3 嘘つきとホラ吹きー2
「見える?」
「……な、なんとか」
電車を降りた後は4人で海城高校を目指して歩く。香織と別れると3年生の下駄箱へ。クラス替えが発表されている掲示板に注目した。
「あ、あった」
「どこ?」
「あそこ。ああああとアナベベの間」
「どんな名前…」
智沙が指差した先に視線を移す。そこにあったのは今までの人生で何度も目にしてきた赤井雅人という文字。
「あっ、僕の方か」
「アタシの名前ないなぁ。雅人とは違うクラスかぁ」
「B組か…」
人で溢れているので思うように動けない。辺りでは運任せの配置に対して一喜一憂している生徒達の姿が見受けられた。
「げっ!」
ついでにここにはいない友人の名前を探す。だが彼の名前も違う組で発見。
「そんな…」
颯太とは中1の時からの腐れ縁だった。年数にして5年。その間ずっとクラスメートを続けていたから離れ離れになるのは初めてだった。
「まぁ、毎回同じになるとは限らないわよね」
「うん……人生はなかなか上手くいかないや」
「落ち込むなって。そのうち良い事あるわよ」
「いって!?」
昇降口から脱出した後は階段を上がる。ガックリと肩を落としながら。
「じゃあ、アタシはここだから。バイバ~イ」
そして三階へとやって来た所で解散。手を振って教室に入っていく智沙の姿を無言で見守った。
「……はぁ」
「ま~た溜め息ついてる」
落ち込んでいると隣にいた双子の妹に注意を受ける。叱責の意味合いを込めて。
「だって皆バラバラだよ? テンションも下がるって」
「文句言ったってしょうがないじゃん。決まっちゃったもんは」
「分かってるけどさぁ…」
「それにそこまで悲観しなくても良いんじゃない? 私と同じクラスになれたんだし」
「……だね」
「あ~、楽しみだなぁ。新しい教室」
颯太や智沙とは離れ離れになってしまったが華恋とは同じクラスに。なぜ家族で同じ振り分けなのかは謎だったが名字が違うと考えたら納得出来た。
「私と一緒のクラスになれて嬉しい?」
「まぁ…」
「ハッキリしない返事ねぇ。どっちなのよ」
「嬉しいような嬉しくないような…」
「どっちよっ!!」
「ひいいっ!?」
彼女が間近で怒鳴り散らしてくる。眉を吊り上げながら。
「う、嬉しいです」
「本当に?」
「はい。可愛い妹と同じにクラスになれて幸せだなぁと思いました」
「やだぁ、可愛いだなんてそんな」
「いてっ!?」
言い訳を繰り出した瞬間に背中に衝撃が発生。平手で思い切り叩かれてしまった。
「ここか…」
教室へやって来ると見知らぬ同級生をたくさん見つける。楽しそうにお喋りするグループや、1人で大人しく座っている者を。
チラホラ知っている顔を見かけたがほとんどが喋った事もないような人達。気軽に声をかけられそうな友人はいなかった。
「んじゃ、また後でね」
「ん」
華恋とも席が離れているので別れる。入口近くの机に鞄を置くと静かに座った。
「うおりゃあっ!! 俺がお前らの新しい担任だ、うおりゃあっ!!」
しばらくすると意味不明な掛け声と共に教師も登場する。指示に従い体育祭へと移動。始業式が執り行われた。
教室に戻って来てからは先生の簡単な自己紹介や今年1年の予定の発表。初日なので授業は無しの半ドンだった。