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白色パレット  作者: arien
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4「時計探し」後編

第4話です。短めです。

 その刹那–––––––––光を浴び、怯んだ気配の主に、一瞬の隙も与えることなく、三発の麻酔弾が打ち込まれた。

 そして、気配の主は間もなく昏倒し、動きを止めた。



「誰がこんなところまで探せと言った……」

 すっかり立ち尽くしていたソラとアルのところに、ウッドがやってきた。

「……隊長!どうしてここに?それに、さっきの光は……?」

 突然の教官(・・)登場に、アルは焦りを隠せていなかった。

「同時に二つの質問をするな……お前らの場所は、あまり離れていなければ、端末ですぐに分かる。それで、さっきの光は……」


「俺です」


 ウッドの隣に、一人の若い男が現れた。

「あ……あなたは……」

 二人は、その男を知らなかった。

「俺は『防衛隊』隊長の水原翔(みずはらしょう)といいます。ソラくん、アルくん。時計探し、お疲れ様でした」

 温厚かつ誠実な人柄を感じさせる態度は、初対面である二人にも警戒心を与えなかった。

「早く船に戻って休みましょう。いつまた原生生物に襲われるか分からない」

「はい……」

 このとき、二人はそう答えるだけで精一杯だった。水原が二人の名前を知っていることを、不思議に思う余裕もなかった。



 そして翌朝–––––––––。


 二人はウッドに呼び出され、「キャンバス」内にある隊長室に向かっていた。

「おお、二人とも、早かったな」

「おはようございます、隊長。あの、今回の呼び出しの要件は……」

 アルは心なしか不安そうに尋ねた。

「無論、昨日のことだ。アル、お前は夕方までに腕時計を発見できなかった。その罰として、腕立て四百回」

「か、勘弁してください!」

 アルは声を荒げた。

「いや、冗談だ」

 そう言うと、ウッドは僅かに俯いた。

「俺の腕時計は、見つかるはずがなかったんだ。実は俺が、ずっと持っていたんだ。俺としたことが、気が付かなかった。騙すつもりだったわけじゃない。だが、本当に申し訳なかった」

 アルとソラは、互いに顔を見合わせた。

「ちょっと待って下さい。じゃあ、これは……」

 アルはそう言って、左ポケットに入れていた物を取り出した。

「なんだそれは……?」

「なんだって、腕時計ですよ……って、あれ?」

 それは確かに腕時計の形をしていて、地球の物と同じく、色が抜け落ちたように白一色だった。革で出来たベルトには無数の亀裂が走り、針は曲がり、傷だらけのケースに収まった文字盤には穴が空き、歯車が剥き出しになっていた。

「ボロボロじゃねえか……だけど、動いてるな」

「俺は、こんなもん拾ったつもりじゃなかったんだけどな……」

 アルとウッドはしばらく、その時計を呆然と見つめていた。

「僕にもちょっと見せてよ」

 その声で二人は我に返り、ソラに時計を渡した。

「すごい、本当にボロボロだね」

「ああ、こんな時計、誰が持ってたんだろうな」

 ソラに意見を求めるように、アルは呟いた。だが、ソラは黙ったまま、時計を観察し始めた。


「アル、この時計……」

 しばらくして、ソラがようやく口を開いた。

「何かあるのか?」

「ほら、よく見て……」

 ソラはそう言って時計盤を指差し、

「これは、もしかしたら……隊長、この腕時計を『研究隊』の解析に回せませんか」

「うん?ああ、何があるのか知らんが、構わないぞ」

 話に入っていなかったウッドは、深く考えることなく了承した。

「ありがとうございます!早速、渡してきます」

 ソラはそう言って隊長室を出ようとしたが、ドアの前に立つ姿を見て、立ち止まった。

「あなたは……」

「昨日はどうも。お二人とも、元気になって良かった」

 そこにいたのは水原だった。

「ウッドさん。『防衛隊』『監視隊』『救護隊』『地理隊』の隊長に臨時召集がかかりました。場所は総司令室です」

「召集だと?……了解した」

 ウッドは真剣な顔付きになり、地理隊の隊服を羽織って、隊長室を出ていった。

「召集……なんだろうな、一体」

 アルが独り言のように呟いた。

「さあ。それよりアル、早く解析に持って行かなくちゃ」

「ああ、そうだな」

 そして間もなく、二人も隊長室を後にした。



 –––––––––翌朝。


『地理隊』の隊員が、船尾部タラップに集められていた。隊員をまとめ上げているのは、『地理隊』隊長のジャクソン・ウッドである。


「諸君、今日集まってもらったのは他でもない」

 メガホンを構えたウッドの大声で、その場は一瞬にして静まり返った。

「我らが地理隊の最大の任務、遠征について、重大な報せがあるためだ。諸君は既に知っている通り、我らは今後二週間以内に遠征に発つ予定だ。そして昨日、正式に日程が決定した」

 その言葉に、ざわめきが広がった。

「それは」

 そのざわめきが消えてから、少し間を空けて、

「三日後の朝。それが、我々がこの船を発つときだ。帰還は四週間後。ただし、生きて帰れる保証は無いと思って貰いたい。編成や装備については明日、改めてミーティングを行う」

 と続けると、ざわめきは今日一番に大きくなった。

「要件は以上だ。何か質問は」

 再びざわめきが消え、静寂が訪れた。ウッドはしばらくの間待ったが、手を挙げる者はいなかった。

「ないようならば、今日はこれで解散だ」

 そう言うと、ウッドはどこかへ歩いていった。


「意外と早い出発になりそうだな」

 アルが退屈そうな顔をして言った。

「そうだね。昨日の召集って、これのことだったのかな」

「そうかもな」

 そんな会話をしていると、


「こんにちは」


 二人は、後ろから声を掛けられた。そこにいたのは……

今回も読んでいただきありがとうございます。

自分で書いていて、終わりが見えなくなってきました。……いつか終わりますけどね。

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