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ヴァルハラの戦神  作者: 零楓うらん
第二章 【思惑】
8/20

二幕【異変】

【前回のあらすじ】

新しいメンバーを加えた日常を過ごす悠真。

その前に現れたのは天界に連れて行かれたはずのロキだった。

ロキの行動を怪しみつつも日常を過ごそうとする悠真だったが……。



ロキ達と望まぬ再開をした次の日。

今日は土曜日、俺達は久しぶりに皆で遊びに行くことにした。

ロキの一件で休日も動いていた為、遊びに行く時間は取れなかったのだ。


そして今回はいつもの三人ではなく、新しく加わった二人も交えた5人で遊ぶことになった。

そもそも君丈も縷々も部活で忙しい為、皆で遊べるのは珍しい。

なんだかんだ学校では一緒にいるが、外で遊ぶのが初めてという事もあり俺は内心ワクワクしていた。


今後の学校生活、こうやって皆で遊ぶ機会も何度かあるかわからない。

今日は目いっぱい遊ぶつもりだ






挿絵(By みてみん)

―ヴァルハラの戦神―

二章 二幕【異変】






「ね~ね~悠真く~ん。これ買ってよ~♪」


縷々が高そうなアクセサリーを指さす。

確かに可愛いし、ちょっとくらいなら男として買ってあげたいとも思う。

だがどう見ても値段は可愛くない。


「バイトもしてない俺にそんな余裕があると思うのか?」


「SA手術を受けた残りのお金があるの、縷々知ってるんだよ~?」


「うぐっ……なんで知ってるんだよ……」


俺はSA手術を受けるために去年、つまり高校一年の時に必死にバイトしてお金を貯めていた。

その甲斐あって無事SA手術は受けれたが、SAチップを買うまではお金が足りなかったのだ。


SAチップは基本的に国が安価で提供してるが、それでも一個数万円はする。

あくまで最新技術にしては安価と言うだけだ。

個人でも製作している物がいるが、オリジナルのチップはもちろん値段が上がる。

改造チップなどさらにその数倍はする。


バイトを続ける選択肢もあったが、君丈や縷々との時間を守るためにSA手術を受けたのにその時間が消えるのは本末転倒に思えた。

それに俺は偶然改造チップを手に入れた。

だから俺はバイトを辞めたんだ。

その時のSAチップに使おうとしていた残りの金がまだ残っているのは事実だが……。


確かに買えないことはない。

というか縷々も本気で買ってと言っているわけではないだろう。

だが、ここは男として買ってあげるべきか……。


「なによ、男ならここはドーンと買ってあげなさいよ」


「うっ……」


「ありす、追い打ちをかけるな」


「じゃあ優斗、これ買って♪」


「金ないから無理」


「なによもう!」


そもそも蒼とありすはどうやって生活してるんだろうか……。

神の力でどうにかできるならお金ももってそうだが……。

いや、それはそれで普通に犯罪臭がするな。


「縷々も悠真をいじめてやるなよ。ほら、そこのゲーセンで遊ぼうぜ」


君丈が助け船を出してくれた。

縷々が欲しいアクセサリーはまたいつか買ってプレゼントしてやる事にしよう。

まあ君丈が単にゲーセンで遊びたいだけもあると思うが。



―――――



「ん?なんか新しいリズムゲームでも出たのか?」


ゲーセンの一角に起動していない見慣れないゲーム機があった。

リズムゲームだと思ったのは、何かをするための十分なスペースが取られていたからである。

ギターをしたりドラムをやったり、そういう系のゲームかもしれない。


「あれでしょ?なんか踊って得点出すやつ。ここのゲーセンになかったから、やっと入るって噂してる子いたし」


ありすの言葉でそんなゲームがあったのを思い出した。

成神市自体は最新科学で発展したが、それは中心街のみの話し。

俺達が住んでいる場所は未だに田舎だった頃の影響が根強い。

