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問十二「ゴールドアーマー」

 目が覚めると、昨日…いや、一昨日と一緒でアリシアに抱きしめられていた。それはいいわけだが…


「また起こさないといけないわけだニャ…」


 そして、彼女を起こし、一緒に朝食を作って食べて、一緒に冒険組合に出掛ける事になった。


「今日は私のせいもあるかもしれないけどニャ?朝がそんなに弱いんじゃ、お嫁に何てずっといけないと思うのニャ」


「いいも~ん♪そうなったら、逆にフローラをお嫁さんにするもん♪」(ア)


「今度は私がお嫁さんになるのかニャ…ハァ、仕方ないからしばらくは面倒を見てあげるのニャ」


「わ~い♪ありがとうね、フローラ♪」(ア)


「分かったから、そんなに抱き着かないで欲しいのニャ!通行人の注目を浴び過ぎているのニャ!」


「ふふ~ん♪みんな、私たちの仲良しの姿に嫉妬してるのね!」(ア)


「ただ悪目立ちしてるだけだと思うニャァ…」


 それよりも、私が面倒を見てもらってる気がするが…そこは気にしていないのな。器が広いのか、ただ単にご機嫌すぎて何も考えていないのか…後者だな。


「それよりも、何度も言うようだけど…強くなるまではソロ活動禁止だからね?」(ア)


「分かってるニャ。私も、自分から無謀な事をしたいと思ってるわけじゃないのニャ」


 今朝の事、朝食を食べながら一つだけ約束をした。冒険者活動をするのは仕方ないとしても、今はまだまだ子供で弱い私は、必ず強い冒険者と一緒に行動してまずは見て学ぶくらいにしろと言われたのだ。もちろん、私としては師事して鍛えてもらう事も考えているが…難しいだろうな。何せ、先立つものが何もない。ろん、見学ですら出来るかどうかも不明ではあるが…


「見学を許してくれる気前の良い冒険者いると良いんだけどニャァ…」


「そこはほら、フローラは可愛いから大丈夫よ!でも、セクハラされたら言いなさい?二度と冒険者として活動出来ない様にしてやるから…」(ア)


「アリシア…目が据わってて怖いニャ」


 それだけ大事にされているんだろうけど、それを気にしたら本当に誰も見学何てさせてくれないんじゃないか?いや、セクハラされたいと思っているわけじゃないが…


「論議が尽きない内に、冒険組合についたけど…何か人が多くないかニャ?」


「本当ね?何かあったっけ?」(ア)


「思い出すのニャ!厄介事は今の私は本当に勘弁して欲しいのニャ!」


「う~ん…思い出せない!私が忘れていないなら、何もないはずだよ!!」(ア)


「忘れている可能性があるから困るのニャ…」


「まあ、考えても仕方ないじゃない?遅刻する前に入ろうよ!」(ア)


「そうだニャ…危険はないはずだから、行くニャ」


 外にあふれるほどいる冒険者の数は気になるところだが、危ない橋も一度は渡れとも言うし…さすがに大げさか


「まあ、当たり前だけど中も人で一杯だニャ」


「本当に…朝からこんなにいるなんて…何かあるとしか思えないね」(ア)


「進むしかないニャ…」


 それから、人込みをかき分けるようにして受付カウンターに近付くと…どうやら、二人の人物を囲むようにして人だかりが出来ている事が分かった。


「あの二人は誰ニャ?有名人か何かかニャ?」


「え?嘘!?あの二人、任務から戻ったんだ…通りで人が多いわけね」(ア)


「ニャ?知ってる人ニャ?」


「あ、そっか…フローラはこの町に来たばかりだものね?知らないのは仕方ないね。あの二人は…」


 そう言って、件の人物の男女二人の説明をしようとしていた時…


「む?もしかして、そこの獣人の子供が今回の騒動の子か?」(?)


「え?あ!フローラちゃん!?もう大丈夫なの?」(ナ)


「はいニャ!この度は、ご迷惑をお掛けしましたニャ!」


 どうやら、先に話題の人物の片割れ…女性の方にこちらが先に見つかったみたいで何やら注目されてしまったようだ。仕方ないので、一緒に居たナディアさんに今回迷惑を掛けたであろうことを先に謝った次第だ。


「あ、フローラちゃんはこの町に来たばかりだから知らないよね?この二人はね、この町に二人しかいないゴールドランクの冒険者、つまり、ゴールドアーマーの二人なのよ?とても強いの」(ナ)


 なるほど、だからアリシアも知っていたのか。それに、この人だかりの理由も分かった。しかし、久しぶりに戻ってきたとはいえ…凄い人気だな?この町には二人しかゴールドランクがいないのと何か関係があるのか?


