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6 メガネとイケメンー2

「じゃあね~」


「ん、また後で」


 食べ終えると華恋と別れて駐輪場へと向かう。昼休み後の清掃活動の為に。


「ほっ」


 どうやら一番乗りだったらしく他の人間は不在。用具入れから竹ぼうきを取り出した後は散らばった木の枝や紙屑を集めていった。


「他の人達、まだ来てないの?」


「あ、うん。そうみたいだね」


「ちっ…」


 しばらくすると1人の男子が登場する。ポケットに手を突っ込んだイケイケな人物が。


「んっ、んっ」


 他にも男子1人、女子2人が同じ班だったがいつまで経っても現れない。彼らはいつもサボっていた。


 女子2人の方はヤンチャな性格だから納得出来る。不満はあるが。ただ残り1人の男子は見た目が地味なのでどこで何をしているかが謎だった。


「……ったく、サボんなよなぁ」


 少し離れた場所から愚痴が聞こえてくる。仕事を放棄しているクラスメート達を非難する意見が。


 名前は知らないが彼はモテそうな見た目とは裏腹にとても真面目だった。今まで一度も掃除をサボった事がないし、自分以上に真剣に取り組んでいる。雰囲気がチャラそうなのでそれが少し意外だった。


「ふ、2人だとキツいね」


「ん…」


 手を止めて声をかけてみる。少しだけ勇気を振り絞って。けれど期待していた返事は無し。ほうきを地面で擦る音だけが響いていた。


「あ…」


 微妙に気まずい空気になった所に1人の男子生徒が現れる。メガネをかけた大人しそうな人物が。


 彼は静かに横を通過すると用具入れに直行。遅れてきた行為を詫びる事なく清掃活動を始めた。


「おい、遅刻してきたのに何で黙ってんだよ」


「え?」


「もうチャイム鳴ってから5分以上経ってる。どうして一言も無しなんだよ」


「えっと…」


 そんな行動に業を煮やしたのか隣にいたイケメン男子が声をかける。威圧的な口調で。


「聞いてんのか、お前!」


 しかしメガネ男子からの返答は無し。一瞬だけ振り向いたがすぐに背を向けてきた。


「無視すんなよ。ちゃんと質問に答えろよな!」


「待って待って。彼にも用事があったんだよ、多分」


「……ちっ」


 詰め寄ろうとしたので割って入る。僅かな恐怖感を抱きながら。今度はしっかり声が届いたみたいで制止に成功。ただこちらに対しても敵対心を剥き出しにしてきた。


「う~ん…」


 場が気まずい。険悪なムードが漂っているのがハッキリと分かる。少し前まで他人だったという点を考慮したとしても酷すぎた。


 結局、女子2人が現れないまま清掃時間は終了。男子3人組の会話は軽い口論だけ。


 チャイムが鳴ると自動的に解散に。といってもクラスメートなので向かう先は同じだった。




「うはぁ…」


「どうしたんですか? 自分のアップした動画の閲覧数が1ヶ月経ってもゼロのユーザーみたいな顔して」


「……それ、どんな顔」


 放課後になるとバイトに勤しむ。身長の低い後輩と共に。


「私に相談出来る事なら聞きますけど」


「え~と、優奈ちゃんって友達いる?」


「はい? そりゃ、まぁ」


「友達は多い方? いなくて困った事とかある?」


「んん?」


 お客さんは平日にしては結構多い。ただ店長がいなかったのでのんびりと仕事していた。


「……というような事があってさ」


「それは大変でしたねぇ。掃除をサボるのは良くないです」


「いや、そうじゃなくて…」


「つまり気兼ねなく話しかけられる人物が欲しいって事ですか?」


「あ、うん」


「しかも相手は女子ではなく男子が良い……そうですよね?」


「おっしゃる通りでございます」


 今のクラスでの現状を打ち明ける。清掃時間に起きたトラブルも付け加えて。


「ん~……難しいですね、それは」


「僕に友達は作れないって事?」


「いえ、そうではなくて」


「ほ?」


「私がその場にいないからアドバイスのしようがないんですよ。クラスの雰囲気がどんな感じなのか分からないし」


「あぁ、なるほど」


 洗浄した食器類の水分をタオルで除去。会話しながらも手の動きは止めなかった。


「私が先輩の立場だったなら同じような境遇の人に声をかけてみるかなぁ」


「友達いなさそうな人?」


「はい。いつも1人でいるって事は、恐らくその人も誰かに話しかけられなくて困ってる可能性が高いですから」


「孤立してる者同士でつるんでみろって事か」


「手っ取り早いですからね。一番楽そうですし」


「そうなんだよねぇ、うん…」


 クラス替えの影響で友達と離れ離れになってしまった人は自分以外にもいるかもしれない。あぶれてしまった者同士でくっ付くのは悪くない作戦だった。


「ただ問題はその人と馬が合うかって事なんですよね」


「せっかく勇気を持って話しかけても趣味や価値観が合わなかったら付き合うの嫌だもんね。変に関係が悪化したら困るし」


「ですよね。好きで孤立してる人もいるでしょうから」


「声かけて『馴れ馴れしくすんな』って反発されたら嫌だもんなぁ」


「だから難しい問題なんですよ。友達を作るっていうのは」


「はぁ…」


 首を寝かせて天井を見上げる。現実逃避でもするかのように。


 常に華恋といるせいか感覚が微妙に麻痺。男同士の付き合い方が分からなくなっていた。


「あともう1つ思い付いた方法があるんですけど」


「何?」


「ネットを使うんですよ」


「ネット?」


 彼女が聞き慣れたキーワードを口にする。文明の利器の存在を。


「どこかのサイトで気の合いそうな人を探してみてはどうですか? 趣味が近い人を調べて」


「いや、僕の求めているのは学校で仲良く出来る友達なんだが…」


「もちろんそういうのも含めてって意味ですよ」


「ん? どゆ事?」


 互いにタオルを持っていた手の動きが停止。僅かな間を空けてすぐに再開した。


「先輩ってSNSとか使わない人ですか?」


「あぁ、うん。ゲームやるぐらいかな」


「なるほど…」


 アプリをやったり分からない事を調べたりするレベルの利用者。彼女が言いたいのはネットの世界をコミュニケーションの場として活用しているかという話なのだろう。


「どこかに登録してそこから同級生の人を探すと良いですよ」


「え? そんな事出来るの?」


「出来るサイトと出来ないサイトがあります。学校別に検索出来る所を後で教えてあげますから」


「た、助かります…」


 やはり彼女は頼もしい。年下なのに不思議と安心感があった。

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