「あれ? もう終わったの?」


「これ捨てに行くとこ。そっちは?」


「こっちももう終わりかな」


「ならこの中に入れちゃいなよ。まだ余裕あるし」


「ん、助かる」


 振り向いた先にゴミ袋を持った華恋の姿を発見。彼女は班が別なので教室担当だった。どうやらわざわざ寄ってくれたらしい。言葉通りかき集めたゴミを袋の中に入れさせてもらった。


「あ……それ持っていくよ」


「え? え?」


 入口を縛っているとずっと寡黙だったイケメン君が口を開く。昨日の愚痴をこぼしていた時とは違い、優しい口調で。


「あとやっておくから」


「けど…」


 そして戸惑っている間に彼は行動開始。華恋から袋を奪い取ったかと思えばスタスタと歩き出してしまった。


「待って待って」


 すぐにその後を追いかける。いくら何でも人任せにして帰る訳にはいかないから。


「あ、ありがとうね」


「……別に」


 集積所にやってくるとやや乱暴な形で投棄。妹の代わりにお礼を述べたが返ってきたのはあまりにも素っ気ない返事だった。




「ただいまぁ」


 帰宅後は晩御飯と風呂を早々に済ませて自室に引っ込む。スマホを取り出し昨日と同じページを表示。


 今日は1日中このサイトの事を考えていた程。授業中にも頭から離れないレベルのハマり具合だった。


「しししし…」


 マイページにアクセスすると優奈ちゃんの日記が更新されている事に気付く。書かれていた内容は学校での出来事や今日食べた料理の品目など。


 ニヤニヤしながらコメントを投下。女の子の秘密を覗いたような気がして恥ずかしくなった。


「ん~と…」


 そしてそのままガンナーこと丸山くんとメッセージのやり取りを開始。基本的には昨日の続きでハマっていたゲームについての話題を。最初はぎこちないコメントの連続だったが一度会話を始めればスムーズな流れに。途中からは敬語をやめてタメ口だった。


『鬼頭くんってちょっと怖くない?』


 ふいにクラスメートの話題を振られる。存在を畏怖するような内容の文面で。


「……誰だっけ」


 一瞬それが誰の事を指しているのか分からなかった。けれど自分達に共通している男性といえば1人しか該当しない。同じ班に振り分けられているイケメン君であろう。


「お~い」


「うわぁ!?」


 思考を巡らしていると突然背後から声をかけられる。そこにいたのはおさげ髪の妹だった。


「今日もまた遊びに来たよ~」


「だからいきなり入ってこないでくれよ。ノックがルールでしょ?」


「ん? 何してるの?」


「えっと、メッセージのやり取りしてた」


「え? まさか女の人!?」


「いや、男だけど」


「………」


 言い訳に対して返ってきたのは呆れたような顔付き。何を言われるか身構えていたが彼女はまたしても無言のまま退出してしまった。


「ふぅ、助かったぁ…」


 乱入者を追い払ったので再び友人との会話に戻る。意見の応酬に。


「なるほど…」


 どうやら丸山くんは他のメンバーもサボっていると思って清掃場所に遅れてやって来たらしい。女子の性格を理解している立場からしたら納得だった。


 ただその情報とは別に気掛かりが存在。突然持ち出された男子生徒の名前が。


「鬼頭…」


 喫茶店で働いている後輩と同じ名字。もしかしたら家族か、あるいは親戚関係なのかもしれない。ネット経由ではなく本人にメッセージで尋ねてみた。


『はい、兄が1人いますよ~』


「えぇ…」


 すぐに届いた返事に拍子抜けしてしまう。予想が見事に当たってしまったので。


 以前に家族構成の話になった時は1人っ子だと語っていたのに。自分の記憶違いでなければ。


「……こんな偶然ってあるんだろうか」


 詳しい話を聞くとそのお兄さんは海城高校の生徒との事。優奈ちゃんの兄で高校生ならば、ほぼ間違いなく3年生だ。


 意外な場所で意外な繋がりを発見してしまう。好奇心が激しく掻き立てられた。

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