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王都騒擾 急転

 王都リムドブルム。

 少し前までは正の感情で溢れていた場所が今では負の感情で埋もれている。

 大通りは黒いフードたちに完全に占拠されてるし、住人たちは…いくつかある大きい十字路に分けられて集められてんな。

 これじゃあさっき逃げてった奴がどれかわかんねぇ。

 というかもう輝石取り返すとかそういう場合じゃなくない? なにこれ増やし鬼の最終局面かよ。


「お父さん、増やし鬼って何?」


 ああ、鬼ごっこの進化系みたいなもんで鬼に捕まったら交代するんじゃなくて捕まった人も鬼になるんだ。場所によってはゾンビ鬼とか言われてって…三千はまず鬼ごっこがわからないか。


「つまりどうゆう事?」


 周りに敵しかいないってこと。それにしても一体衛兵たちはどうしたんだ? まさかあの魔王2号戦力片っ端から洗脳して連れてきたんじゃないだろうな。

 だとしたらここが制圧されるのも納得がいく。いくらフードたちが多くとも制圧が早すぎるからな。

 物陰から顔を出し再び様子を伺う。

 ひらけた場所に捕まってる住人と黒フードが多数、それとこっちを見つめる黒フードが一人……。あれバレてね? やだ、あんな熱い視線初めて見た。

 まぁ今はどっからどうみても青く麗しいお花ですし? 大丈夫っしょ。


「あの人こっちきてるよ」


 ウッソだろお前……。

 確かに一人様子を見にこっち来ている。よしじゃあちょっと後ろに下がろうか?


「こう?」


 三千が二、三歩後ずさる。

 そうそれでいいんだ。あとはあいつがここを曲がるのを待って左フックゥゥゥゥ!!

 思惑どおり曲がってきた黒フードは俺の必殺、触手左フックを顎に受け意識を刈り取られる。

 よしじゃあ俺はこいつに寄生するとしよう。


「左腕よし、右腕よし、両足よし。」


 奪った身体を使えば普通に喋れる。相変わらず便利過ぎる能力だ。


「お父さん、何するの?」


「輝石取り返してくる。だから三千はみつからないところに隠れておいてくれ」


 奴らの仲間に寄生して奴らを探る。これが変装の最終形態なのでは?

 見たところ黒フードは住人たちと一緒に十字路のど真ん中に集まっているだけで大通りには基本出ていない。


「じゃあ行ってくる」


 一歩二歩、黒フードたちに近づいていく。

 

「あのーすいませーん」


 そう言いかけたその時だった。

 頭部に衝撃が走る。痛みはない。手探りで確認すると額が矢で撃ち抜かれていた。


「なんでバレた!?」


 作戦変更! 回れ右して逃走します!

 急ぎ三千といた路地に逃げ込む。


「逃げるぞ三千!」


 返事も聞く間も無く娘を抱え走り出す。


「お、お父さんどうしたの!?」


「知らん。なんかバレた!」


「そうじゃなくて、その……被り物の色が……」


 被り物?

 三千が驚いた顔で指差すフードを少しめくって確認する。


 なんか白くなってた。


「なんで!?」


 いやいやそんなことは今は関係ない。見つかって追われていることが問題なのだ。

 ほら、少し後ろを振り返ると……路地を濁流のように進んでくる黒い大群が……。

 それはもうワラワラと。

 もう言葉が出ない。キモい以外の言葉が出ない。

 というかさっき大通りにいた数より確実に増えてる。しかも加速し続けている。


「お父さん、もうすぐ後ろに!」


 捕まるか捕まらないかのその時だった。

 いきなり足元から白い煙が吹き出しあたり一面を覆う。


「こっちだ!」


 どこかで聞いたことのある男の声。今は従う方が良いと判断し、声の方へ曲がる。

 スモークの中、声の主と思われしシルエットが早くこの建物の中に入れと手を振っていた。

 

「三千、飛び込むぞ!」


 無我夢中で建物に突っ込む。

 男は俺が入ったと同時に扉を閉め内側から鍵をかける。


「危なかったな」


 どこかで聞いたことのある声、それもそうだ。顔を見て思い出した。


「アルメスさん、ありがとうございます」


「ん? どこかで出会ったことがあるかね?」


 男は不思議そうに答える。

 そう彼は、俺がこの世界に来てから3人目に出会った男。メアリに父と呼ばれ俺がいた屋敷の領主。


「いえ、俺が一方的にあなたのことを知っているだけです」


「そうか、私もそれなりに有名だったのだな」


「お父さん、この人のこと知ってるの?」


「あの城で出会った女の子のお父さんだよ」


「おや、メリーの知り合いだったか。だがここで話を広げるのはやめておこう」


 そう言いながらアルメスは何故か床板を外している。その様子をじっと見ていると床板の下に地下への階段が現れた。


「ここからこの地域を脱出できる。とにかく南にいこう。防衛戦が敷かれいてその向こう側は安全だからな」









 階段は下水道のようなものに繋がっておりそこを抜けると兵士や一般人が集まっていた。


「クヒヒ、ようこそ南大門防衛戦へ。ここの指揮をしているストラテジーだ。」


「ああよろしく……」


 ヤベェ、どう名乗ればいいんだろう。お花さん? いやそれはないわ。いくらなんでもないわー。


「どうかしたのかな? クヒヒ」


「いえ、私の名前は……アレ?」


 視点が右に下がる。ずぶりと泥沼に片足を引きずりこまれたかのように。

 勢いは止まらず俺は地面に倒れこんだ。








「……これで我らの悲願は達成される」


「ここまで実に長かったナ、蜘蛛ヨ」


 二人の会話がその場に響く。


「ゲキダンチョウ! ナンデ!?」


 鎖に繋がれた少女は吠える。髪は燃えるように紅く、先ほどまで劇で客を魅了した身体は数え切れないほど呪符を貼り付けられている。


「おや、アリスすまないナ。君は選ばれたんダ」


「……蝙蝠よ。彼女が英雄の魂を投影できる者か?」


「ああ、彼女は感情に反応して髪の色が変化すル。あれは周りの魔力が彼女の色に染まっているんダ。それに彼女は演じることにおいては神と呼んでいいほど才能に満ち溢れていル」


「……ほう、それは是非一度見てみたいな」


「残念ながらそんな時間はなイ。彼女には英雄の魂を上書きしてこの先、一生英雄を演じてもらうからナ」


「ミンナは! ミンナハドコニ!?」


「お前の感情は要らなイ」


 蝙蝠と呼ばれた男が指を鳴らす。

 その音に反応し呪符がアリスの意識を刈り取ろうと一斉に起動する。


「ぁぁぁあああああああああああ!!」


「さぁ輝石ヲ」


「……応」


 蜘蛛が透明に透き通った石を彼女の胸に押し付ける。輝石はアリスの身体に吸い込まれていき消えていった。

 絶叫は止みアリスだった人は鎖を引きちぎり立ち上がる。


「ここは? 私は蘇ったのか?」


「第2段階へ移るゾ」


「なっ、どうゆうことだ!」


 再び蝙蝠が指を鳴らす。先ほどと同じように呪符が一斉に起動しアリスを苦しめる。


「がぁぁぁ!? これは私、それとも俺、僕? 一体誰の記憶が混ざっている!?」


「……反・英雄の復活だ」

今回も読んでいただきありがとうございます

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