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龍の乗り心地  作者: 睡眠学習の難しさ
プロローグなんだな、これが。
6/18

一(はじめ)依頼をこなす。

ヒロイン候補出るかも(ヒロインとは言っていない)

二人が闇ギルドに呼ばれた理由、それは学園に通えと言う命令だった。


「え?学園ですか?自分が?」


これは流石に、一も予想できなかった。てっきり、またSランクのクエストが来たのだと思っていたが、そうではないらしい。


「そうだ」


だが、冷静に考えれば、自然とギースの考えれが分かる。ギースの考えと言うか、この国の皇帝の考えだろうか。


「あれですか?学園行ったことによって、この国に情でも湧いて、この国を裏切らない様にするためですか?それとも、友達と言う名の人質のためですか?」


ギースは嫌な汗をかく。だが、ここで本当のことを言わないと殺される可能性もある。確かに彼は一に仕事を紹介した恩人だが、その程度では一なら迷わず殺せると言うことはこの一年でわかっている。


「はー、だから嫌だったんだ。この仕事。お前の言ってることは大体あっている」


「ほう、大体...ですか」


「大体あってるな。確かにお前がこの国を裏切らないようにするためだが、どうせお前の事だ、その気になれば、いつでも裏切るだろ?」


「まあ、自分はエイル以外どうでもいいので」


「そこでだ、これはエイルの提案でもある」


「え?」


自然と、視線はエイルに向けられる。


「うむ。お主、聞けばまともに学園生活を送っていないらしいな。だから、お主に行って欲しいのだ。我を理由に行かないのは許さないぞ」


一としては、別に学校に行きたいとは思っていない。人間とそこまで深く関わるつもりもないし、彼の性格上"無理"なのだ。


だが、エイルがそうしろと言うなら、彼は従う。


「じゃあ、エイルさん、一緒に行きますか」


「うむ、もとからそのつもりだ」


それを聞いて、ギースは肩の力を抜いた。


「ああ、それと...











仕事だぞ」





今回の仕事も、相も変わらず暗殺だ。闇ギルドの暗殺の対象になる人物の多くが、悪事を働いているが、権力を持っているために、手がでない人が多い。だが、それらの仕事が回ってくるのはごく1部なのだ。


では、その他の人はどんな仕事が回ってくるのか、その殆どが、護衛だったりする。


普通のギルドでも、護衛をする仕事はあるが、その人たちとは何から守るかが違う。


魔物から商人などを護衛するのが、冒険者で、表ギルドがやっているものだ。


人、もしくは暗殺者から商人やお偉いさんを護衛するのが、闇ギルドだ。


どちらからも護ればいいじゃないかと思うかもしれないが、適材適所というかものだ。魔物に知性はないので、知性がある人間と戦う場合は、全然異なる結果をもたらすかもしれない。魔物には冒険者をぶつけ、人間には闇ギルドの連中、暗殺者をぶつける。


そう言った仕事が多い。


だから、同じ闇ギルドでも、選んだ仕事によって仲間だった人が、敵に回ることも数多くある。ちなみに、闇ギルド自体は複数存在する。そして、ギースが作った闇ギルド、グリモアは、かなり大きい方であるが、最大ではない。世界最大の闇ギルドは、アルカディアと言う名前だが、拠点がどこにあるかは定かではない。ただ、存在すると言うことしか分からないので、一種の都市伝説のようになっている。その為、正しいか分からない噂が飛び交う。構成員は全員古代兵器だとか。


そのギルドが存在するかすら不明なので、実質グリモアが世界最大と言えるだろう。


閑話休題


仕事の内容は、とある貴族の暗殺だ。ちなみに、一には拒否権がある。これも、彼だからの融通だろう。彼には強制依頼が存在しない。


「分かりました。では、資料をもらえます?」


「クロネコに用意してもらえ、じゃあ俺は忙しいから、帰れ」


「仕事しすぎると、禿げますよ」


「うるせぇ!お前も将来禿げるかもしれないだろ!お前も男...男だよな?」


ギースはまだ、一の素顔を見たことがない。常に狐の仮面をつけているからだ。最初は外すよう言ったが、今は慣れた。今のところ、彼の素顔を知るものはエイルを除いて、最初のアルトレアの町のギルドマスターやそこにいた連中、そしてステラとかだろう。特に、テレサは狐の仮面と、微笑みの仮面を用意した張本人なので、知ってても当然だろう。


