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4 上部と下心ー1

 学校終わりの夕方。いつも通りに飲食店でバイトに勤しむ。


「先輩も好きなんですか? アクションゲーム」


「大好物だよ。1人でやったり妹とやったり」


「へぇ、楽しそうですね」


 すぐ隣には背の低い後輩が存在。お客さんが少ないので割と退屈だった。


「女の子なのにアクションゲームに精通してるなんて珍しいね。もっと繊細なジャンルを好みそうなのに」


「先輩の妹さんだってそうじゃないですか。女子だってやりますよ。それは偏見ってものです」


「いや、うちの場合は僕っていう男兄弟がいるからだよ。もし1人っ子だったならあの2人は興味を持たなかったと思う」


「私は1人っ子ですけどやりますよ?」


「だからそれが珍しいんだってば」


 鬼頭さんと普段、家でどんな過ごし方をしているかを語り合っていたらゲームの話題に。自分の好きなタイトルを挙げていったら意外にも彼女が食い付いてきたのだ。


「やっぱり変ですかね……女1人でゲームとか」


「別におかしくはないけど珍しいとは思うかな。ケータイゲームとかは皆やってそうだけど」


「アプリはクラスの友達もやってますね。でも私はテレビの大画面でやる方が好きなんですよ」


「気軽にやるのでなく本格的にやり込むタイプとみた」


 急に親近感が湧いてくる。趣味の近さを実感出来て。


「私の場合、楽しむ為っていうかストレス発散目的でやってますから」


「そ、そんなにフラストレーション溜まってるんだ…」


「そりゃあもう。学校やらここでメチャクチャに」


「……スイマセン」


 もしかしたら不甲斐ない同僚の就業態度を見てイラついているのかもしれない。表には出さないけれど内心はムカついているとか。


「どうして謝るんですか?」


「何となく…」


「悪いと思ってますか?」


「はい、思ってます」


「じゃあ、もう二度とやったらダメですよ」


「分かりました。もうやりません」


 頭を小刻みに上下に移動。許しを乞っていると鬼頭さんが口元に手を当ててクスクスと笑い出した。


「先輩、おっかしぃ。何にもしてないのに謝ってる」


「え? イライラの原因は僕じゃないの?」


「違いますよ。先輩に対してストレス感じてるなんて一言も言ってないじゃないですか」


「ま、まぁ」


「仮にそうだとしても本人の前で言ったりなんかしませんって」


「それもそうか…」


「やるならバレないようにやります。裏でコソコソと」


「……えぇ」


 彼女が大木に藁人形を打ち付けてる姿が思い浮かぶ。鉢巻きにロウソクを差して白装束に身を包んでいるイメージが。


「良いなぁ、一緒にゲームやってくれる兄弟がいて」


「でもよく言い争いするよ。どっちが風呂掃除するのかとかで」


「そういうのもひっくるめて羨ましいんです。私も先輩みたいな人と兄妹喧嘩してみたかったなぁ」


「ならうち来る? 一緒にゲームやれるよ」


「え? 良いんですか?」


「どうせ暇だしね。土日も1人で遊んでる事が多いし」


「ん~、なら今度の土曜日とかどうですか。先輩も確か休みですよね?」


「え? ま、まぁ」


 冗談半分で自宅に招待。しかし返ってきたのは意外にも好感触な反応だった。


「どこかでお昼ご飯食べてから行くから……先輩の家に行くのは正午過ぎになりますね」


「ほ、本当に来るの?」


「え? もしかして他に予定ありましたか?」


「いや、大丈夫」


 てっきり社交辞令での返答だと思っていたのに。どうやら本気らしい。


「何か持っていった方が良い物はありますか?」


「特には。ゲームならうちにもあるし」


「う~ん……手ブラってのも悪い気がするなぁ」


「別に気にしなくても」


「とりあえず駅で待ち合わせで良いですか?」


「そうだね。路線とか分かるかな?」


「大丈夫ですよ。最悪、アプリで調べるんで楽勝です」


 こうしてとんとん拍子にお客さんを招く事が決定。他校の生徒とプライベートで遊ぶ事になった。


「う~ん…」


 ただ1つだけ問題が浮き彫りに。華恋の存在。


 会話の流れで1人でゲームをプレイしてると語ったがそれは春休み前の話。今は自由に遊べる時間さえほとんど無かった。


 知り合いを家に連れてくるならちゃんと話を通しておかないといけない。帰ってから早速、一階の客間を訪れた。

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