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関羽と周倉、血祭りフェスをおおいに満喫する

周倉。字は元福。

演義には関羽の片腕として登場するが史実には登場しない架空の人物。

関羽に置いていかれぬようにと、関羽の駆る、名馬赤兎馬と同じ速度で走ったという伝説の持ち主。

「ぬおおぉぉおおぉおお!!」




 関羽が悲痛な叫びを上げた。




「周倉おおぉぉおおぉおお!」




 背後に迫る殺気に反応し、考えるよりも先に体が動いていた。

 思考が動作に追いついた時には、偃月刀が周倉の首を胴から斬り離す寸前だった。

 皮一枚で首と胴体が繋がってるだけで、そこから血が噴水のように吹き出した。



「死ぬなああぁぁあああぁああ!! これはかすり傷だ! 漢なら死なぬはずだ!」


 


 関羽は周倉の首を胴に押し付けた。




「完全に生命活動を停止してます」


「おぬしが変なテンションで大声出したからだぞ! いや違う。他人のせいにするな関羽雲長(かんう・うんちょう)! 漢は責任逃れはせぬ!」


「ふふん、つまり私は命の恩人ですねー。恩を売って何を買ってもらおうかな~」


「接着剤だ!」


「嫌ですよー。そんなの要りませーん」


「ポンコツが! 早く接着剤を出せ! 今なら間に合うかかも知れぬ!」


「人間は人形じゃありませんよ?」




 簡擁の言う事など聞くに値しないとばかりに周倉の首を何度も胴に押し付けては、引っ付いてないか確認する為に首を持ち上げたりを繰り返した。




 そこに張飛が帰ってきて硬直した。




 この場面だけを見れば、関羽が素手で周倉の首を引き抜いてると思うだろう。




「ちょ! お前! 何してんの!」




 張飛は関羽に張り手をして正気に戻させた。


 事の内容は簡擁の機能の一つである『見たまま録画』していたので、それを目から投射して再生してもらい把握する。




「自責の念にかられる必要ねーな、兄弟。単なる正当防衛だ。つーか、この周倉って野郎、普通に悪党じゃねーかよ」


「しかし、あの方との誓いがある。理由はどうあれ守らぬわけにはいかぬ」


「はっ、蛍の尻に誓ったのは、はかなく消える誓いですよっていう伏線を張ってたんだろ。だったら問題ないだろーが」


「うむ。いやしかし、だがしかしだ」


「何だよ歯切れ悪いな。漢なら一言で決めろや」


「おぬしの言にのるか迷ったのだ。だが周倉の体は温かい。こやつめまだ死んでおらん。漢ならあれぐらいでは死なぬ! つまり誓いはまだ生きてる!」


「誓いもこいつも既に死んでるだろ。HPがマイナス5000ぐらいで逝ってるぜ。これで生きてたら化物だ」


「化物ではなく漢だ。真の漢なら這い上がってこい!」




 関羽は周倉の亡骸を抱え上げると、崖へと投げ捨てた。 


 夜の静寂に鈍く嫌な音が響いて消えていった。

 簡擁はふわわわと怯えたような声を上げたが、張飛は崖に一瞥くれただけだった。




「漢ならば這い上がってこよう。そうでなければそのまま逃げだすであろう。一時間だけ待つ」


「ちっ、気持ちの整理つけんのに一時間もかかんのかよ。寝る」




 張飛は朝まで寝るつもりで横になった。塩を奪った若者も休息をとっているはずだ。

 賊に襲われてはいないはず。張飛がほぼ全滅に追い込んだのだから。

 朝から追いかければ直に見つかるはずだと思案しながら、眠りに落ちてかけたところ、関羽の怒声で引きずり上げられた。




「周倉! やはりお主這い上がってきたか!」




 関羽が何事か怒鳴りながら、偃月刀を振り回した。何もない空間に、無茶苦茶に振り回している。


 張飛が一喝しても止まらないので背後から組み崩して、押さえつけた。




「落ち着け兄弟。関羽らしくもなく取り乱すなよ。そんなに誓いが重いのかよ」


「放さぬか張飛! 崖を這い上がってきた漢がいたので、驚いて斬りつけてしまったが、流石は漢・周倉。我が斬撃をうまくかわしおる。周倉だと分かったので、そのまま少し手合わせしただけの話よ。ははは。見ろ、周倉が笑っておるわ」


「しっかりしろ兄弟! ここには俺達と簡擁しかいない! 簡擁も何か言って落ち着かせろ」


 

 簡擁は眠そうな目をこすって了解した。


 

「念のために索敵し、センサーには私達しかいないのを確認しましょう。科学的に張飛さんの言葉を裏付けします」


 


 簡雍の瞳が青から赤に変化し、周囲を見渡す。




「索敵しましたが、関羽さんの前に強いプラズマ体反応がある以外は異常無しですね。プラズマ体の正体は解明不可能とでました」




 簡擁はわざわざプラズマ体の輪郭を指でなぞり出した。




「さっきの人みたいな形ですねー。ん~足が無いですね足からず。あは、面白い面白い! なかなか良かったですよね張飛さん」




「笑えるかボケ!! 嫌だ俺はこうゆうの嫌いだ! 関羽、誰と握手してんだやめろよ!!」




 この夜は関羽が何か言う度に張飛の悲鳴が何度も鳴り響いた。もう寝てる空気ではなかったので、張飛は先に進む事とした。腰を落ちつけて語り明かしたいという関羽を、張飛が完全拒否して不眠不休で荷車の跡を追った。関羽と簡擁も仕方なしとばかりに後を追った。

 しかし明け方になっても荷車に追いつけない。つまりは若者も休まず進んでいるという事だ。




「あれだけの量を引き続けるとは――周倉の言うように、劉備殿はかなりの漢らしいな」


「誰だよ劉備て! 誰だよ周倉て! お前は単に独り言を呟いてただけだ! 朝から寝言ばかり言うな!」


「喧嘩はだめですよ~。プラズマさんも悲しそうに張飛さん手を握ってますよ~」


「ウオオオォォオオ! 触るなもののけぇぇええぇ!」


「嘘ですよモーニングじょーくです。張飛さんかーわい~。ヒャン! 痛いです痛いです!」


「簡擁! 俺をコケにして生きてた奴はいねーぜ! 今からそれを思い知らせてやらあ!」


「やめぬか見苦しい。周倉も笑って止めに入っておるではないか」


「ウオオオォォオオ! 触るなもののけぇぇええぇ!」


 張飛のテンションが変な方向へ無駄に上がり、そして太陽がいつも通りに高く昇った頃にようやく楼桑村に入った。

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