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5 尾行と追跡ー3

「……なかなか現れないわね」


「もう出ちゃった後かな」


「でもまだ下駄箱に靴あるから中にいるわよ」


「それもそうか」


 翌日、放課後に昇降口で上履きを履いたまま待機する。去年まで自分達が使っていた下駄箱を華恋と監視していた。


「ていうか2人で行動したらマズくない?」


「はぁ? 何でよ?」


「揃ってこんな所をウロウロしてたら目立ってしょうがないんだが…」


 近くの壁に隠れるように身を隠す。周りを行き交う生徒達の突き刺さるような視線に耐えながら。


「むしろ私がいる事に感謝なさい」


「いや、意味わかんないし」


「あのね、男子が女子高生の後をコソコソつけ回してごらんなさい。その光景を見てる周りの人達はなんて思う?」


「……ストーカー?」


「はい、正解」


「なるほど…」


 指摘されて気付いたが確かにその通り。1人で誰かの後ろを歩き回っている方が怪しい。家族だとしても周りの人達にはそんな事情は伝わらないわけだから。


「にしても遅くない? ホームルームが終わってから20分は経ってる」


「本当だ。何やってるんだろ」


「もしかして教室でイチャついてるとか…」


「まさか」


「ならどうしていつまで経っても下りて来ないのよ。変じゃない」


「そ、それは…」


 時計を確認するとこの場所に来てから結構な時間が経過している事が判明。廊下には生徒が疎らに立っているだけだった。


「見に行ってみる?」


「え? 教室まで?」


「うん。もしかしたら相手の顔を拝めるかもしれないし」


「でも鉢合わせする可能性も…」


「サッと行ってサッと戻ってくる」


「ちょっと!」


 華恋が一方的な作戦を取り決める。引き留める声も無視して廊下へと飛び出して行った。


「やっばっ! 来ちゃった」


「うん?」


 しかしすぐに引き返してくる。焦り気味の表情で。


「こらっ、見つかっちゃうでしょうが!」


「ぐえっ!?」


 何が起きたのかを確認。その瞬間に襟首を強く掴まれてしまった。


「ゲホッ、ゲホッ!」


「顔出しなさんな。見られちゃったらどうすんのよ」


「だ、だからって首を引っ張らなくても……あぁ、苦しかった」


 喉元を押さえて咳払い。一瞬しか見えなかったが、こことは反対側の階段から女子が数人下りて来ている姿が確認出来た。


 ただその中にターゲットがいるかどうかは分からない。彼女達が昇降口から出て行くのを見送ると下駄箱の方に歩み寄った。


「どう?」


「アレだ、アレ。あそこにいる」


「なんだ。友達とお喋りしてただけか」


「だから言ったじゃん。香織に限ってそんな訳ないって」


「……のわりにはホッとした顔してるのは何故?」


「き、気のせいっす」


 前方に見える後ろ姿を指差す。靴が履き替えられているかを確かめる前に本人を発見した。


「じゃあ追いかけるわよ」


「え? どうして?」


「どうしてって彼氏を突き止めるからに決まってんでしょうが。この後どこかで密会するかもしんないでしょ」


「あっ、なるほど」


 てっきりこのまま友達と遊びに行くと思っていたのに。言われてみたら相手が同じ学校の生徒とは限らない。社会人の可能性だってあった。


「ほら、ボサッとしてないでさっさと行くわよ」


「う、うん」


 上履きから靴に履き替え外へと移動する。前を歩いている女子集団の視界に入らないように気をつけながら。


「楽しそうだなぁ」


「あの中に混ざりたいとか思ってる?」


「ま、まぁ…」


「それは混ざったら楽しそうだから? それとも女の子の集団に飛び込みたいだけ?」


「どっちも」


 女子高生のグループなんて眩しくて仕方ない。頬の筋肉を緩めていると隣から伸びてきた手に思い切りつねられた。


「いててててっ!?」


「正直なのは良い事ね。ただもう少し用心という言葉を覚えた方が良いかも」


「どうしていつもこういう話になるとすぐ暴力振るうのさ! お茶目なジョークじゃないか」


「ジョークでも許さん。例え冗談だとしても許さん」


「えぇ…」


 ヒリヒリする左頬をこする。そうこうしてる間に女子生徒の集団は駅構内へと突入していった。

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