「失礼な、自分は男ですよ」


そう言って、一は部屋から出ていく。


「一が男じゃないと、我が結婚出来ないだろうが!しっかり考えろ!」


エイルに怒られたギースだった。


「あ、ハジメ!ちょっと待ってくれ!」


ひょっこりとドアから顔を出す一。勿論、仮面のままだ。


「表のギルドでも、学園行くのは依頼になってるからな。あと、学園では正体バレてもいいが、自分から言うなよ」


「はい、はい。まあ、自分が言う訳ないですが」





闇ギルドから出て、エイルと一緒に一は自分の家に向かう。仕事の話は、毎回そこでするからだ。


一の家は、帝都にあるのだが、貴族に匹敵するぐらいの豪邸、と言う訳でもないが、やや大きい一軒家と想像してもらおう。


庭は、家と同じくらいあり、倉庫はない。全て【無限収納】に入れているからだ。


一はエイルとともに帰ってきた。すると、玄関まで2人いや、1人と1匹が迎えに来た。


(はじめ)さん、エイルさんお帰りなさーい!」


「ええ、ただいま帰りました」


「留守番ご苦労だ、さくら」


「いえいえ、とんでもないです!」


黒い髪のショートで、グレーの可愛らしいスカートに、黄色のTシャツ、頭の左側に小さな赤のリボンがされている少女が一を出迎える。


それと一緒に、ぽよんぽよん跳ねるコーヒーゼルーみたいなスライムも出迎える。


「一は私の命の恩人ですから!」


「利用価値があったから"買い取った"までですよ。それに、あなたが命の危機に晒されても、自分は助けないのでご注意を」


「何言ってるんですか!それだけで私は満足ですよ!あと、助ける必要もないです!そういう契約ですよ!」


この娘、話す事度にビックリマークがついて元気極まりない18歳だ。だが、彼女には一にとってかなり使いがいのある無の属性の魔法、スキルを持っている。それは【等価交換(トレード)】だ。



彼女が一と出会うまでについて話そう。





彼女は17歳の時に、この帝国に勇者として召喚された。召喚された人数は"わからない"。当然だ。王は素質のないものを育てるほど、金が有り余っている訳ではないので、召喚された勇者を全員別々の場所で、それぞれの素質、つまり魔力量や、保有スキルについて測った。そして、使えないと判断した者を奴隷に落とし、彼らが召喚されてなかった事にしたのだ。


その奴隷にされた人の中に、彼女、浅倉 桜がいた。彼女は保有魔力量が、常人よりは多い4万ぐらいだったが、他の勇者の平均が30万だとすれば、かなり少ないだろう。まあ、それでも常人の8人分の魔力を持っている。なので、これだけでは彼女が奴隷落ちする理由にはならない。


彼女が奴隷になった最大の理由は、適正の属性がなかった、いや無だったからだ。


無の属性の魔法は重宝されるが、彼らが見た魔法についての説明文が、彼らには理解されなかったのだ。


等価交換(トレード)


《魔力量を同じ価値のものと交換できる》



と言う説明文だった。ちなみに、異世界に限る。


そして、王、いや帝王はこの文を勘違いした。魔力を金に変える魔法だと思った。だから、"この世界"で一番価値の高い金属であるオリハルコンを作らせた。


そして、彼女にやらせた。やらなければ、殺されるかもしれない恐怖とともに、彼女は必死に何度もやったが、成功しなかった。


その後、金でやって見るも、それも失敗に終わった。魔力量が足りないと考えに至った時に、王は絶望した。他人に魔力を与える魔法など、知る由もないからだ。


そして、彼女は無能と判断され、奴隷に落ちた。現代日本人からして、奴隷の生活は、厳しいものだった。パンは硬すぎて食えたものじゃないし、水も濁っている。そして何よ酷いのが、衛生面だった。様々な薬品で消毒されてやっと飲める水になる日本の水とは違い、ここの水は地下水をそのまま引いてきている。当然、奴隷用の水で綺麗な水を使うわけもなく、何度も腹を下し、病に倒れた


