オレ、フツーじゃなくなる
オレはフツーだった
ちょっと前までは
フツーの高校生は虎やドラゴンには乗らない
それにまずフツーに生活してたら虎はまだしもドラゴンなんかには出会わない
オレがフツーじゃなくなったのはあの事故からだ
オレは近くの公立高校に通う男子高校生で
家族がいて、友達がいて、本当にフツーだった
勉強も顔も標準
運動はできたけどそれでもフツーの範囲内だった
唯一規格外だったものといったらゲームだった
MMORPG、PCからオンラインでやるゲームのことだ
オレはそこのトップランカーだった
召喚師としていろんな魔獣、神獣を召喚してそれを使役して戦ったりそいつらを使役するための魔法を使ったり……
そんなことをして自分の所属する国でありギルドでありチームに貢献してきた
でも全部ゲーム内での話
そんな二次元以外ではフツー中のフツーのオレはその日
学校から帰って
いつもどうりPCを立ち上げプレイ人数100万人をほこるオンラインゲーム「Mevius」にログインした
前セーブした魔法石のとこからのスタートだ
まずは所属するギルドに向かう
ギルドはオレらと国の仲立ちをしてオレらに仕事を与えてくれる
全ての仕事にランクがついていて誰でも受諾できるのがD
その上がC、これはギルドの受付で相談して行っていいか決める、よっぽどの初心者って時以外はOKが出てる
次がBこれもギルドで相談、これはCを九割型失敗なくクリアできると受諾できる
Aはほとんど行けない
運営側がAランクと定めたやつ、またはチーム限定だ
個人でAに達してなくてもチームとしてAならば問題ないらしい
ちなみにいまだに553人と759チームしかない
その上にもSがあるけどこれはチーム内にA以上が3人以上いてやっぱり運営が認めた奴らだけ
今は105人と271チーム
まぁオレはSだった
チームももちろんS
話がそれたけどこんな感じでいつもどうりゲームしてた
唯一いつもと違ったのは一通のメールが来てたこと
そこにはこう書いてた
『おめでとうございます!
ゲーム運営者主催のイベントに当選しました!
につきましては●月●日●●時に~………』
という感じでそのイベントについての詳細が書いてあった
ゲームをプレイしている人間の中からランダムに当選者が決まるらしい
休みの日だし暇だしってことでオレは行くことにした
交通費もろもろのお金うんぬんは運営側がやってくれるらしいのでオレらは無料参加だしね
飛行機乗れるらしいし、無料で
ちなみにこのメールは何人かのギルドメンバーにも来てた
まぁそういうわけでオレは指定された日に指定された空港でガイドさんに従って飛行機に乗った
何人ぐらい招待されたかはわかんないけど結構大勢なんじゃないだろうか
とにかく飛行機は離陸した
特に知り合いがいるわけでもないしやることもないので
オレは寝た
どれぐらい寝てたかわからないが
オレはふと目が覚めた
この辺からオレはフツーじゃなくなり始めた
正確にはオレがフツーじゃなくなり始めたんじゃなくてオレのまわりがすでにフツーじゃなかった
周りは一面真っ白で上とか下とかわかんない感じ
足もとに地面の感覚もない
そんで正面にひときわ白く光る塊があった
そんでそれが喋った
「あ?起きた?おはよーございます」
(はい、おはよーございます)
「あれ?あんまり驚かんのね
つまんな
まぁいいやあたし神様でーす☆
あなたシギンくんでまちがいない?」
シギンって言うのはオレのMevius内での名前だ
(まぁ、間違いではないかな?
つか神様?ここどこ?)
「そうそう!!そういう反応ないとつまんないよね
まぁとにかくあなたは今から言うところの異世界に行かなくてはなりません」
頭がこんがらがる
これはあれか、ゲームのしすぎってやつか
とうとうオレもこんな厨二病的な夢を見るようになったか
よし、起きなくては!!
「なにほっぺつまんでんの?
夢とか思ってんなら違うからね」
(……………)
「混乱してるようだから
説明続けるけど
あなたはこれから異世界に転生してもらいます………」
その自称神様のはなしだとオレはこれからその異世界に転生するらしい
要するにオレは死んだのだ
なんでもあの飛行機到着した先でテロが起きあのイベント参加者全員が死んだらしい
んな、アホな
「死んだのにあんまり悲しまないね」
(まぁ悲しいですけど
騒いでも生き返れる感じじゃないですし…)
「そう、話が早くては助かるわ
で転生してもらうんだけど転生するときってのは
転生先の世界とか容姿とか能力とか
とにかくいろいろ決めないといけないんだよね
ただ一気に大勢死んだからこっちも面倒くさいんだよね
いろいろ決めんの」
面倒くさいって……
おい、神様
「それで困ってたら
全員いい感じのバランスで
容姿も能力も決まってるじゃない!」
(あ、Meviusのアバターのことか)
「そうそう
だからそのアバターの能力のまんま転生してもらおうって事になったんだよね
で転生先の世界なんだけどそのMeviusっていうゲームとほぼ同じシステムの世界作っちゃったから」
(……え?)
