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6 メガネとイケメンー3

「ここに学校名を入れると検索出来ますよ」


「ふむふむ」


「表示された人達のプロフィールを見て同級生を探してみてください。年代別の表示も可能です」


「わかった」


 バイトが終わると早速言われたサイトに登録する。喫茶店の近くにあるコンビニでたむろして。


「あとニュースや天気予報を見る時はここから…」


「いや、この機能はあんまり使わないかな」


「プロフィールを弄る時はここから出来ます」


「プロフィールって書かないとダメなの?」


「設定しないと相手に誰なのか理解してもらえないですよ? 私は先輩だと分かってるから良いですが」


「あ、そっか」


 登録後は使い方の勉強会が開始。後輩による優しい指導が始まった。


「アカウント名には本名をそのまま使わない方が良いです。少し弄るか、全く違う名前にしてください」


「どうして本名ダメなんだろ。ゲームだとそのまま自分の名前を使う事が多いのに」


「個人情報だからですよ。どこで誰が見てるか分からないですからね」


「物騒な世の中だなぁ」


 それから大まかな説明を聞くと解散。駅までやって来て別れた。




「とうっ!」


 食事後にべッドに寝転がる。手には充電中のスマホを装備して。


「みんな、派手だ…」


 ローマ字でMASATOと登録するとサイト内を徘徊。同じ海城高校にいる生徒を物色し始めた。


「ん…」


 出てきたのは画像をプリクラや自撮りに設定してる人達がほとんど。中には恋人とキスをしている写真を堂々と掲載してる強者も存在。


 画面をスクロールして知り合いを探すが面識の無い人達ばかり。同級生だけに絞ってもクラスメートかどうかが不明な人だらけだった。


「ダメかぁ…」


 期待していた成果が出せなくてガッカリ。枕に顔を埋めて落胆した。


「なんだろ、これ…」


 表示された同級生の一覧を再チェックする。その途中でおかしなアカウントをチラホラ見つけた。個人を特定出来るような情報が記されてなく、それどころか画像もまったく無関係の物に設定している人物を。


「う~ん…」


 話しかけてみたいがその度胸は無い。いくら姿形が見えないとはいえ向こうにいるのはリアルに存在する人間だから。


 けれど自分が求めていたのはどちらかといえばこういうタイプ。非リア充組の人間だった。


「……どうしよっかな」


 接触しようか悩む。1人で考えていても埒があかないので後輩に相談してみる事に。彼女がくれた助言は『その人のサイトの利用状況を調べてみろ』だった。


「へぇ…」


 日記を書いているならその内容から性格を予測出来る。非公開にしている人は気の許せる相手以外の交流を望んでいないという事。


 ゲームばかりやっている人はそもそもやり取りを期待出来ない。以前の自分がこのタイプだ。更にサムネには顔を載せていなくても日記等に写真を公開してる人もいるとか。顔が分かれば個人の判別もグッと楽になった。


「よ~し…」


 アドバイス通りに同級生達のアカウントを調べ始める。まるで犯人を探す刑事にでもなったかのような気分で。


 彼女の言った通り日記の方には顔を出している人もいた。しかし詳しく調べても素性が不明な者も存在。日記も非公開でプロフィールも意味不明な言葉の羅列だから怪しさ満載だった。


「むぅ…」


 結局、同じクラスで仲良くなれそうな人物を見つけ出す事は叶わず。得られた成果はサイトの使い方のみ。


「ん?」


 気分転換に自分のマイページを確認。そこでとある異変を察知した。Yu-naという名前の他にガンナーという人からの足跡が付いていた事を。


「……誰だろう」


 Yu-naというのはこのサイトに誘ってくれた張本人。ガンナーというのは先ほど調べていた同級生の1人だった。しかも日記を非公開にしていた謎の人物。


 アクセス時間を確認するとほんの2、3分前に訪れたらしい。恐らく向こうも足跡を見て辿ってきたのだろう。


 そこからもう一度ガンナーという人物のアカウントにアクセス。すると面白い事が起きた。


 自分が足跡を付けると向こうもこちらに訪問する。交互にアクセスするの繰り返し。


「なんだこれ」


 思わずベッドの上で笑い転げた。見知らぬ誰かと鬼ごっこをやっている気がしてきて。


「……いやいや」


 けれど数回のやり取りの後に虚しい気分が襲いかかってくる。このガンナーという人物は素性を明かしていないし、自分もプロフィールを設定しただけ。これだとお互いに何者なのかが分からなかった。


「何か書いてみようかな…」


 勇気を出してコメントを投下してみる事に。初めましての挨拶と、自分が同じ学校の同級生だという内容を。


 どんなリアクションが返ってくるかは分からない。そもそも返事をしてくれるかが不明だった。


「お~い」


「うわぁ!?」


 緊張感と葛藤していると突然背後から声が飛んでくる。振り返った先にいたのはパジャマを着た香織だった。


「暇だから遊びに来たよ~」


「い、いきなり入って来ないでくれよ。ビックリしたじゃないか!」


「ん? 何やってたの?」


「い、いや……特には」


 咄嗟に持っていたスマホを隠す。目線を逸らしながら。


「……もしかしてエッチなサイト漁ってた?」


「そ、そんな訳ないじゃないか!」


「怪しい…」


「本当だって。仲良くしてくれる相手を探してただけだし」


「え? まさか女の人!?」


「いや、男だけど」


「………」


 彼女の表情が普段あまり見せない険しい物に変化。何を言われるかと身構えていたが無言で出ていってしまった。


「ふぅ、助かったぁ…」


 それから約5分後。コメントを残した事を後悔し始めた時にガンナーという人物から返事が届く。挨拶に対するお返しと、クラスメートである事を示唆するメッセージが。


「……クラスメート」


 どうやらこのガンナーという人物はこちらの素性を把握しているらしい。しかも名前からして男の可能性が高い。


 それから数回に渡るやり取りで何者かが判明。同じ班のメガネ君だった。


「なかなか良い人じゃないか」


 どうやら彼は名前を知ってくれていたみたいで気になって足跡を付けに来たんだとか。頻繁に掃除に遅刻して来たりするので印象はややマイナス傾向。だがこうして会話してみると意外に気が合う事に気付いた。


 小学生の時にハマっていた漫画やゲーム、中学時代に夢中になったバラエティー番組などほとんど一致。同い年だから当たり前なのだが語り合える人物が同じクラスにいた事が嬉しかった。


 メッセージで許可を貰ってサイト上でのリンクを結ぶ事に。どうやら彼も今のクラスに仲の良い友達がいなくて悩んでいたんだとか。


丸山(まるやま)……武人(たけと)


 友人になった人だけが分かる情報を読み上げる。本名を知ると彼の非公開になっていた日記を閲覧する事が出来た。


「すっげ…」


 ゲームの画面らしき画像か多数表示される。膨大な文字数で記された情報と共に。


 ほとんどが知らない作品だったが並々ならぬ執着心を持っている事は理解。風貌通りのゲームオタクだった。

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