オークションに出される仲間の目はどれも死んでいた。たまに優しい人に買われた人もいたが、それは極々少数だ。女性の奴隷なんて殆どが性奴隷用として買われた。


次は自分の番だと思うと寒気がして眠れない。乙女としてはせめて、かっこいい人に犯されたい。汚い豚のような男にやられるよりましだ。


彼女も心のどこかで、助けが来ると思っていた。自分と同じく召喚された勇者なら、奴隷を認めないだろうと。


そしてある日、助けは来た。


「みんな!助けに来たぞ!」


そんな声と共に、勇者ユウキと呼ばれる男性が奴隷商人と警備の人を倒せし、奴隷全員を開放した。これで自由の身だ。私は助かった。そう思った自分がどれほど甘かったか。


彼女は開放されたが、行く場所も帰る場所もない。そして助けた勇者ユウキは、奴隷を開放だけして、去っていった。


元奴隷だった人らが主人もいないのに、街を歩けば変な目で見られるのは当然だ。主人を殺した疑いがあるのだ。そしてそんな元奴隷を雇ってくれる人なんているわけもなく、開放されたはずの奴隷は、次々と死に、彼女が最後となってしまった。


そして、餓死しそうなほど腹が減った時に、助けてくれたのが、奴隷商人だった。


彼は単に顔のいい奴隷を手に入れ、金儲けをしたかったのだ。皮肉な事に、誰かを助けようとした勇者は結果、死人を大量に出し、金儲けをしようと私欲に動いた奴隷商人が、結果的に彼女を助けたのだ。



それから数週間後、その奴隷商人に1人の男が訪ねた。身長は158の彼女からしたら大きいが、この世界の男にしては中の下の身長だった。なぜ身長の話をするかと言うと、他に特徴があるとすれば仮面だけだった。


商人がやけに緊張していた。


無理もない、最近有名になったばかりのSランク冒険者の「鎌鼬」だからだ。奴隷にもちゃんと情報は入るのだ。望めば新聞もくれる。


どうやら、それなりに強い(魔力量が多い)人で、家政婦、メイドをやってくれる奴隷を探しているらしい。雇えばいいと思うが、それでは信用できないらしい。


商人は何人かの候補を連れてくる。そして、その中に彼女もいた。





(え?私を見てる?見てるのは...胸!?)


鎌鼬に自分の胸の当たりをじっくり見られている事に気づいた彼女は、腕でそっと自分の胸を抱きしめる。


そして、よく見れば、彼が見ているのは胸じゃない事がわかった。


(違う、もっと深くだ...この感じ、私のスキルを見ている。間違いない)


「お見事、正解です」


「へ?」


「自分はあなたのスキルについて見ていました」


「えーと...」


「すみません、少し外してもらいますか?彼女のスキルについて話すので」


「ああ、わかった。ドアの前で待ってる」


『念のため、念話で話しましょう!念話だけに!なんちゃって』


ビックリした。さっきまでの雰囲気がまるでない。だが、彼の表情は変わっていない。


『ああ、ごめんね?自分念話すると性格変わっちゃうんだよ!それと、君は念話のスキルないから、喋らないでね。頷いたりしてくれるだけでいいから』


頷く。


『よし、じゃあ取り敢えず、君って勇者だよね?元だけど』


一瞬驚くが、頷く。


『まあ、それはどうでもいいけど。君のスキル、【等価交換】についてだ。それは、魔力を同じ価値のものと交換するでいいんだよね?』


頷く。


あの王が言っていた内容と同じだ。


『なら大丈夫だ、使い方を知らなくて奴隷になったんだろうから、使い方は今度教えるよ』


頷く。


「じゃあ、最後に君が殺されそうになった時、基本自分はよほど余裕がある時でない限り、助けないからね。それでもいいかい?」


「はい、いいです」


むしろ助けられた結果が、死にかけたんだ。今更そんなもの要求しない。


「3食寝床つきならば」


「大丈夫だよ、ただし君には、家政婦のようなことをしてもらうね」



こうして、桜は一の奴隷(メイド)、いやメイド(奴隷)になったのだ。





ペットであるコーヒーゼリーのようなスライム、スラちゃんについても語ろう。と言うほどに、語る量は多くない。


彼、いや彼女はエイルの作った森で生まれたのだ。勿論、彼女も一の殺傷対処の一つだったのだが、彼女は一と互角だった。と言っても、一は魔力を全て封印して、魔力0の状態、つまり身体能力のみで彼女と戦っていたのだが、それでも彼女は引き分けた。そして、一が魔力を開放して倒そうとしたとき、彼女、ナイトメアスライムは一に懐いてしまった。一だけなら倒したのだが、エイルが可愛いと言って倒すのを拒んだのだ。