むしろ中心街に人が多く行ったため、ここら辺は前より田舎になったともいえる。


「ありすちゃんて運動神経いいし、ダンスとか得意そうだよね~」


確かにありすは文武両道で有名だ。

ダンスも綺麗にこなしてしまうだろう。


「あ~……やめとけやめとけ。ありすに音楽は向かん」


「なっ!失礼ね!私だってそれくらいできるし。なんならこのゲームが稼動したら勝負してみる?」


「いいぜ?負ける気がしないけどな」


「言ったからね。覚悟しなさいよ」


ありすは負けん気が強い。

付き合いの長さもあるだろうが、こうやってずっとからかわれる続ければ対応もフランクになっていくよな……。

蒼とありすの関係はここに居る皆には周知の事実だが、知ってからはこの二人のやり取りに納得いくものが多い。

逆になんで蒼の事が好きだったのかは謎が深まるばかりだが……。


「じゃあ今日はカラオケで勝負でどうだ?」


「それはパスで」


君丈の提案をあっさり断る辺り、自覚はあるのだろうか。

今まで音楽の授業の時に実技はなかったが、実技のある日はもしかしたら地獄を見るかもしれない……。


その後充分にゲーセンを楽しんだ俺達は、時間もいい時間になってきたので帰る事にした。


俺達はゲーセンを出た。









―――――









その後も俺達は日が暮れるまで遊んだ。

こんなに遊んだのはいつぶりの事だろう。


やはり遊ぶのはたのしい。

楽しすぎてじかんをわすれるくらいだ。




明日は学校だっただろうか。

いや、明日も休みだ。

あしたもめいっぱいあぞぼう。


俺達はあそぶために集まったのだから。


あしたはなにをしようか。


みんあでからおけにいくのもいいかおしれない。

きょういけなかっぁのだから。





あしたいけばいいんだ。



そうやっえまいにいあぞんぇ


ぉれたちは

たのしぃまぃにち




をすごぃて



だって、ぉえたちあ



ぁそびためにぅまれ

たの、だかぁ


そぅ、まぃにち



ぁそん
























◇■●■×

























学校でも楽しくいるべきだ。

身体を動かす事はいいことだ。


そうやって遊んでいればいざという時も遊べる。


いざ遊ぶときは


いざ






いざってなんだ?








いや、ちがうな。






そんな時はもう来ないんだ。


だから俺達は遊んで日常を


守るんだ。


俺達の日常は続いていく。

これからも


この先も


ずっと

















ソレハタノシイセイカツヲ














声が聞こえた。


―――――――――


だが誰の声だっただろう。


―――――――――


随分懐かしい気がする。


――――――――ま


でも俺にはもう必要ない声で。


―う―――――!


目の前にはいつもの皆。


君丈


縷々



ありす


そして俺


――――――――ゆうま!


ゆうま?


それは誰だっただろうか。


聞き覚えがある名前だ。


―――――ゆうま!しっか――――


誰を呼んでいるんだ。


ゆうまって誰だ。


俺は―――だ。


―――――――――――


俺は……誰だ?


そもそも誰が呼んでいる。


蒼か?

蒼はありすと話している。


ありすか?

ありすはもちろん蒼と話している。


じゃあ君丈か?

君丈はだるそうに机に突っ伏している。


なら縷々かもしれない。

縷々は………………。


縷々は目の前にいる。


―――――――ゆうま!


でもこれは縷々の声だ。

俺は思い出した。

これは縷々の声……じゃあ目の前のこいつは誰だ?


いや、違う。

これは縷々であって縷々の声じゃない。

俺は最近この声とよく会話をしていた。




―――――ま!私の名を――――




名前?


