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22 少女と決意ー4

「おはよ~」


「ちょっと何で黙ってたのよ!」


「え?」


 翌日、駅で合流した友人が大声で問い詰めてくる。切羽詰まった表情も付け加えて。


「な、なんの話?」


「アンタ達が兄妹だって。本当なの?」


「やっぱりそれか…」


「昨日からずっと気になっててさ」


「誰から聞いたの、それ?」


「あれ? てことはマジだったんだ。絶対ガセネタだと思ってたのに」


「あ…」


 何故こんなにもあっさりとバレるのか。誰かが漏らさなければ知られる事はないというのに。疑念を解消する為に隣にいる人物の顔を見た。


「えっ、私じゃない!」


「……だよね。わざわざバラす理由はないんだし」


「まさかアンタが…」


「いやいや、違うって」


 華恋と探り合いを始める。お互いに勢いよく手を振って否定した。


「……本当かしら」


「う、疑うのか。この純粋で誠実ともっぱら噂の僕を」


「ジーーッ」


「ち、違う。僕は無実だ」


「2人してさっきから何やってんのよ。アンタ達の妹から聞いたんだって、アタシは」


「へ?」


 即席の裁判を展開する。そんなやり取りを無視して友人がこちらに指を伸ばしてきた。


「え? ちーちゃんに言ったらマズかったの?」


 その行動で後ろに振り返る。おさげ髪の女子高生がいる方へと。もう1人の妹があっけらかんとした表情で突っ立っていた。


「こらーーっ!!」


「え、え…」


「こんのっ…」


「うわあぁぁーーっ!?」


 両手の親指を彼女のこめかみに突き刺す。そのままグリグリと回転。


「あががっ!?」


「何してくれてるのさ、このアホーーッ!」


「痛い痛い痛いぃぃぃ」


「ちょっとそれぐらいにしときなさいって。口から脳みそ吐き出しそうな顔してるわよ」


「ごああぁあぁぁっ!?」


「待って、この顔おもしろい。写真か動画」


「あはははは、OK。ケータイケータイ…」


 朝から駅前で大騒ぎ。周りを行き交う通行人達の視線を向けられながら。ある程度の罰を与えると遅刻しないように皆で改札をくぐった。


「いやぁ、しっかし本当に双子だったとはねぇ。親戚じゃなかったの、アンタ達?」


「父さん達にはそう聞かされてたんだけど実は兄妹だったんだよ」


「なんでわざわざ嘘ついたのよ、おじさん達は。最初から双子って説明するのが普通じゃない?」


「な、何故でしょうね…」


 親戚という関係は自分達が考えた設定でしかない。まさか適当に思い付いた情報が己の首を絞める原因になるなんて。


「ねぇ、どうしてなの? まだ何か秘密があるとか?」


「そ、それは…」


「アンタ達の家、いろいろ複雑すぎて訳分かんないんだけど」


「自分達でもイマイチ理解してないから安心してくれ」


「でもさ、どうすんのよ? アンタと華恋はお互いに好…」


「うぉっと!」


 話の流れで友人が秘密を漏らそうとする。慌てて口を塞いで阻止した。


「むぐっ!?」


「ストップ、それ以上はダメ」


「……ぷはーーっ! ちょっと何すんのよ。苦しいじゃない」


「ん」


 そのまま親指で後ろを指した。事情を知らない義理の妹の顔を。


「……あぁ、なるほど」


「え? 何々?」


 彼女はすぐに言いたい事を理解してくれたらしい。身内同士で恋をしていたなんて家族に知られる訳にはいかないから。


「ねぇ、な~に~? 私にも分かるように教えてよ」


「そんなに知りたい?」


「もちろん!」


「ならばこのゴッドハンドでその脳内に情報を叩き込んであげよう」


「ひいぃぃっ!?」


 混雑した車内の中で再びコントを展開。突き立てた親指で脅迫の意志を示してみせた。


「う~ん、しかし血の繋がりがあるどころか同時に生まれてたなんてね。どうして今まで気が付かなかったのかしら」


「えと……とりあえずこれ他の人には内緒ね?」


「ん? なんでよ?」


「クラスの皆に知られたら色々と面倒くさいし」


「あぁ、確かにこんな面白そうな話題を放っておくハズがないもんね」


「あんまり茶化されたくないからさ。僕も華恋も」


「そっか…」


 両親の死以上に辛かったのが失恋。抗う事さえ許されない関係性が精神に重くのしかかっていた。


「でも血の繋がった兄妹なのにさ、ずっと別々に育てられたってのは悲しいわよね」


「まぁね。もしかしたら知らなかった方が良かったのかも」


「そう考えたくなる気持ちも分かるわよ。アタシがアンタ達の立場だったらショックだもん」


「……うん」


 どこから知らなければ良かったのだろう。双子だという繋がりか、お互いに好意を持っていたという事実か。それとも華恋という1人の人間の存在だろうか。


「あと公園で相談した件もクラスの皆には内緒で」


「禁断のアレね。おっけ」


「もし言ったら智沙が刺されるかもしれないから」


「は?」


 その後も4人で会話しながら学校へとやって来た。といっても喋っていたのは主に自分と友人だけ。


 香織は怯えていて、華恋は塞ぎ込んだ状態。秘密がバレてしまった事が余程ショックだったのかずっと落ち込んでいた。

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