それをきっかけに、彼女をペットとして飼い始めた。飼い始めたのは、桜がメイドになったあとだ。一はたまにエイルと一緒に始まりの森に行き、数日で帰ってくるのだが、その時に一緒に連れて帰った。


ちょうど、地球産のゴミの捨て場がなかったので、雑食でなんでも食べて魔力に変換してしまうスライムに食べさせた。


このスライム、見た目は可愛いが、魔力量は邪神に匹敵どころか上回っている。





一が1階のソファーに座り、その向かいにスラちゃんを抱いたエイルが座っている。


桜は一の膝の上だ。


そんな光景、妻のエイルが許さないと思うかもしれないが、エイルは自分の夫がモテていることに誇らしく感じている。


一としても、桜がどこに座ろうが気にしない。


「さて、家についたことだし、クロネコ」


「はい、はーい!呼べれて参上!クロちゃんだよ!」


クロネコと名乗る黒い服装の彼女だが、実は

「雷帝」テレサである。得意な魔法が勿論のこと雷と、瞬間移動だ。特に瞬間移動は情報収集にはうってつけで、闇ギルドの上位にいる人たちのための情報収集係をやっている。


「むー、サクラちゃんそこ変わって!」


と言う感じでよく桜と喧嘩になる。勿論、本気で戦えば、テレサが勝つのだが。


「今日は私の番です!」


「なら仕方ない」


今回はテレサが折れた。


それから数十分、ターゲットの情報を聞いた。ターゲットは、貴族の当主とその妻だ。市民を適当に用意した罪状で捕まえ、実験用具として扱っているらしい。


「酷い事するよねー」


「どうでもいいです。なんの罪をだろうが、罪がなかったとしても、仕事ですから、関係ありません」


「相変わらずだね」


「クロネコさんの監視では、そいつのは寝るとき護衛をつけないんですね?」


「うん!まあ私が見た数日が、偶然いなかったってこともあるかもだけどね!」


「じゃあ、エイルさん。行ってきます。桜さん、どいて下さい」


一が立とうとすると、桜が立ち上がる。一は座られることはどうも思わないが、邪魔をされたら許さない。下手したら、殺すかもしれない。


だから、たとえもっと座りたかったとしても、殺されないために桜はどくしかない。


「一はマントの服装から、真っ黒の服装に着替え、仮面を深く被り、ロングコートじゃなくて、普通の長さのコートのフードを深くかぶる。暗殺者が暗殺をする時、顔を見られないように顔を隠す者がほとんどだ。


まあ、テレサと言う例外もいるが。





とある帝都の近くにある貴族の屋敷、門番や警備の者が数人行き交っている。


その2階のベットで、3人が寝ていた。ターゲットである両親と、その娘だった。


一は窓から音もなく入り、3人のベットの前に立ち、彼らが声を上げる暇もなく殺した。


「んー?なんの音...ヒィィ!?」


どうやら、両親が倒れた音で娘が起きたらしい。


「あなたが、お父さんとお母さんを殺したの?」


一は暫く黙っていると、ポツリと言った。


「お前はターゲットじゃない


そう言って、一は去ろうとする。


「絶対に、復讐してやる!これから強くなって!必ず、お父さんお母さんの仇を取ってやる!」


そんなおかしな生き甲斐でも、生き甲斐が無くなり、死ぬよりましかもしれない。お前は俺を生きて恨め。そして、強く生きろ!
















そんな言葉を一が言うわけもなく、娘はあっけなく殺された。


こうして一の任務は、いつものように終わった。


(にしても、あの娘まさか自殺志願者だったとは思いませんでした。死にたくないなら、クローゼットにでも隠れてればいいものを、復讐してやるなんて言われれば、殺すしかないじゃないですか)



この性格を少しでも、普通の人間に近づけるために、エイルは彼を学園に入学させたのかもしれない。



よく、学校で困っている人を見かけたら、助けなさいって言われますが、無駄な労力ですね。


以前、重い荷物を持てなくて、歩道橋の前で止まっていたおばあさんがいたんですが、助けようと「持ちますよ」って言って持ったら、「泥棒ー!」って言われたんですよね。周りの人に事情を言って、警備沙汰にはならなかったですが、それ以来人を助けると言う行為の意味が分からなくなりました。

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