それは…………。


お前の名は…………。






「フレイヤ」






×■●■◇






フレイヤの名を呼んだ瞬間、世界が音を立てて崩れた。

今まで自分が何をしていたのかが思い出せない。

頭がひどく痛く、その反動で強く頭を掴んで痛みを和らげようとした。

だが頭の痛みは収まらず、ガンガンと頭痛が響いていた。


「悠真!私がわかるか!」


「フレイヤ……だろ……」


「そうだ、私はフレイヤだ。自分の名前はわかるか?」


「俺は…………桂木悠真……だ」


「そうだ、お前は悠真だ。ちゃんと帰ってこれたみたいだな」


頭を押さえながら辺りを見渡すと、そこは学校の教室だった。

時間はすでに夜になっている。

そもそも今日は何月何日だ。

俺達は確かゲーセンを出て………いや、そこからの記憶が曖昧だ。

少なからず学校にこんな夜遅くに来る用事も、来ようともしていなかったはず。


「ここは俺達の教室か……」


見慣れた部屋、見慣れた席順。

俺達は律儀にも自分達の席に座っていた。

座っているのは俺と蒼、ありす、君丈。

それぞれが頭を抱えて具合が悪そうにしている。

縷々、いやフレイヤだけが席を立って俺の前にいた。


「なにがあったんだ……」


「悠真も起きたか……俺達は敵の罠にはまったらしい。これは幻術だ……」


蒼も影響を受けているようで、頭を押さえながらもぽつぽつと俺に話し始めた。


「俺達はゲーセンを出たあたりに幻術にかけられたんだろう……。記憶も曖昧に日々を生活させられていたんだろうな……」


フレイヤが蒼に手で制止をかけた。

おそらく蒼には休めと言うことだろう。

そのままフレイヤが説明を続けた。


「幻術と言うのは正確には幻を実体化する物と認識を変えてしまう二つの方法がある。幻を実体化する幻術は悠真は何度か見ている結界なんかがそうだ。あれは現実と違う別空間を実体化する。今回の幻術は後者、認識を変える幻術だ。悠真達にかけられた幻術は、日々を普通に過ごしているように思わせる幻術だな」


「日々を普通に過ごす……?それに何の意味がある……」


「意味ならいくらでもある。例えばロキが知らずに神器を取ろうとしたとしても私達は気づけない」


その一言で俺は頭が回転し始める。

ロキは三神の神器を集めて自分のレーヴァテインという強力な神器を作っていた。

前回は未遂に終わったが、今回は成功していたとしたら?

すでにロキは本物のレーヴァテインを完成させ、世の中を滅ぼそうとしているかもしれない。


「そ、れは……もう打つ手がないのか!?前みたいに勝てる手段は!?」


「悠真、落ち着け。さっきのはただの例だ。そういう事もできるという事だ」


「【できる】……?じゃあ神器は取られていないのか?」


「そうだ。私を含め、誰の神器も取られていない」


「なんだよ……驚かせやがって……」


こわばった全身の筋肉がほぐれていく。

まるでもう取られたような言い方だったからさすがに焦った。


「……………………」


いや、違う。

おかしいじゃないか。

そんなことをされてもおかしくない状況でみんな無事で神器も無事?

じゃあ敵は何のために幻術をかけたんだ?


「それはおかしいじゃねぇか」


「そうだ。おかしいんだ。とりあえず状況を整理する必要がある。他の皆ももう話くらいなら聞ける状態だろう。まずは幻術後の事を話そう」


フレイヤの話しによると、昨日の夜に縷々が変な事に気づいたらしい。

普段フレイヤは、縷々の内的人格として縷々とも心の中で話したり、体の所有権を交代したりできると言う。

だが昨日の夜、縷々に話しかけても反応がなかった。

おかしいと思い、体の所有権を無理やり奪おうとしても出られなかったようだ。

そこから苦戦の末、フレイヤが表に出れたのが今日の夕方。

教室から動かない俺達の幻術を解いている内に夜になった。

ちなみに縷々も幻術は解けていて、今はフレイヤの中で休憩しているようだ。


「迷惑をかけたなフレイヤ」


「これも私の使命だ。それで、この状況をオーディンはどう見る」


状況は不可解以外の何物でもない。

普通はそんな無防備な状態であれば何かをするのが当然だ。


「んー………何かをする為なのは間違いないだろうがな……」


「俺達が動けないうちに攻撃しようとした……とか……?」


「いや、この手の幻術は攻撃すると解ける可能性が高い。不意打ちには向いてるが、今の現状を考えてもその可能性は低いだろうな」


確かに攻撃するつもりだったならもう被害は出ているはずだ。

だから神器を盗るというのが真っ先に思い浮かんだって事か。

だが神器は無事。

となると……。


「じゃあ動けなくするのが目的だった?」


「悠真の言うとおりだ。敵の狙いは俺達を行動不能にする事。何かを邪魔されたくない……あるいはもう少し後で何かをするつもりだった……いや、それは安易に考えすぎだな」


俺達を行動不能にするメリットはあるだろう。

だがそれも俺達が神の関係者だとわかっている事が前提だ。

情報を知っていて尚且つ行動不能に留めた……?

