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4 惰性と協調性ー1

「ひいっ、ひいっ…」


 学校内の廊下をひた走る。袋に入った菓子パンを手に持って。


 急いでいる理由はコレをある人に渡す為だった。ついでに面倒くさい罰ゲームを回避する為。情けない事にパシリをさせられていた。


「だああぁっ!!」


「いてっ!?」


「あ、ゴメン…」


「いや、こっちこそ悪かった」


 掛け声をあげて教室へと飛び込む。クラスメートの男子と肩が衝突するトラブルに見舞われながらも。


「……ゼェ、ゼェ」


「遅い」


「いやぁ、ちょっと買うのに手間取っちゃって」


 謝罪を済ませると1人の人物に接近。ショートヘアの女子生徒に。彼女は足を組みながらふてぶてしい態度で椅子に腰掛けていた。


「で、ちゃんと買えたの?」


「メロンパン売り切れてたみたい。だから代わりにジャムパン買ってきたよ」


「はぁ? 売り切れ?」


「完売したって意味じゃなく今日は仕入れてなかったみたい。最初から売ってなかったんだよ」


「……なら仕方ないか」


「ほっ…」


 睨み付けてきた顔が怖くて咄嗟に嘘をつく。本当はただ買えなかっただけなのに。


「あれ、颯太は?」


「まだ戻って来てないわよ。だから雅人の勝ち」


「よっしゃ」


 嬉しさを表すように小さくガッツポーズを決めた。どうやら競争相手はまだ到着していないらしい。これで全力疾走してきた甲斐があったというもの。昔から足の速さにだけは自信があった。


「だああぁっ!!」


「ん?」


 喜びを噛み締めていると反対側のドアから叫び声が聞こえてくる。ボサボサ頭の男子生徒の雄叫びが。


「ハァッ、ハァッ……ほら、買ってきてやったぞ」


「残念、走ってきたとこ悪いけど負けだから」


「はあぁっ!? ふざけんなよ。だから言ったじゃんか。自販機が遠いからって1分のハンデはやり過ぎだって」


「男が言い訳すんな、大人しく敗北を認めなさい。アンタの負~け~」


「くそっ!」


 彼の手には外の自販機で買ってきたであろうコーラのペットボトルがあった。自分が購入したパン同様に女子生徒に捧げる為の品物が。


「じゃあ悪いけど颯太はあと3日パシリ継続ね。明日からはパンとジュース、両方アンタが買いに行きなさいよ」


「面倒くせぇな。自分で行けや」


「アタシのスマホ台無しにしたのはどこの誰よ。壊れたデータ復元してくれんの?」


「だから無理だってば」


「なら文句言わない。これぐらいの罰で許してやろうってんだから感謝しなさいよね」


「ちっ…」


 強気な発言に友人が黙り込んでしまう。不満タラタラの表情で。


「はぁ……まったく何で俺がこんな目に」


「うわっ!?」


「きゃあっ!?」


「やべーーっ! どうしよう、どうしよう」


 そして何を思ったかペットボトルの蓋を開放。凄まじい勢いの泡を噴出してしまった。


「キャップ。閉めて!」


「あっ、そうか」


 状況を回避する為の指示を出す。しかし彼がとった行動は飲み口にしゃぶりつくという事。


「んむ、んむっ」


「あ~あ…」


「……ぷはぁーーっ、んめぇ」


「なんでアンタが飲んでんのよっ!」


「いてっ!?」


 女子生徒が教科書で目の前の人物の頭を殴打。せっかくの献上品は台無しになってしまった。


「……ったく、しかもアタシが頼んだのお茶なのに炭酸買ってきやがって」


 3人でロッカーから雑巾を持ってきてコーラまみれになった床を拭く。周りにいたクラスメート達にクスクスと笑われながら。


「はい、んじゃもう行っていいわよ。早くしないとアンタ達のお昼ご飯食べる時間が無くなっちゃうでしょ?」


「へ~い」


 女子生徒が手をブラブラさせて追い払う仕草を開始。解放命令が出たので友人と共にその場を退散した。

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