現状
処女作です。
誤字・脱字は容赦なくご報告ください。
あと、「某○○」の元ネタが解った方は素晴らしいと思います。
「………数えんのもアホらしくなってきたけど、これで合計何人?」
「お嬢様がお生まれになってからですと、軽く千は越えるかと」
「………懲りんなー」
「彼等にとって、我等竜族は驚異なのですわ」
俺とメイド服のおねーさんがぶつくさ言い合っていると、執事服のイケメンなおにーさんがやって来た。
「お嬢様、お怪我はございませんか? アンゼリカが一緒ですから大事無いとは思いますが………」
「あら言うわね、ラヴィッジ。私、これでもメイド長兼、お嬢様付護衛よ?」
「む? 私は執事長兼、お嬢様付家庭教師だが?」
「ちょ!? なんでいっつもすぐ喧嘩腰になんの!? 俺泣くよ!?」
子供の泣き落としって、効果覿面ダネ。
現状、俺達に何が起きているかと言うと。
単なる敵襲だ。但し『人間から』、だという事に頭を抱える。
「目的は俺だよなぁ」
ガリガリ頭を掻いてぼやく俺は、元・現代日本人で異世界転生特典の前世の記憶を持ちつつ、中世ヨーロッパ風なこの異世界ファル・ジュナスに転生した。
唯、転生先が、偶々竜王族だと言うだけの事だ。
今現在、仔竜の俺に付いているのは火竜のアンゼリカと闇竜のラヴィッジ。
元々竜王族に仕えていた、と本人達から聞いた。
で俺はと言うと。
ガッツリ竜王族だと言う証を持っていた。
金髪金瞳金爪の人型。総ての竜種を統べる王である黄金竜の色と、身体に在る王族直系にしか顕れない痣。
言い逃れ出来やしねぇ。
俺達竜種は狙われる。存在全てが、何らかの素材になるからだ。
角・牙・爪・骨は武器に。
鱗・皮は防具に。
肉は食用に。
血・臓物は薬に。
中でも心臓は不老不死の妙薬の素材だそうだ。
言わせてもらおう。我々竜種が長寿なだけで、不老不死ではない。決してない。と、普段冷静なラヴィッジが珍しく熱弁をふるっていた。
強欲なオークより強欲よね不老不死なんて『七王』様達ぐらいじゃないのほんっと人間ってアホよねと、ほぼノンブレスで言い切ったアンゼリカは実にイイ笑顔だった。
流石、攻撃性ツートップの火竜と闇竜………耐性付いてなきゃ、あの殺気だけで軽く死ねると思う。
◇◆◇◆◇◆
俺が孵った時、周りにはこの二人しか居なかった。
けれど、俺は孵ったばかりでも、何がどうなっているのか理解・把握したし、自分の傍に親が居ないというのも納得した。
俺達以外の竜種は棲み処に引っ込んだか、擬態で放浪しているか、殺されたか。
篳竟、現実は世知辛い。
黄金竜である俺だが、外見は幼児であるが、その実、一歳だったりする。けれど中身は………うふふ。そこらのガキと変わんないと思うよ? 唯前世持ちなだけで。
黄金竜のマルシオード・カレイド。通称マルス。
竜王家カレイド一族の直系女子。
サラサラキラキラの金髪をうなじで纏めて紐で縛っている。
金髪は居ても金瞳は竜王家だけだと云うので、某コーヒー愛好検事のマスクを某国家錬金術師のように手パンで自作。他人には弱視だと誤魔化している。
火竜のアンゼリカ。
炎色の髪を頭の高い位置でポニーテールにし、紅玉の瞳は切れ長で妖艶。
しかもメイドである事に矜持があるようで、「メイド服は正装であり戦闘服なんです」と公言している。
某仮面の男メイド漫画の如く、メイド服の至る所に暗器を仕込んでいる。
闇竜のラヴィッジ。
紫闇色の髪をアシンメトリーに伸ばし、闇色の瞳を片方前髪で隠し、もう片方に片眼鏡を掛けている。某伊達衆の京都弁有能秘書に片眼鏡を掛けた姿を想像して頂きたい。
そしてUKゴシックの某悪魔執事やスイスの某戦う執事のようにハイスペック。
俺という存在がネックなのか。襲撃ばかりで嫌気が差す。
お蔭で基本の攻撃スタイルが出来たのは皮肉と言えよう。
俺にちょっかい出すと、ハイスペッカーな二人が直ぐ様暴れ出す。
敵に回したら後悔するぞ、を地で入っている。我が従者ながら恐ろしや。
死んだ襲撃者の服を漁る。
追い剥ぎみたい? こっちも命懸かってんだけどなにか?
ダガーにバゼラード、小金に薬品、保存食。
剥げる物は全て剥ぎ取るべし!
最初は無理だったけどね、こっちだって死にたかないし必死なんだよ。
バーサクモンスター倒して食べたりね。前世知識も相まって、サバイバルOKです。
◇◆◇◆◇◆
アンゼリカが食事の用意をしている間、ラヴィッジは俺の子守りだ。
と言っても、歴史だったり言語だったり戦闘だったり様々だ。
今日も終わっていく。
さて、ご飯を食べて、歯を磨いて。
おやすみなさい。