「ここで自己紹介しても良いが、すがに人が多いな…他の者の仕事に支障が出てしまうのもなんだな?どうせ腰を落ち着けて話をしなければならないんだ、上の応接室を使わせてもらえないだろうか?」(?)


「分かりました!それでは、私はルーベンさんにその旨お伝えしますので、皆さんは上の応接室でお待ちください。アリシア!ここは任せるからよろしくね!」(ナ)


「ええっ!?私も一緒に行っちゃダメなんですか!?フローラが関係しているなら私も!!」


「現状を見てから言って!ゴールドアーマーのお二人がここを離れたら一斉に冒険者の皆さんが動き出すわよ!一人だって、遊んでる暇なんてないわよ!私も、ルーベンさんに報告したらすぐに戻るから!」(ナ)


「そんなぁ…私、実はフローラが心配心配でまだ本調子じゃ…」(ア)


「そんな軽口叩けるなら大丈夫でしょ!後から、フローラちゃんから話を聞けば事足りるわ!じゃあ、任せたからわよ!!」(ナ)


 言うが早いか、ナディアさんは組合長室に小走りに向かって行った。・・・私も、この人たちと一緒に応接室とやらに行かないと行けないのか…その前に


「アリシア!私は大丈夫ニャ!アリシアは、しっかり仕事するニャ!応援してるニャ!!」


「フローラが応援してくれてる!私、頑張るからね!!」(ア)


 アリシアは、小さくガッツポーズして仕事場へ向かった。いや、単純にもほどがあると思うが…


「では、組合長を待たせても悪いし我々も行こうか」(?)


「オッケー」(?)


「は、はいニャ!」


 私は、応接室へ向かいながらゴールドアーマーだと紹介された二人を観察した。二人ともまだ自己紹介されていないから名前は知らないが…女性の方は堂々とした態度だった。如何にも強いです!みたいな感じと言うか…


 見た目は、赤い髪を腰まで伸ばしたカッコイイ女性だ。年齢は分からないが…20代か?凛とし過ぎていて、歳がいまいちわからんな。服装は、鉄の胸当てっぽいのをしているのを除けば軽装だ。しかし、腕や足を出していて、戦う時に怪我を追ったりしないのだろうか?いや、かわすのが上手いとかか?だが、背中には大きな装備でも入っているような袋っぽいのを背負っているし…謎だ。


 謎と言えば、青神の男性の方がもっと謎だった。こちらは、結構な重装備…とは言っても、所謂動きにくい全身鎧ではなく、動きやすい鎧と言うか部分で分割されていると言ったら良いのか?こういうのを何と言ったら良いのか知らないが、それぞれが動きを阻害しないような鎧姿だ。


 見た目の話を良いんだ、問題なのは何故かこちらをじっと見ている事だ。何故か私を初めて見た時からじっと見つめて何やら思考しているようだった。何か気になるのか?もしかすると、ガータを初めて見たとか?それでも、そんなに真剣に悩む事何てないはずだが…


「ここが応接室だ。先に入ってくれ」(?)


「あ、ありがとうニャ」


 扉を開けて待たれたのでは先に入るしかないが、見た目はワイルドっぽいが意外と優しいのかもしれないな。そして、何故か俺の後に続く青髪男はやはり私をじっと見ている。後ろに目があるわけじゃないが、この身体になってから何となくそう言うのの気配が分かるようになった。覚醒だな!・・・何て、逃避してる場合じゃないが…


 応接室は、木材を中心として落ち着いた作りだった。特に気になるものも置いていないシンプルさだ。部屋の中央にソファーが向かい合わせに2組あり、その間に大きなテーブルがある。ソファーがあったことには多少は驚いたが…


 一番先を行く形になってしまったので、仕方なく手前側のソファーの一番奥に座った。すると、青髪男が私の隣に座ろうとして、それを遮るように赤髪の女性が座った。彼女に一瞥され、男の方はやれやれと言った態度で向かい側に座ったのだが…何故か私の正面だった。・・・何がしたいんだこいつは?