「だからあなたたちのやってたゲームとほぼ同じ世界作っちゃったから」
やっぱ自称でも神様なだけのことはある
どうやら「地球」みたいな感じで何個か世界があるらしいけど最近はどこも定員いっぱいになりつつあるらしい
で近々新しい世界を作ろうかどうかって神様の話し合いでなってたらしいんだけど
そこでオレらが拍車をかけるように大量死したせいで新しい世界を予定より早く作ったらしい
ちなみにちゃんと世界がなりゆくように今回の大量死の犠牲者のほとんどは記憶を消されて生まれたとこからスタートらしい
はい、ご愁傷様
そんな中でもオレはラッキーな前世の記憶を持ったまま転生できる人間らしい
そのかわりその世界で果たさないといけない役割がでかいとか
もちろん今回の大量死で死んだ奴らだけだと世界の人数は少ないからもとから存在してる人間とか生き物とかも作ったらしい
神様スゲー
(でもMeviusの世界感の考えでいくと
オレみたいに「獣紳に愛されし者」的な称号?の関係で多数神様女神様が必要なはずなんだけど…)
さすがに神様は作るわけにはいかないよね
「神様の中にも無職やニートみたいな暇なやつらはいるのよ…」
……それはあんまり聞きたくなかった
とまぁこういうわけでオレは前の「最強S級召喚師 金眼のシギン」として異世界Meviusに転生することになった
(あぁ、あなたは17歳の状態からのスタートになるけど
やっぱりあなたにもどこどこ出身とか過去の経歴がないといけないし
あなたの場合あなたが召喚してきた召喚獣も反則級の強さだからそれを入手した方法とか過去とか
一番つじつまの合う形にしたら相当過激な人生になっちゃったからそこんとこは理解して)
ってことで決まったオレの過去は………
『現在Mevius中に名を馳せるシギン・コガトラ(苗字が必要とのことなので作った)は人と獣が共存する国、「ヘイデン」の捨て子であった
そんな捨て子のシギンを見つけたヘイデンのこれまた偉大なS級召喚師クロガネ・コガトラが拾い我が子のように育てた
そのうちクロガネはシギンが「獣紳に愛されし者」と呼ばれるほどの召喚の才能を見出し
召喚についてさまざまな事を教えた
シギンはぐんぐんと成長し15歳の時点でSを獲得した
そしてそれと同時にシギンは神獣との契約に挑戦した
神獣との契約は神獣のいる地に赴き神獣が自身の主としてふさわしいかを見極めるためにだす試練に臨み
その結果によって決まる
その試練の内容は神獣ごとに異なる
それらの試練をこなしシギンは2体の神獣と契約を果たした
それが 白銀の虎 タイガ 漆黒の竜 ドラゴ(オレがゲーム内で使っていた神獣だ)
しかしシギンが神獣との契約の旅に出ている間に師であり親であったクロガネが亡くなってしまったのだ
傷心のシギンはヘイデンの国王たちが止めるのも聞かず旅にでた』
と言うことらしい
スゲーなオレ
(ってことはタイガとドラゴも……?)
「神獣って言う生き物として存在してるわ
召喚の方法や戦闘のハウツー、過去の経歴なんかは転生した時点で記憶に入ってるはずだから」
やっぱ神様スゲー!!
「装備は申し訳ないんだけど最低限の物しか与えられないから勘弁ね
武器も何の属性も能力もないただの鉄の剣のみだからさすがのあなたでもそのままモンスターとかと戦われると危ないから
初めの所持金は10万ジュエル
あとシギンくんみたいに前世の記憶を持って転生した人にはこの指輪渡してるから」
渡された指輪は金色で二つの輪っかが組んだ形に彫られているシンプルなものだった
「何の能力もついてない目印用の指輪だから」
(目印?)
「あぁ、世界のバランスが崩れないように
あなたみたいに前世の記憶を持って転生した人以外には前世の話はしないで欲しいんだよね
だから相手が前世の記憶持ちのひとか違うかがわかるようにね
でも身に着けるか身に着けないかは自由だから」
なるほど、よくできてる
同じような仲間に会いたければ身につければいいけどその世界の人間として完璧に溶け込むつもりなら身に着けなくていいってことだ
(ちなみに前世の記憶ありで転生すんのは何人ぐらい?)
「事故死したのが493人で前世の記憶を持って転生するのが25人」
まぁ飛行機事故だしそんなもんなんだろう
「じゃあそろそろ転生してもいい?」
(はい、いろいろお世話になりました)
「なに言ってんのあたしも同行すんのよ?」
(えっ?神様そんなことしていいんすか?)
「下っ端の下っ端でやることもないからあんたに付きっきりでも問題ないんだよ」
神様もいろいろあるんですね………
「じゃあ行こう!!
わかんないことはあっちでサポートするから」
半ば無理やりだけど
こうしてオレのフツーじゃない第二の人生が始まったのだった