なら少なくとも俺達を脅威だと思ってるって事か?


「というか、今回のってやばくないか?俺たち全員を幻術とやらにかけたんだろ?相当強いやつなんじゃないのか」


前回の状況とは違う。

ロキと戦った時は君丈以外は何かしら弱体している状態だった。

今回は全員が通常状態だ。

俺はともかくとして、他の四人、いや、少なくとも神三人を手玉に取れる相手と言うのは今の俺には想像がつかない。


「悠真の考えは半分当たってる。神の力が強ければそれも可能だ。だが、縷々ちゃんが身体の主導権を握っていたとはいえ、こんなにもフレイヤが時間がかかるくらいの幻術を複数人にかけるのは異常としか言えない。フレイヤは神の中でもかなり上位の魔法の使い手だからな」


「幻術は専門外ではある。だから幻術のみであれば私の上を行ける神は複数いるだろう。だがそれはあくまで一対一の話しだ。ここまで複数に強力な幻術をかけるとなると、あらかじめ用意していた可能性もある。だが今回のは……」


フレイヤが言葉を濁し、蒼の方を見た。

蒼を見るという事は、おそらく敵のおおよその予想はついているんだろう。


「誰なんだよ敵は。予想くらいついてるんだろ」


「……細かい正体まではわからない……だが、これは十中八九、神殺しの英雄の力を持ったやつが犯人だろう」


神殺しの英雄?

神を殺したら英雄になるのか?

なんだか話が複雑でわからない。

詳しい話を聞こうとしたとき、教室の扉が開いた。

この夜の学校に俺たち以外の人がいること自体が驚きだ。

敵かと思ったが、それは見覚えのある人物だった。


「ロキ……が……………」


入ってきたのはロキの眷属、フェンリル。

だがその見た目はすでに満身創痍で、服はボロボロ、体にも傷が生々しくついていた。

フェンリルは一言発すると、そのまま崩れ落ちて倒れてしまった……。






◇◇◇






倒れたフェンリルを保健室まで運び、フレイヤが魔法の力で治療を施す。

その後、魔術研究会を調べるために蒼、フレイヤ、ありすの三人は部室に向かった。

俺と君丈はフェンリルを見るためにも保健室に残っている。


「なあ、さっき言ってた神殺しの英雄ってなんなんだ?」


「んー……そうだな……説明が難しんだが……。簡単に言うと神と同等の力をもった人間だ。ここ最近は話しすら聞かなかったはずだが……」


「それは眷属とは違うのか?」


俺には未だに神と眷属の事もわかっていない。

神の方が強いのはありすを見ててもわかるが、そのありすだって一般人の俺からしたら遥かに強いのだ。

ロキの眷属など、見た目からして変わって明らかに人外だ。


「明確に違う。眷属は神の力を借りているだけのただの人間だ。基本的に神よりも弱いしな。対して神殺しの英雄は、人間であっても神と同じかそれ以上の力を持つ」


俺からしたらあまり違いが判らないが、明確に違うらしい。

君丈が断言するほどだ。

一緒にするのもおこがましいほどの差があるのだろう。


「人がそんな力もてる者なのか?」


「まあこの現代ならそうそうないだろうけどな。昔の戦乱の時代にはそういう事もあったんだよ。人が特別な力を持って神にも対抗できるから英雄と呼ばれたわけだ。だが、その中には本当に神を殺したものもいる。そういう奴の力は神を殺すのに特化してんだよ」


つまり神の天敵という事だ。

それなら五人全員を幻術にかける事も可能なのかもしれない。


「でもそれって昔の話しなんだろ?今は生きてないんじゃないのか?」


「そもそも俺達神も転生してるからそういう意味では同じだ。何千年も前から転生を繰り返してる。寿命は人と一緒だし、転生と言っても自分がその神様だって前世の記憶みたいなのがあるだけで俺も昔から生きてる実感はない」