 その後、無言の時間が続いたが赤髪女性は腕を組んで目を瞑って待っていた。対する青髪男性は、私を見ながらニコニコしていた。・・・物凄く嫌な予感しかしないんだが…



「お待たせしました、皆さん。申し訳ないですが、私の方が今色々な案件が重なってしまっていて時間がない都合、早速話し合いを始めたいのですが宜しいでしょうか?」(ル)


 ノックの後、入室してすぐにルーベンさんがそう切り出して来た。そして、どういう原理か知らないが、移動する腰掛椅子をソファー2組の間に…テーブルを囲うように持ってきてそこに座った。


「その前に良いだろうか?その流れだと、すでにルーベンとフローラは知り合いなのか?」(?)


「ああ、そうでしたね。ちょっとした知り合いと言う所でしょうか?その辺りの話は今度するという事で」(ル)


「ああ、時間が無いんだったな。すまないが、私とこいつがまだ彼女と自己紹介を交わしていなくてな…それだけ短くだがしても構わないか?」(?)


「ああ、私を交えてするつもりでしたか…申し訳ない。時間がないと言ってもそれくらいはして頂いても構いませんよ。むしろ、しておかないと不都合が出るかもしませんからね」(ル)


「分かった、では手短に済まそう。私の名は、リヴィアだ。冒険者となった時、家名とやらは捨てた。リヴィアと呼び捨ててくれて構わない」(リ)


 おお…何か格好良いな!あれか?良家のお嬢様とやらを捨てて冒険者してるとかか?こういうストイックそうな人に師事したら強くなれるかもしれん…耐えられればだが…


「じゃあ、次は僕だね!僕の名は、アルセリオ。家名は…訳があって捨てる事になったから僕も気軽に呼んでくれて構わないよ?アル!とか呼んでくれたら嬉しいな♪」(アル)


「わ、私の名前はフロレンティアニャ!…です。私の住んでいたところでは、家名なんてなかったのニャ。名前は長いからフローラと呼んで欲しいニャ…です」


 いや…演技じゃなくて相手が最上級冒険者と言う事もあって緊張した!したら…こんな面白おかしい言葉使いに…子供って事で見逃してくれ…


「フローラちゃんか!可愛らしい名前だね!もちろん、本名のフロレンティアもね!フローラちゃん、よろしくね♪」(アル)


 アルセリオは、わざわざ身を乗り出して私に握手を求めて来た。…相手が相手だし、握手した方が良いのか…?


「何が訳があって家名を捨てただ?ただ単に、お前があちこちの女性を引っかけ回ったせいで収拾がつかなくなり、家を追い出されたんだろう?子供にまで手を出そうと言うのか?」(リ)


「ちょっと待ってくれ、リア!フローラちゃんに変な事を吹き込むのは止めてくれ!!」(アル)


「事実だろう?フローラ、子供でも手を出すみたいだから気を付けるんだぞ?」(リ)


 私は思わず出しかけた手を引っ込めた。…こいつ、マジか?


「ほら見ろ!?フローラちゃんに怪訝な目で見られてしまったじゃないか!?」(アル)


「いや、お前に向ける視線としては正しいだろう?」(リ)


「正しくない!フローラちゃん!後で言おうと思ったけど、聞いて欲しい!」(アル)


「…すみませんが、簡単な自己紹介だったはずなのですが…まだ時間がかかるのでしょうか?」(ル)


「いや、話を始めよう。このバカの弁明の時間など必要ない」(リ)


「リア!?相変わらず、僕に対して辛辣過ぎないか!?」(アル)


「黙れ!お前の下らない話に多忙な組合長を巻き込むんじゃない!気にせずに話を進めてくれ」(リ)


「ええと?よろしいのでしょうかね?」(ル)


「ああ、問題は一切ない。最悪、それは放置で良いからな。ゴールドランクとしての尊厳は、私だけで保ってみせるさ」(リ)


 なるほど、大体分かった。要は、ゴールドランクと言う憧れの視線は彼女一人が頑張っているという事か…アル何とかさんはただのおまけと見れば良いという事だな。


 視線をアル何とかさんに向けると、少しショックを受けて落ち込んでいた。昔はもっと優しい人だったのにとか言っているが、もしそうだったとしても自業自得に間違いないな。


「それでは、話を始めましょう。と言っても、大体の話はお二人は知っているのですよね?」(ル)


