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3 嘘つきとホラ吹きー3

「雅人、帰ろ」


「うん」


 ホームルームが終わると鞄を持った華恋が話しかけてくる。満面の笑みで。


「今日はバイトあるんだっけ?」


「そだよ。だから悪いけど一緒には帰れないや」


「ちぇっ……残念だなぁ」


 新学期が始まってしまったのでまたあまり出勤出来ない。なので授業が午前中しかない日に少しでも顔を出しておこうと考えたのだ。


「ねぇ、お店行っても良い?」


「ダ、ダメだよ! 恥ずかしいから」


「えぇ……でも雅人のエプロン姿見てみたいし」


「そんなの見ても一文の得にもならないってば」


「なるよ。写真撮りまくってやるんだから」


「……マジ勘弁してください」


 恥でしかない。知り合いが来るのも失態を目撃される状況も。


「どうしてもダメ?」


「ダメ」


「ブ~、ブ~」


「もし大人しく帰ってくれたら良い物あげるよ」


「え!?」


 あまりにもしつこいで方向性を切り替える。餌で釣る作戦を実行した。


「何々、良い物って?」


「さぁ? それは帰ってからのお楽しみ」


「むぅ……良いじゃん、教えてよぉ」


「だから帰ってから教えてあげるって。今はまだ内緒」


「本当になんかくれるの?」


「ま、まぁ…」


「……マジで?」


「うん」


 適当に頭でも撫でておけば良いだろう。今の華恋なら誉められた犬みたいに喜びそうだった。


「頭撫でてお終いとか、そんなオチは無いわよね?」


「い、いやぁ。どうかな」


「ん~、そこまで言うなら大人しく帰ろっかな。遅刻させても悪いし」


「そんなに期待しない方がいいよ…」


「じゃあ智沙でも誘って帰るとしますかね」


「あ、うん。気をつけてね」


 どうにか追っ払う事に成功する。ストーカーの撃退に。


「どうしよう…」


 その代償として爆弾を抱えてしまった。不発でも着火させても恐ろしい兵器を。家に帰るまでに上手い言い訳を考えておかないといけない。口は災いの元を痛感した瞬間だった。


「そういえば颯太はどうしてるだろ…」


 結局、彼とは一度も遭遇していない。華恋が帰って来ている事をまだ知らないハズ。別々のクラスになってしまったので言い出すキッカケを逃してしまった。




「おはようございま~す」


 学校を出て5分ほど歩くと職場へと辿り着く。ランチタイム中の喫茶店に。


「あっ、赤井くん来てくれたんだ」


「どうも」


「ちょうど良かった。これあそこのテーブルに持っていって」


「はいはい」


 エプロンを身に付けるとフロアへ。挨拶をした瞬間に同僚の女性からグラスとおしぼりが乗ったトレイを渡されてしまった。


「今日って忙しいですか?」


「戦争戦争。もうてんてこまいよ」


「うわぁ……ならもう少しズラして来れば良かったな」


「お~い、そういうこと言うとお姉さん怒るよ?」


「す、すみません…」


「ふふふ」


 僅かに生まれた空き時間に冗談で盛り上がる。ゴムで髪を縛る瑞穂さんと。


 厨房をパートさん、カウンターを店長、フロアを彼女の3人で回していたらしい。挨拶もそこそこに仕事を任せてきたぐらいなのだから、よっぽど忙しかったのだろう。


「ひいぃ…」


 それから2時間近くピークが継続。入れ替わりお客さんが入って来て途切れたのはランチが終わった後。2時間の間に注文ミスを三度もやらかしてしまった。


「……疲れたぁ」


 エプロンを外して空いているソファに腰掛ける。やや遅めの昼食をとる為に。パートさん、瑞穂さん、店長と休憩してようやく自分の番が回ってきた。


「赤井くんは今日が始業式なんだっけ?」


「ですよ。ほとんどの学校がそうじゃないですかね」


 通路を歩く瑞穂さんが立ち止まって話しかけてくる。上から覗き込む形で。


「3年生だから受験生か。もうどこの大学を受けるかは決めてある?」


「え~と、まだ」


「ならうちに来なよ。可愛がってあげるからさ」


「ま、前向きに検討しておきます」


「はい、決まり。絶対だからね!?」


「えぇ…」


 鬼頭さんの時と違ってやや緊張感が存在。それでも年齢が近いので他のパートさん達よりかは話しやすかった。

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