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問一「うだつの上がらない男」

懲りずにまた新作です。短かったり長かったりするかもしれませんが、よろしくお願いします。

 俺は相原安生(あいはらやすお)。ごくごく普通の一般ピープルってやつだ。優秀な成績(誇張)で高校を卒業した後、大学受験に失敗しそのまま就職。現在は、成績不振に喘ぐただの平社員を継続中だ。


 昔から、継続は力なりの真逆を実践しているような俺だ。つまりはすごく飽きっぽく何をやっても続かない。自分でも一番酷いと思うのは、空手を習い始めて一週間で止めた事だ。あれはさすがに激しく怒られたっけなぁ…


 もちろん、飽きっぽい性格を直そうとしたことは何度もある。だが、結果がどうなったかは現状を鑑みれば一目瞭然だろう?本当にどうしようもない奴だよなぁ…


「ええい!やめやめ!!今日も発泡酒でも飲んで嫌な事は全部忘れるぞ!!」


 毎日がこんな感じだ。現状を思い悩むことはあるが、結局は明日に丸投げするか、思い付きで何かを始めてすぐに飽きて止めてしまう事の繰り返しだ。このままずっと、うだつの上がらない生活を生涯続けるのだろうなと自分でも何となく諦めていたんだろう。()()()()が起こるとは思わずに


「ただいまっと!まあ、誰もいないんだけどな?ははは…」


 利便性の悪い1LDKのアパートの一室に住む俺に、もちろん同居人などいるはずがない。ただ、寂しさを紛らわせるためにたまにこんな挨拶をすることがある。余計に空しくなるだけなんだけどな…


「さて、パソコンでニュースなどチェックしますか」


 そう言いながら、発泡酒を開けて一気に煽る!くぁ!!この一口目が最高なんだよなぁ!!


 このスマホの時代、何故パソコンでニュースのチェックを?と思うかもしれない。だが、会社でスマホをいじっているといつも俺に嫌味を言って来る上司が煩いので、いつの間にかスマホ離れをしてしまった。もちろん、全く使わないわけじゃないがパソコンが主体になってしまったのは間違いない。


「うん?なんだ?」


 どうやらメールが入っているみたいだ。基本的に色々な登録にはフリーメールを使っている都合、こっちにはそんなには入らないはずなんだが…


「アンケートにご協力ください?うーむ、怪しい感じはないし…まあ、今日の俺は気分が良いから答えてやろうではないか!!」


 お気付きの人もいるかもしれないが、俺は酒を飲むと気が大きくなる。これも、現状維持に大きく貢献しているかもしれないが…


 アンケートの内容は何処にでもありそうなものだった。現在の状況に不満はないか?とか、違う場所に行きたくなることは無いか?とか、旅行か何かの会社か?


「でも、猫が好きかとか関係ないだろ?あれか?飼ってるかどうかとかか…?」


 やはり、気が大きくなっていたのだろう。俺は、色々不思議に思いつつ最後まで答えてから送信した。


「って、俺ってば相手が誰なのか分からずに送信してしまったじゃないか!はっはっは!!」


 気が大きくなるとは恐ろしい事だと後で思う事になるのだが、すでに手遅れである。とりあえず、相手のアドレスから何かわからないか見てみると…


「The Angel?そうか!相手が天使なら問題ないか!!」


 普段の俺なら…いや、一般常識を持っている人間なら間違いなく怪しい!と思う所だが、気が大きくなっている今の俺には根拠もないのに大丈夫だ!としか思えていない。皆さんも、飲みすぎだけじゃなくお酒に弱い人は特にご注意ください。


「よし!今日のニュースでもチェックしちゃうかぁ!!」


 無駄なハイテンションで今日のニュースをチェックしていく俺。そして、いつの間にか眠ってしまい朝方にバタバタすることになるのである。それが、いつも通り…俺の日常だ。



 そんなこんなで数日、いつも通りの毎日を過ごしていたある日の事。俺は、帰宅後すぐに発泡酒を煽りながらパソコンを起動する。すると…


「あれ?アンケートの回答による抽選結果?・・・ああ!この間の意味が解らなかったあれか!すっかり忘れてたなぁ!!あれ?あのアンケートって抽選で何か貰えたのか…?」


 躊躇なく問題のメールを開く俺。ウィルスが入っていたら?とか全く考えない行動だ。もし、他に人が居たら間違いなく止めていただろう。


「何々?異世界転生権?・・・ぷっ!あっはっはっは!!こりゃ一本取られたなぁ!!異世界転生だって?そんなの信じる歳かっての!!そんなの中学の時に卒業しましたぁ!!」


 何が楽しいのか、中学までは異世界に行けると信じていたと暴露する俺。酒を飲んでも飲まれるなと言う事だ。


「あー、久しぶりに大笑いしてしまったわ!!全く、いたずらメールにしては凝り過ぎだろ?この天使さんとやらは何がしたかったんだ…?」


 いたずらだと分かっても何となく最後までスクロールしてみる。うん?


「ふむ、内容は何か長いから飛ばしてみたが…最後のこのボタン…異世界へGO!!とか、面白過ぎだろ!!」


 何が可笑しいのか分からないのに、何やらツボにはまった俺は一人笑い転げた。そして…


「よぉし!異世界へ行っちゃうぞ♪いざ!異世界へGO!!!」


 俺は、ノリのままにそのボタンを押してしまったのだった。


 その日、一人のうだつの上がらない男が地球から忽然といなくなった。その現状は、まるでパソコンのモニターの前から突然いなくなったようだと言う話だった。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

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