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5 尾行と追跡ー2

「だから帰って来るのが遅いのか…」


「晩飯いらないって言う事も珍しくないからなぁ」


「今頃はその彼氏と手を繋いでイチャイチャしてたりするわけね」


「……やめてくれ。言葉にしたら想像しちゃうじゃないか」


 頭の中で香織が見知らぬ男と手を繋いでいる姿をイメージする。自分より背が高くて少女漫画に出てきそうな爽やかイケメンと。


「やっぱりショック? 妹が他の男と仲良くしてるって知ったら」


「ショックっていうか……変な気持ち」


「ズーンて感じ? 心が沈むみたいな」


「まぁ…」


「ならショック受けてんじゃないのよ。残念だったわね、自分になびいてくれなくて」


「別にそういうのは平気なんだけどさぁ…」


 身内を誰かに取られてしまったという嫉妬より、先に恋人を作ってしまった部分にショックを受けていた。心のどこかで彼氏なんか作るハズがないと楽観視していたのかもしれない。


「でも気になるわね、その相手」


「あっ、やっぱり?」


「顔ぐらいは確認したいかな。どんな感じなのか」


「もしイケメンだったらどうするの?」


「おぉーって驚く」


「イケメンじゃなかったら?」


「あぁ……って落胆する」


「君はあの子のオカンですか」


 勉強嫌いな彼女も色恋沙汰には興味津々らしい。いつもより目がキラキラ輝いていた。


「私が聞いたら教えてくれるかな? 彼氏出来たのって」


「どうかな。意外に口堅いよ、こういう事には」


「男の雅人には言えなかったけど、女の私には教えてくれるかも。なんたって私と香織ちゃんは本物の姉妹も同然なんだから」


「ふ~ん…」


 傲岸不遜な態度が返ってくる。親密度の高さをアピールするような言動が。


「じゃあ聞いてみなよ。教えてくれないに1票」


「なに、賭けんの? なら私は当然打ち明けてくれるに1票」


「えらく強気だね。そんな自信に満ち溢れてるんだ」


「当たり前じゃん。アンタと私とじゃ立場が違うのよ」


「そ、そっか」


 仲が良いのは素敵な事だと思った。同世代の女の子同士で暮らしているのだからギスギスした関係にだってなっていたかもしれないのに。


「で、具体的に何を賭けるの?」


「え? う~ん…」


「負けた方が3日間の宿題を2人分やるっていうのはどう?」


「ん? 学校から出されたヤツ?」


「そうそう。勝ったら楽出来るじゃん」


「まぁ、華恋がそれで良いなら…」


 頭を捻っていると彼女の方から提案を持ちかけられる。予想に反してまともな内容のご褒美を。


「おっけ、なら決まりね」


「いつ聞くの? 登校中?」


「うぅん、この後すぐ。気になるから少しでも早く知りたいし」


「せっかちだなぁ」


 とりあえず彼女が単独で聞き込みに向かう事に。自分はこのまま部屋で待機する事で決定。


 1人になると再びペンを握った。賭けの対象になった物を処理しようと。




「……入っていい?」


「ん?」


 宿題を終わらせたタイミングで扉をノックする音が聞こえてくる。振り返った瞬間に落胆している華恋と目が合った。


「どうだった? 聞けた?」


「うぅん…」


「やっぱりダメだったか」


 問い掛けに対して彼女が首を横に振る。ゆっくりと何度も。


「なんでぇ……私、それなりに信頼されてると思ってたのに」


「恥ずかしいんだよ、きっと。そういう年頃なのさ」


「ふぇ~ん」


 話題を振ってみたが適当にはぐらかされてしまったのだろう。部屋に入ってくると腰回りに抱きついてきた。


「ショックだわぁ。どうしてなのよぉ…」


「見事に自信を打ち砕かれちゃったね」


「ガーン、ガーン」


「じゃあ賭けは僕の勝ちって事かな」


「げっ!」


 ハッキリと勝敗の結果を口にする。直後に引っ付いていた体が素早く離れた。


「や、やっぱりダメ? 2人分やらなくちゃ」


「言い出しっぺは誰なのさ…」


「えぇ……だって負けるだなんて思ってなかったし」


「うん、分かる分かる」


 自らペナルティを持ち出すぐらいなのだから相当自信に満ち溢れていたに違いない。だが失敗後の想定をしないで張るのは無鉄砲なギャンブラーの思考だった。


「え~と……じゃあ違う事してあげるから宿題は勘弁してくれない?」


「違う事って?」


「お、おっぱい触らせてあげるとか」


「卑猥…」


 耳に入ってきた台詞に絶句する。軽蔑の意味を最大限に込めて睨みつけた。


「ねぇ、良いでしょ? こんな大サービスなかなかしてあげないよ?」


「もう良いから、宿題は終わらせたし。だからこの勝負は無かった事に」


「へ?」


「自分の分だけやれば良いよ。やっぱり罰ゲームとはいえ人にやらせるのはよくない」


「や、やっぱりそうだよね。自力でやらないとダメだよね、うんうん」


「調子いい奴…」


 提案を白紙にする。家族にセクハラする変態にはなりたくないので。


 その後、華恋は部屋に撤退。しばらくすると宿題を見せてほしいという情けないメッセージを送ってきた。

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