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20 過去と真実ー1

「う~ん…」


 帰宅後。部屋の中をウロウロする。意味もなく何度も。


 家の中にいたのは香織だけだった。両親はいつも通り仕事。華恋も自室で閉じこもっている状態。


 もし隣の部屋にいる妹に打ち明けるなら早い方が好ましいだろう。2人が帰って来てからでは余計に話をしにくいし。


 だがその踏ん切りがつかないでいた。もうかれこれ20分近く逡巡を継続。


「……メールとかどうかな」


 口先で切り出そうとするからダメなのかもしれない。思い切って文章で伝えてみるとか。華恋の事を好きになってしまいましたと書いて送信。


「いやいや…」


 その状況をイメージしたが上手くいきそうにない。イタズラだと思われそうだった。


 仮に信じてくれたとしても彼女は部屋へと乗り込んでくるだろう。そして事情聴取を開始。


 ならやはり最初から対面して白状してしまった方が良い。向こうからの返事が返ってくるまでに緊張しなくて済むから。


「……行くか」


 1人で悩んでいても先に進まないのでとりあえず行動に移す事に。隣の部屋へと移動して2回ほど扉をノックした。


「ふぅ…」


 緊張感をほぐすように溜め息をつく。時間の流れが変わったと錯覚する空間の中で。


「あれ?」


 しかし何度叩いても反応がない。もしやと思いドアノブに手をかけてみた。


「……やっぱり」


 中に入るとベッドの上で寝ている妹の姿を見つける。彼女は器用に漫画を手に持ちページを捲っていた。


「ま、寝てるのなら仕方ないか」


 起こしたら可哀想だし、そこまで急いでしなくてはいけない話でもない。精神をリラックスさせるように言い訳を連発。


「はぁ…」


 華恋は部屋で待機中だった。話は1人ですると言って引っ込んでもらったので。ただそう意気込んではみたものの縮こまっているのが現実。


「あ…」


 自室へと戻ってくると気分転換にベランダへと出る。すると下を向いた瞬間に窓際にいた本人を発見した。


「お~い」


 どうやら彼女も同じ行動をとっていたらしい。手を振った瞬間に小さく振り返してくれた。


「……ん」


 もしかしたらこうして笑っていられるのも最後になるかもしれない。顔を合わせられるのも。


 ネガティブ思考は振り払ってしまおう。理屈ではそう分かっているのに心のどこかから滲み出てくる不安を隠せないでいた。

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