「ああ、どこかの馬鹿がカミロケロスに手を出して、それを獣人の子供が助けた…そのせいで、その子供が死ぬほど怖い目に遭ったとかそんな話であっているなら知っているが?」(リ)


「大体あっているはずです、私に上がってきた報告もそんな感じですね。当人であるフロレンティアさんからは、何か異なる点などございますか?」(ル)


「特にないニャ…です」


「ああ、言葉はいつも通りで結構ですからね?身構えてしまって、肝心な内容を違える方が問題になってしまいますので」(ル)


「…分かったニャ」


 いや、私に丁寧な言葉使いを求めるのが間違っているだけだ。そのはずだ!


「とは言え、それでは曖昧過ぎる話なのも事実です。フロレンティアさん、貴女が話せる範囲で構いませんので、貴女の身に起こった事をなるべく詳しくお話しいただけますか?」(ル)


 言葉は丁寧だが、強制されているような真剣な表情を向けられていた。私がいい加減な事を言えば、アリシアに迷惑がかかるかもしれない…なるべく正直に話そう。



 私は、アリシアに話した内容よりは少しだけ自分の情けない部分はぼかして全てを話した。二人は真剣に私の話に耳を傾けて言葉を挟まずに聞いてくれた。…アル何とかさんは、視界に入っていなかったのでどうしていたか分からなかったが…


「フローラちゃんをそんな目に遭わせるとは!?ちょっとそいつをぶった斬って来る!!」(アル)


 そう言って、本当に行く気なのか部屋を出て行こうとするアル何とかさん。え?マジか!?


「待て!お前はそんな目に遭った少女を置いて行こうと言うのか?傍に居てやった方が良いとは思わないのか?」(リ)


 ハッ!?とした表情をした後、私の右側…つまり、リヴィアさん側ではなく反対側に無理やり入り込み、私の手をとって大丈夫だよ!俺が付いているからね!!とか言って来た。…正直鬱陶しいんですが…そんな視線をリヴィアさんに向けると…


「済まない、その馬鹿が暴走するのを止めるためだ…しばらく我慢してくれ」(リ)


 と、小声で言われてしまったので仕方なしに頷いておいた。彼女の頼みでは仕方あるまい。


「おほん、話が少しそれてしまいましたが…例えカミロケロスと言う強大なデモニオだとしても、森の…スコターディの巨大なデモニオたちをそのように簡単に蹴散らすなどと言う話は、聞いたことがありませんね」(ル)


「え?そうなのニャ?」


 おや?てっきり、あれが普通のカミロケロスとやらの強さだと思ったんだが…違うのか?


「確かにな…そんな強さなら、シルバーランクの奴らでも厳しいだろ?私も実際に戦ってみないと勝てるか分からない所だな」(リ)


「それはつまり…私が逃げる事になったカミロケロスは、たまたま規格外の強さのだったという事かニャ…?」


「恐らくですがそうなるでしょうね。カミロケロスの変異種か、あるいは上位種と言う可能性もあります」(ル)


 何それ!?私って、そんな危険なののさらに上位種にケンカ売ってたのか!?…命があってよかったなホント…


 思い出して少しまた怯えそうになったが、隣のアルセリオ(バカ)のお陰か事なきを得た。バカも役に立つものだな…ただ、いい加減手を離してくれないか?


「おい、そこの馬鹿?もう大丈夫みたいだから、いい加減手を離してやれ」(リ)


「え?そうなのかい?」(アル)


「お陰様で思い出して怯えずに済んだのニャ…ありがとニャ!」


 一応、礼を言っておいた。まあ、偶然とはいえ確かに助かりはしたからな…


「そ、そうか…また、怖くなったら言ってくれて良いからね!!何時でも良いからね!!」(アル)


 そう言って、名残惜しそうに私の手を離した。だが、距離が近いな…このソファーは3人でも十分座れる大きさだが、端っこに私が座っていたのにこいつが無理やり入って来たせいだな。とは言え、位置をずらしても追いかけてくる可能性が高いから無駄な動きはやめておくか…


「しかし、余り相手にしてこなかったデモニオ故の問題が浮上したことになりますね…どうしたものか」(ル)