なんとなく神様って言うもんだからずっといる気がしていたが、そう考えると君丈も縷々も身近に感じて来る。

簡単に言えば神の力を宿した人。

そういうイメージなんだろうな。


「だが英雄ってのはまた特殊でな。俺達と同じように生きてる時から英雄の力を持っている者もいれば、神器を手にしてその力を得るパターンもある」


「神器を手にする?神器は神が絶対持ってるものなんじゃなかったのか?」


確かフレイヤがそんな事を言っていた。

世界を改変できるほどの力を持つとか……なんかそんな事を。


「そうだ。だから神とは違う。俺達の神器に近いものが現代にもあってな。俺達の神器は転生と同時に神器も消える。と言うよりもその神が生み出すと言った方が正確か。神殺しの英雄の神器は俺達と同じ物もあれば神器自体が神殺しの英雄の誕生を生むパターンもあるんだ。普通の人にはただの骨董品でも俺らには使えたり傷をつけたりするものもあるって事だ」


なんとなくわかった。

つまりは美術品の類だろう。

剣や銃、槍や盾など、昔から残っている物が今でも美術館などに飾ってある。

そういう物が神殺しの英雄の神器と呼ばれているんじゃないだろうか。


「じゃあ今回の敵は何かしらの英雄の力を持った人間って事か」


「まあ……そうだな……そこに関しては俺らも対して変わらないから何とも言えんが……。それにロキだって神殺しの英雄の部類だぞ」


「ロキが?」


ロキと言う名は北欧神話では有名な神の名だ。

それが英雄だと話が変わってくる気もするが。


「ロキは色んな意味で特殊な存在でな。正直神とも英雄とも取れない所がある。だが基本的に転生するし、地盤が神の力であるのは間違いないから神様として扱われてる。特殊な証拠と言うか、神が持ってるはずの神器がロキには無いんだよ」


「あー……そういえばフレイヤが三神の神器を合わせて作ったのがレーヴァテインだとか言ってたような……」


「そう言う事だ」


ロキの所有している神器は無い。

だからこそ三神の神器を奪って自分の神器を完成させようとしていた。

確かにその話を聞くとロキは英雄側にも見えてくる。


「まあとにかく、英雄ってのはそういう存在の事だ。俺も敵対組織の事はわからない。魔界に引っ込んだとか言う話も聞くが、正直何にも知らん」


この世界には魔界も存在するらしい。

天界もあるのだからそういう存在があってもおかしくはない。


俺が君丈の話しを聞き終わるのと同時に保健室の扉が開いた。

そこにはボロボロのヨルムンガンドを背負った蒼と、一緒に行ったありすとフレイヤ、そしてもう一人、ヘルの存在があった。


「こいつも寝かせてやってくれ。治療はしてるから大丈夫だとは思うが」


そう言って蒼はもう一つの寝台にヨルムンガンドを寝かせた。

フェンリルとヨルムンガンドはボロボロだったが、ヘルの方には傷一つない。

暗い表情をしている事から、この惨状の一部始終を知っているのだろう。


だが今回のロキ達への襲撃と俺達への幻術は関係があるのだろうか?


「早速で悪いがヘル……えっと椿ちゃんだったか?説明してもらえるか?」


「はい…………」


覇気のない声でヘルこと椿は話を始めた。


「今日の夕方くらいの事です……何者かが魔術研究会に踏み込んできて、そこにいたフェンリルとヨルムンガンドの二人と戦闘になりました。でも今の私達は力が制限されてて手も足も出なくて……私とロキは奥の部屋でその様子を見ていたんです……。私は助けに行こうとしたんですがロキに止められて……でも敵は私達の結界も破って中に侵入してロキを攫っていったんです……」


ロキが攫われた?

