奴隷馬車
お約束の『奴隷』です。
文中、人によっては気分を害されるかもしれません。
それでも宜しい方はどうぞ。
下手したらあるかなーと気楽に考えていたんだけど。
実際目にすると腸が煮え返るね!!
◇◆◇◆◇◆
俺達は、商品買い占め直前騒動を起こした王国の城下町にまだ滞在している。
鷲の月の始めに隣の国に移動するかと、昨夜話し合ったところだ。
途中に大森林が在るが、ハイスペッカーな従者二人が居るからまあ、大丈夫だろう。
騒動から幾日も経っていないが、外出したいので、某召喚の夜4に登場の、不良少女の衣装を手パンで自作し着替える。
で、目を隠す為に某ミニ四アメリカンレーサーチームリーダーのバイザーをこれまた手パンで自作し装備。
全身が黒と赤。
黒の比率が断然多いので、ラヴィッジが嬉しそうに笑い、アンゼリカが「赤い衣装を!!」と涙混じりに迫ってきたのはご愛嬌。
着るんだったら露出の少ないのが好きなの、俺。
赤を基調にするなら、某君と響きあうRPGの剣士な主人公ぐらい?
さて外出。
ハイスペッカー従者が傍に付いているから、着替えた意味が(苦笑)。
大通りはちゃんとした店舗と、露店、屋台が犇めいている。
細工のデザインの参考になるなーと露店を冷やかしつつ、色々見学。
ざわり、と空気が震えた。
慌てて元を辿ってみると、檻と荷車が一緒になった、所謂収監車がゆっくりと周りに見せつけるかのように大通りを走っていた。
檻の中にはヒトが入っている。
「奴隷馬車………」
ラヴィッジが眉間にくっきり皺を寄せ、アンゼリカは険しい表情で奴隷馬車を睨み付けている。
奴隷馬車、なんていう名称が付いている時点で色々と解ってしまった。
賛否両論だろうが、闇竜と火竜という全竜種中攻撃性ツートップを従僕化している俺が、言えた義理じゃあないし。
………ん?
「………お嬢様!?」
「お待ちを、お嬢様!!」
二人の制止を振り切って、俺は奴隷馬車に近付いた。
◇◆◇◆◇◆
ぅおわー………。
よくまぁこんだけ集めたもんだ。
一番多いのは、獣人だ。
エルフに………人魚や魚人はどうやって連れてきた?
一概に言えるのは、皆痩せ細り、目が虚ろで、奴隷馬車に集まる人間に「買ってくれ」と媚を売っている事だろうか。
っと確か………居た!! この男だ!! 檻の中でぐったりとしている。
さもありなん、耳の近くから生えている立派な角は片方が無残に折られ、もう一方は根元から切られ血を流している。
背中の対の翼は片方は肩甲骨の辺りからぼっきり折られ妙な方向を向き、もう一方は硫酸か何かで溶かしたみたいに穴が開いてボロボロだ。
浅黒い肌に焼き鏝でも押し付けたのだろう火傷が生々しく引き攣れている。
特徴は左の頬全体を覆う、トライバル型の痣だ。
こんなもん持つのは竜種以外に無い。
「お嬢様!!」
「丁度良い所に来たな、二人とも」
「一体どうなされたのですか?」
「アレが欲しい」
「は?」
「アレが欲しい」
俺が示した先に居たのは、檻の中の傷付いた同朋。
それを見た二人は驚愕、のち嘆息。
理解が早くて助かる。
◇◆◇◆◇◆
後から聞いたんだが、この時の俺は傍目には無邪気にお強請りする子供、だったそうだ。
ところがバイザー越しの目が全然笑っておらず、「お嬢様がキレたと悟った」らしい。
………その通りです、ゴメンナサイ。