オレ、オレとの対面を
転生先でまさかの知人に会うと言うラッキーにみまわれたオレ
巨大な神獣2体とうさんくさい関西弁の男とオレは王都・ミリアガイアの関所に来ていた
ハクの話だとこの指輪がミリアガイアでの通行手形になるとか
ちなみに他の国に渡るときとかは手形申請しないとならないらしい
要するにこの指輪はオレら記憶持ち転生者の身分証明書
大事にしよ
オレは関所で指輪を見せた後はポケットに仕舞った
もともと身につけて生活する気はなかったしな
それより関所を通る時は大変だった
ハクは前のゲーム内でもあまり好かれてる方ではなかった
見た目も少し不気味だったし
死神だし、トップランカーになるほどの実力保持者だったからだ
オレはそれなり人気だった………と思う
容姿は髪の色を変えて編集過程で目の色が変わったぐらいで後はリアルとほとんど変わらないものを作ったから別として
フツーだったオレには話しかけやすかったんだろう
オレのチームには4人メンバーがいたけどその中でオレが一番リアルに近かった
リアルというか素だった
他の奴らは素なのかどうかの真意はわからないがロールプレイっぽかった
ロールプレイというのは簡単に言うとキャラを作ってゲームをプレイするスタイルの事だ
この世界ではその人気不人気加減まで忠実に再現されていた
ハクが関所にさしかかるとさりげなく(バレバレだったけど)兵士が警戒しだし
ハクが指輪を出して通る時も指輪を受け取った新兵の声は震えていた
ハク本人はあんまり気にしてないらしい
ハクに気を取られてた兵士たちはやっとオレに気づいた
まずはオレ本人に驚き、次にオレのボロボロな服装に驚き、最後にタイガに驚いてた
まぁしょうがないか
「あの、通りたいんだけど………」
ボーッとしてる新兵の前に指輪を突き出して声をかけた
新兵はハッとして
「ハ、ハイ只今!」
というなり指輪を持って駆けていき
紙を持って帰ってきた
「えっと、召喚師の方にはこれを書いていただく必要がありまして
ここに契約中の召喚獣、こちらに責任者様の……要するにシギン様のお名前を書いてください!」
オレは渡された紙を見る
どうやらどの召喚師がどの召喚獣を使役しているか把握するためのものらしい
契約中の召喚獣って
オレ何体いるんだ?
わからなくなってタイガに助けを求めてみる
「シギンは契約中の召喚獣が多いからな
そういう場合は何体かだけ書いておけばよい
我とドラゴの名前を書いておけ」
タイガの助言によりオレはめでたく書類を書き終え
関所を通過した
通過するときも兵士たちが
「禁眼の召喚師だ…」「ほら、あのヘイデンのクロガネの…」「鬼神と接点があるってのは本当だったんだな」
などなど言っていたが聞こえてないふり
ちなみに「禁眼」や「鬼神」って言うのはオレとハクの二つ名だ
関所を出るとハクが待っていた
「シギンはん長いわ~
めっちゃ待ったで~」
「ごめん、行こうぜ」
そうしてオレはハクにつれられてはミリアガイアの探索開始
ミリアガイアは街の中央の王城があり貴族や王族が暮らす王城街
そしてそれを囲むように
今いる店や露天、路地裏には奴隷市場や花街なんてのがあるにぎやかな南街
ギルドや王立ミリアガイア工房、王立学園がある東街
一般市民が暮らす西街
そしてスラムの北街
となっている
オレらが街を散策している間タイガとドラゴはトカゲと猫の姿でオレらについて来ていた
それでもオレらは目立った
特に東街のギルドを見に行った時は値踏みするような目で見られた
ギルドは今後仕事の時とかに世話になるかもしれないのに…
今後もこれだとめんどくさいな…
そんなこんなでミリアガイアを一周して南街のハクの店兼家についたときにはもう暗くなり始めていた
案外大きい
裏口から家に入る
「ハク~!」
家に入ったとたん奥から女が出てきてハクに飛びついた
ドン引きするオレ
「シギンはん驚いとるやん
ルリア、降りや」
ハクに言われてルリアと呼ばれた女はハクの首に回していた腕をほどき
オレをじーっと見つめた
ウェーブのかかった長い髪に胸元のはだけた服
色っぽいというか単純にエロい
目のやり場に困る
「あなたもテンよね…」
「はぁ?」
タイガの説明によるとオレらみたいな記憶持ちの奴らのことをテンと言うらしい
「や~ん!その子あなたの召喚獣なのね!
かわいい~」
ルリアさんは元の大きさに戻ったタイガとドラゴに飛びついて行った
ハクは相変わらず少し遠巻きにそれを見ていた
あれ?でもあの人オレらが記憶持ちだって知ってる?
「ハク、あの人ってさ…」
「ん?あぁオレの担当の神様やで
神様というか紳使言うらしいんやけどな
居候してん」
なるほど理解
ルリアさんは相変わらずタイガとドラゴに抱き着いて行っている
白虎とドラゴンに飛びついて行くってあの人勇者だな…
「ではシギンくん!」
とうとうタイガたちに逃げられたルリアさんがこっちに向き直って言う
立ち直りも早い…
「なんでオレの名前知ってるんすか?」
「私たちの間じゃ有名よ
リオの担当だもの」
「リオ?」
「あのいい加減な神とやらだ」
タイガが説明してくれる
どうやらあのオレ担当の自称神様(行方不明)のことらしい
「あぁ~ん!
タイガちゃんかわいいだけじゃなくてとっても賢いのねん!!」
今にもタイガに飛びつかん勢いのルリアさんを止めて説明の続きを促す
「そうね…
私もあなたに聞きたいことあるし
ゆっくりご飯でも食べながら話しましょうか
その前にお風呂入って着替えてらっしゃい
その格好で王都一周してきたなんて驚きだわ
さすがリオのテン」
あんまり関係ないと思う…
とりあえずハクに着替えを貸してもらい
オレは風呂に入った
「あー」
奇声をあげながら風呂に入る
日本人のオレとしては湯船につかれるのはありがたい
十分に湯船を堪能してからオレは風呂を出た
オレは回復魔法が使えないからキズはそのままだが
汚れが取れて気分がいい
風呂場の脱衣所には鏡があった
そしてオレはそこで初めて「シギン」の顔を見たそして驚きのあまりしばらく動けなかった
銀色の髪に紫の目には覚えがある
しかしここまで整った顔立ちにした覚えはないし
ここまで長身でもなかった
身長は175cmは超えてそうだ
いきなり10cmも延びといて気づかないってオレどんだけだよ…
それにハクもよくこれがオレだと気づけたな…
一人風呂場で驚愕していたがイケメンで損はないという結論に至り
オレは衝撃の自分との対面を終えた
そういえばこっちに着てから何も食ってない
オレの腹が盛大に鳴る
オレは今後について重要になるであろう話への期待と空腹を感じながら
明かりの灯るアマクロス邸の食堂へ向かった