確かに力は制限されているとは言っていた。

だがそれほどまでに簡単にロキがやられるんだろうか。

力が制限されても大口をたたいていたくらいだ。

俺には今でもなんとかできるくらいの秘策くらいはあると思ってたが……。


「でもそれってロキに恨みがある奴とかの犯行じゃないの?私達の件と別件って事?」


ありすが即座に反応する。

確かに問題はそこだ。

俺達も謎の襲撃を受けている。

そこに関係性があるとは思えない。


「関係はあるだろうな。ロキの力は今は俺が制御してる。それにロキに何かあれば俺が動くはずだったんだ。俺達を幻術で封じたのは俺達に邪魔されない為だろう」


蒼の管理下にあるロキを確実に攫うためか。

だとしたら俺達はとばっちりって事か?


「そんなの完全なとばっちりって事じゃない」


ありすも俺と同じこと思ったようだ。

ロキやその眷属には可哀想な話しかもしれないが、俺達が関係ないなら手を引くのが利口的な手段だ。

あいつには俺達を襲った前科もある。

助けてやる義理は―――。


「いや、そうとも限らん。相手の考えがわからない以上、これ以上の脅威となる前に対策は必要だ」


「それってロキを助けるって事?」


「……そうだな。ありすの気持ちもわかるが、今ロキは俺の管理下でもあるんだ。俺もこのまま放っておくのは天界に申し訳がつかない。それに、個人的にもあいつが犠牲になるのは止めてやりたい……」


何かを秘めているような顔だ。

神の、いやオーディンとしての関係性によるものか。

それとも蒼個人的な関係性か。

詳しくは知らずとも、その表情から蒼が本気で言っているのは伝わる。


「じゃあ今から敵の元に向かうのか?」


「いや、それは無理だ。相手の場所もわからんし、おそらく相手は神殺しの英雄……何の対策も無しに勝てる相手じゃない」


魔術研究会の時はすぐに行動すると言っていた蒼の言葉とは思えなかった。

逆に言えばそれだけの相手なのかもしれない。

だが確かに、また対峙した瞬間に幻術をかけられでもしたら意味がない。


「じゃあどうすんだ」


ロキを助けたいかと言われたら答えはノーだ。

だが、自分達にも関係がある可能性があるなら、俺はその敵を排除しておきたい。

俺はこの日常を守る為なら全力で動くつもりだった。


「今日はいったん帰宅した方がいいだろう。大丈夫だと思うが、念のためそれぞれ護衛した上で家に帰す。その後も見張りや結界で安全は保障する」


「何言ってんだよ。それなら俺も一緒に見張りくらいはするぞ」


力はない。

だが力がなくても出来る事くらいはある。

いても意味がないかもしれない。

だが、俺に出来る事もあるかもしれないのだ。


「………いや、できれば今回の件は悠真は首を突っ込むな」


「……は?何で今更……」


俺は蒼に最初に認められたことが何よりも嬉しかった。

その蒼が今目の前で苦しそうに俺を見ている。

それだけ敵は強大なのかもしれない。

だがここで俺だけ身の安全を守るなら俺はロキ戦にだってついて行っていない。


「………悠真の気持ちもわかる……だが、本当に今回は俺達で守れるかわからないんだ……とにかく今日一日考えてみてくれ……悠真の本当に守りたいものは何なのかを」


本当に守りたいもの。

それは日常の事だろうか。

君丈や縷々達の事だろうか。

だがどちらも今回の事で失う可能性がある。

君丈や縷々が巻き込まれている以上、危険に身をさらすわけだ。

二人がいなくなった時点で俺の日常は崩壊する。

なら答えは変わらない。


だがその日に答えを出すなと言われ、俺は家に帰されることになった。

俺の本当に守りたいもの。

それがわかれば俺は手を引くと思っているのか?

それとも蒼なりに考えている事があるだろうか。

わからない。


俺はその日、頭を考えがぐるぐると回り、すぐに寝付くことができなかった。

俺はどうするべきなんだろうか。





二章

 二幕【異変】

    ―完―



どうも零楓うらんです。

日常を過ごすはずの悠真達に謎の襲撃。

その本当の目的はロキ!?

ロキがやってきて不安が残る中、今回はロキがやられてしまいました。

悠真の選択やいかに……。

次の話しもお楽しみに!

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