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~ある日の日常~

~ある日の日常~ 「人からの思われ方」

作者: 彼方 舜

人と関わらないで生きていける世界はないと思う。

そんなある日常に起きたやりとり。

オレ自身は変えていけないけど、どこかで変革をもたらす言葉が今日もある。

 毎朝通勤でバスを使うオレは、二人がけ席に一人で占領する女を毎日見かけていた。

 その女は恥ずかしげもなく公共のバスの中で化粧をしている。


 正直オレはいつもうざいなって思ってた。


 別に見たいから見ているワケでもなんでもない。

 その女が気になるほど美人でもないし、かといって美人で同じ事をやられたら尚引く。

 男のオレから見て「恥ずかしい」と思われる行為だから気になるのだ。

 本人たちにすれば

 

 「勝手にあんたが見てんでしょ」


 「そういう男って、チョーうざい!」


 「お前の方が気持ち悪いんだよ」


 って感想をくれるようだが、逆も同じなんだよな。


 それに、二人がけの席を、自分の鞄を隣に置いて独り占めしているというところで本当にイラっとする。本当にこの女は自分の事しか考えない、自分が大好きな人間なのだな、と軽蔑しか抱かない。


 そこにある日一人のおばさんが乗ってきて、その女の鞄が鎮座する席にやってきた。


「席がないからあけてくれるかしら」


「はっ?」


「あら、お若いのに聞こえないのかしら。

 それにバスの中でお化粧なんてはしたなくてよ。

 誰も何も言わないからいいんじゃないのよ。

 ここはみんなが使うところで、あなただけのものじゃないでしょう」


「うざ…っ」


 ちょうど真後ろに座っていた俺は、女の呟きを聞き逃さなかった。


 うざいのはお前だよ、って思った。


 おばさんはちょっとため息をついて、女の鞄を持ち上げ、


「足が悪いから座らせてくださる」

 

 と、勝手に座り込んだ。

 女は呆然としながら、手に取られた鞄をひったくるように自分の方へ引き寄せた。


「今の若い方はみんな勘違いをしているけれど、いい女の条件はね、お化粧できれいにすることばかりじゃないのよ? 誰か知らない相手でも気遣えることなの。自分の事ばかり考えてばかりいてはいけないわ。お化粧は「化ける」って書くでしょ。化けるところを見せるのを当たり前にしてしまうと、ちゃんとした殿方はがっかりしてしまうわよ? あなたはまだ若くてかわいんだからね。それに、こんなバスの中でも出会いがあったらどうするの? あなたの姿をみたら幻滅するわよ?」


「………」


 おばさんの話している最中、女はずっと化粧の続きをしていた。

 

「ホントだよ…」


 オレは後ろから呟くように言ったのが聞こえたのか、一瞬耳が反応したように思われる。


「女はいつでも余裕をみせていなくちゃ。

 せこせこしていたら、殿方のハートは掴めなくてよ?」


 それらのおばさんの言葉に、女が何を考え、どう思ったかは知れない。

 その時に女は一切の返事をしなかった。オレから見たらそれも感じ悪いなと思ったけど。



 翌日、いつものように同じバスに乗り込むと、やっぱりあの女がいた。

 いつものように二人がけ席を占領して。

 おばさんの話しを聞いて、何も感じなかったんだなと、とため息を吐きながら横を通り過ぎて、一番後ろの座席に座る。

 さして女には興味はなかったが、ふとした瞬間に気づいたら今日は作業をしてないようだ。

 少しは女の心におばさんの言葉は響いたのだろうか。


 そんなことを考えながら、窓から覗く景色に目をやる。


 新緑が輝いて、いつもと少し違ったように見えるのは、オレだけだったのかな。


 人からどう思われようと自分を貫き通すのはある意味自信がないとできないことだ。

 だけどそれをはき違えれば、ただの迷惑なやつになる。

 人の目をさほど気にする必要はなかろうが、全く気にしないで自分の事だけを考えるのが多い現代人が行き着く先はどこなんだろうな…。

 少なくとも、オレはそんな風にはなりたくない。

 他人と関わらずにいられる世界はないからな。 


 

おばさんの話しは別にして、バスの時刻改正がある前まで、オレの現実で毎日化粧する女がいた。別に興味はないのだけど、やっぱ見ていると恥ずかしいと思うし、なんか朝から気分は悪くなる。

そんな日常をテーマにしてある日の日常シリーズを書いてみました。

女がどう思ってどう生きていくかは…受け取った女次第ってとこです。


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