「確かにな…強さの割に、旨味のない相手だからな。滅多に討伐依頼も出ないし、まあ…放っておいても大丈夫じゃないのか?」(リ)


「そうですね…緊急性がないと言えばないですけどね…手を出さなければ問題ないわけではありますからね。とりあえずは、これだけの犠牲が出てしまった今回の件を踏まえ、今一度カミロケロスについての注意勧告を徹底するように組合事務員一同には伝えておきましょう」(ル)


「それが良いだろうな。とは言え、バカは聞きもしないのが問題なんだがな…」(リ)


「それなのですが、ゴールドアーマーのお二人にもカミロケロスが危険だという事を訴える様にして欲しいのですが…いかがでしょうか?」(ル)


「私は構わない。もちろん、見返りも要らない。無駄に命を落とす者を一人でも減らせるなら、それに越したことは無いからな」(リ)


「僕も異論はないよ。あれは全部僕が狩るからね」(アル)


「は?お前は何を言っているんだ?まさか…さっき言っていたことを本気でやるつもりなのか?」(リ)


「当たり前だろ?フローラちゃんをこんな怯えるような目に遭わせたデモニオだよ?攻撃しなければ安全何て理由で見逃せるわけないじゃないか!」(アル)


「お前って奴はどこまで…」(リ)


 え?冗談じゃなくて本気で言ってるのか?確かに、それが出来たら私の心の平穏を取り戻せるだろうけど…


「無茶ニャ!あれは、人の勝てる生き物じゃなかったのニャ!アルセリオさんがどれくらい強いか知らないけど、竜巻に突っ込むみたいなものニャ!弾き飛ばされて終わりニャ!!」


 ゴールドアーマーがどれだけ強いかは知らないが、あんな巨体の暴風みたいな生物に勝てるわけがない!例え、如何にも強そうなリヴィアさんでもだ!まして、この優男になんて…あ、因みに二人とも美形なんだぜ?だからなんだと言われたらそれまでなんだが…


「フローラちゃんが僕の心配を…俄然やる気が出て来たよ!!」(アル)


「出すな!馬鹿者!!フローラの説明通りなら、私たち二人掛かりでも勝てるか分からない相手なんだぞ!?もし、私たちが負けでもしたらこの町の冒険者たちの士気が一気に落ちるだろう!お前は、自分の立場を考えて行動しろ!!」(リ)


「でも、フローラちゃんをこんな目に遭わせた奴が許せないんだ!!」(アル)


「その本人がやめろと言ってるだろうが!いい加減に聞き分けろ!!」(リ)


「しかし、彼女が本当に恐怖を克服するためには…」(アル)


「少しいいでしょうか?その件について、お二方にお願いもあったのです。とりあえず、討論は後でされるという事で…先に私の話に耳を傾けて頂けないでしょうか?」(ル)


「是非もない。このバカとの堂々巡りの会話に意味などないからな」(リ)


「リアは歯に衣着せぬ物言いをどうにかした方が良いと思うよ…」(アル)


「大丈夫だ、相手は選んでいる」(リ)


「僕は選ばれちゃったわけだ…はあ、もういいや。組合長の話を聞くよ」(アル)


「最初から他の選択肢何てない」(リ)


「・・・」(アル)


「そ、それでお二人にはお願いがあるのです。そのためにはまず、違う話からしなければならないんですが…」(ル)


 そう言って、私に意味ありげな視線を投げかけて来た。意図は良く分からなかったが、話が進まないのは困るので頷いてみせた。すぐに後悔する事になったが…


「実は、先日のカミロケロスの件ですが…まだ解決したかどうか分からないのです。と言うのも…討伐達成以外で、かのデモニオに攻撃して生き残った例がないのです。つまり…」(ル)


「今後、そのカミロケロスに遭遇したらまたフローラたちは襲われるかもしれないという事か?いや…下手をするとすべてのカミロケロスが該当するのか?」(リ)


「その点も憂慮しなければならないのが問題なのです。もし、全てのカミロケロスが何らかの手段でそう言った情報をやり取り出来たとしたら…」(ル)


 つまり、私はカミロケロスすべてに追われるかもしれない?まだ終わっていない…?背筋が凍り付く様な感覚に耐えられずに、ブルッと震えてしまった。それと同時に、収まっていた恐怖が再び顔を出し私を染め上げようとしてきた。


