22 少女と決意ー2
「それでどうだったのよ? おじさん達に話したの?」
「え? 何を」
「アンタ達のイチャラブ関係を公認してもらう件よ。アタシに相談してきたでしょうが」
「さ、さぁ…」
席に座っている最中、友人が背後から近付いてくる。肩に手を添えて声をかけてきた。
「ほっほ~う、このアタシを相手にとぼけようってかい」
「いや、本当に何を言ってるか分からないのだが…」
「ごまかすって事はまだ話してないか、失敗したって事よね? そうなんでしょ?」
「え~と…」
失敗したといえば失敗だった。話をする前に夢を打ち砕かれてしまったというのが真相。
「んで、どっちなのよ? へたれな雅人の事だからどうせ行動に移せてないんだろうけど」
「じ、実はそうなんだよ。なかなか機会が掴めなくてさ」
「さっさと言っちゃいなさいよ。華恋が可哀想じゃない、今のままだと」
「……うん。まぁ、そのうちね。キッカケ見つけて打ち明けてみるさ」
適当に嘘をつく。永遠に訪れないであろう日を口にして。
「2人でなに話してたの?」
「ん? 秘密の作戦会議」
「秘密…」
雑談に花を咲かせているとそこにもう1人が追加。話題の張本人が介入してきた。
「前に智沙に相談したでしょ? 僕達の事について。その話をしてたんだよ」
「あぁ。秘密って言うから何事かと思っちゃった」
「雅人がサッサと行動起こさないからこの子がいつまでも落ち込んでるんでしょうが。早く言っちゃいなさいよ」
「だからそれはそのうち…」
「格好つけた割に男らしくない態度。ねぇ、華恋?」
女性陣2人が目を合わせる。アイコンタクトでもするかのように。
「え? うん…」
「早く堂々とイチャイチャしたいでしょ? この男と」
「……はは」
「早く行動しないと他の男に乗り換えるって言って脅してあげなさいよ」
「ん…」
しかし彼女達のテンションは雲泥の差。片方は陽気で、もう片方は落ち込み気味。その原因を知っているだけに心がえぐられるようなやり取りだった。
「んで、どこまでいったわけ?」
「な、何がっすか?」
「もうキスとかしたの?」
「うぉいっ!」
不埒な発言につい力んで立ち上がってしまう。漫才のツッコミのような勢いで。
「あれ? まだしてないんだ。じゃあ手を繋いだりとかは?」
「しないよ。これからもずっとしない」
「うわっ、ひど。こんな事言ってるけど、どうする?」
そのまま話題は恋愛関係の進展具合に。踏み込みたくない領域に突入していった。
「……そうですね。困ってしまいました」
「もっと強気で責めてやんなさいよ。下手に出てるとコイツ調子に乗るわよ」
「そうなったら泣いてしまうかもしれません…」
「ちょ……あんまり勝手に話進めないで。ていうか智沙が一番調子に乗ってる」
「人のせいにしないでよ。ちょっと興味本位で聞いてみただけじゃない」
「とにかくこれ以上はやめてくれ。華恋が泣いちゃう」
本当に泣くかもしれない。そう思えたので会話を強制的に中断。彼女の顔はそれぐらい物悲しい表情になっていた。
「ねぇ、あの子変じゃない? 今、敬語使って喋ってたわよ」
「あぁ、そういえば」
「元気なさすぎるじゃない。どうしちゃったのよ」
「きっとお腹痛いんだよ。朝たくさん食べてたから」
華恋が席に戻ったタイミングで友人が話しかけてくる。不安そうな表情で。
「もしかして……アタシのせい?」
「へ?」
「アンタ達の事、余計な部分に踏み込んじゃったかなぁと思って」
「気にしなくていいよ。智沙は何も悪くないから」
「そうかな。少なくとも話しかけてきた時はもう少し元気あったような気がするんだけど」
「ほら、女の子特有の日っていうか。デリケートな体調異変の時ってあるじゃん?」
「……ドスケベ糞野郎」
「す、すいません…」
咄嗟に思い付いた言い訳で彼女を鼓舞。その行動は蔑むような視線を生み出してしまった。
ただ動機はどうあれ今のやり取りが落ち込む原因になっていたのは事実。やっぱりまだ割り切れてないのだろう。理屈では分かっていても簡単に受け入れられるハズがないのだから。