 私は、傍に居るのが誰かも考えられずに手を握った。平時なら絶対にやらない事だったが、多少は効果があった。お陰で、ある程度は思考を保てるくらいで済んでいた。それでも、全身の震えは抑えきれなかったが…


「フローラちゃん…大丈夫だよ、僕が付いているから」(アル)


 抱きしめられて一瞬だけ相手が変態の可能性を思い出したが、言葉と温もりは温かかった。認めたくはないが、アリシアと同じく私の事を本気で心配してくれているから気持ちが伝わってくるのだろう。背に腹は代えられない私は、抱き返してしまうくらいには安心出来てしまっていたのだ。


「くっ…これは試練か!?」(アル)


「そうだ、試練だ。下手な事をすると命を失う試練だ」(リ)


「も、もちろん心得ておりますとも…」(アル)



 しばらく、私の様子を鑑みて待っていてくれたみたいだ。お陰で、大分落ち着いて来たんだが…何か、アルセリオもちょっと震えていないか?そう思って見てみると、凄く複雑そうな顔をしていた。嬉しいような、何かを堪えているような…そんな表情だった。


 何でこんな顔をしているんだ?と思って、他の二人を見てみるとルーベンさんは黙して何やら考え込んでいるようだった。そして、リヴィアさんはこちらを…と言うより、アルセリオをじぃっと見つめていた。殺気がこもったような目で…まだ少しだけ恐怖心が残っているが、これ以上私のせいで話を遅らせるわけには行かないだろう…


「アルセリオさん、もう大丈夫ニャ。ありがとニャ」


 そう言って離れようとしたが…アルセリオの手にがっちりロックされていて抜けられないだと!?ふむ…?


「あの…もう離して欲しいんだけどニャ?」


「あ、すまない。余りの試練に、手が硬直を起こしてしまっていて…」(アル)


「仕方ない、それなら手を斬るしかないな」(リ)


「離れました!離れましたから!!その殺気を収めて下さい!?」(アル)


 両腕を上げて、降参のポーズで必至に訴えかけるアルセリオ。・・・やっぱりバカニャ。


「フローラ、このバカが何かしたらすぐに私に言うんだぞ?すぐに斬り捨ててやるからな?」(リ)


「分かったニャ!」


「ふ、フローラちゃんまでそんな!?」(アル)


「話を進めても宜しいでしょうかね?」(ル)


「ああ、問題ない」(リ)


「同じくニャ」


「・・・はい」(アル)


 落ち込んでる割には、私の傍から離れないな…タフな奴だな。


「脅すような物言いになって、フロレンティアさんを怖がらせたことを最初にお詫びしておきます。申し訳ありませんでした」(ル)


「私が勝手に想像して怖がっただけニャ…気にしないで下さいニャ」


 とは言いつつ、さりげなく今度はリヴィアさんの手を握っていたりするんだが…やましい気持ちからじゃないぞ?


「そう言って頂けると、助かります。ですが、カミロケロス全体から狙われるという事はないと私は思っております」(ル)


「理由を聞いても良いか?」(リ)


「仮に、そう言った意思疎通が全体に出来るようなら、今まで狩りでカミロケロスを倒した冒険者も狙われて然りかと思われるからです」(ル)


「確かにな…楽観し過ぎるのも問題だが、そう言う事ならまずは問題ないか」(リ)


「ですが、万が一という事も考えられます。今回のカミロケロスは、上位種の可能性もあるみたいですからね…そこでお二人にお願いがあるのです」(ル)


「つまり、フローラを連れてカミロケロスのいるところまで言って欲しいと言う事か?」(リ)


「察しが早くて助かります」(ル)


「バカな!?フローラちゃんをわざわざ危険かもしれない所に連れて行けと言うのか!!?」(アル)


「落ち着け!可能性があるだけだ。だが、今後フローラが冒険者をするならいずれ相対する可能性があるんだぞ?今のうちに確認しておくべきことだろう?ならば、私たちが一緒に居た方が良いと思わないか?」(リ)


「それはそうだが…フローラちゃんの心の傷が癒えるのを待つくらいは…」(アル)


「時間が解決する場合もあるが、こういったトラウマは逆に時間と共に悪化してしまう危険性もある。・・・フローラ、お前が決めろ。行くか、逃げるか…を」(リ)


「その聞き方は少しずるいんじゃないか!?」(アル)


「アルセリオさん!良いのニャ!!・・・行きます!行かなければ、一生抱えてしまうと思うから…」


「良いだろう、覚悟があるなら守ってやる」(リ)


「はい!頑張りますニャ!!」


「ぼ、僕が守るから!フローラちゃんは僕が命を賭して守るからね!?」(アル)


「アルセリオさん、ありがとニャ」


 お礼は言っては見たものの、個人的な見解としてはリヴィアさんの方が頼りになりそうな気がするんだよな…


「という事は、受けてくれるという事で良ろしいのでしょうか?」(ル)


「ああ、それでいい。この程度の事なら、報酬も要らない」(リ)


「しかし、カミロケロスとの戦闘になる可能性も…」(ル)


「大丈夫だ。カミロケロスなど、蹴散らしてやるさ。主に、こいつがな?」(リ)


「もちろんだ!フローラちゃんに害をなす存在は、僕が許さない!!」(アル)


「言っておくが、自分から斬りかかるなよ?フローラが危険にさらされる可能性を自分から作るような事だけは避けるんだぞ?」(リ)


「当たり前だ!フローラちゃんを狙ってこない限りは、とりあえずは相手にしないさ」(アル)


「とりあえずと言うのが気になるが…まあいい。そう言う事だ、これから向かうという事で良いのか?」(リ)


「ありがとうございます。これから向かうかは、フロレンティアさん次第です。それで、私としては思ったより時間が掛かってしまった都合…」(ル)


「ああ、後は私たちで話し合って決める。すぐに仕事に戻ってくれて構わない」(リ)


「ありがとうございます、では…今度はゆっくりお話しをしましょう」(ル)


 そう言って、ルーベンさんはお辞儀をしてから足早に部屋を出て行った。


「本当に時間がないようだな…時間を取ってしまって悪い事をしたな」(リ)


「私が怖がってしまったせいニャ…」


「いや、そこのバカがバカな話ばかりしたせいだ」(リ)


「僕だけのせいだと言うのかい!?」(アル)


「ああ、間違いない」(リ)


「フローラちゃん、どう思う?これが、相棒に対してする態度だと思うかい?」(アル)


「ニャははは…」


 私は笑って誤魔化した。さすがに自業自得だと言い放つのは、さっきまで頼ってしまった都合出来なかった。


「それでは、行くか?」(リ)


「は、はいニャ!」


「え?話し合って行くか決めるんじゃないの!?」(アル)


「勢いが大事なんだ…余計な事は言わないで良い」(リ)


 リヴィアさんは、アルセリオを人睨みした後に歩き出した。私は、その後に続いた。


「ちょっと待ってくれ!?本当に行くのか!?仕方ない、フローラちゃんは僕の後ろに隠れているんだよ!!」(アル)


 そう言って、小走りに私の横に並んできたアルセリオに頷き返した。


 その後、ナディアさんと、アセリアに事情を話した。引き留められるかと思ったけど、アセリアはゴールドランクの二人が一緒なら安心だと納得してくれた。・・・やっぱり、私が知らないだけでこの二人は相当強いって事なんだろうな…


 更にその後、アセリアよりも門番のマルセロさんが中々納得してくれないと言う事件があったが、何とか町の外に出る事が出来た。・・・いやでも緊張するな…せめて、無様に錯乱しない様にだけはしないとな…


 それから、平原を目指してしばらく歩いていると…


「いたな。さて…フローラ、平気か?」(リ)


「だ、大丈夫ニャ!」


 と言いつつ、さりげなく隣に居たアルセリオの手を掴んでしまった。・・・仕方ないよな?


「強がる事が出来れば上等だ!・・・行くぞ」(リ)


「は、はいニャ」


 私は等々アルセリオの腕にしがみ付いてしまったが、何とか前に進むことは出来た。・・・セーフだよな?


「フローラちゃん!何度も言うけど、僕が守るから大丈夫だよ!!」(アル)


 私は、何度もそう言って来るアルセリオに頷き返すのが精一杯だった。あれに近付いて…本当に正気を保てるだろうか…不安に無理やり蓋をして、私たちはカミロケロスに近付いて行った…





最後までお読み頂き、ありがとうございます。


作者の中では本編突入なんですが…変わってないですね…


次話もよろしくお願いします。

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