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お手伝い

ざわざわと風で揺れる木々の音がする。そんな中、女の子は唖然とした表情でこちらを見ていた。


そこで、僕はハッと我に返る。自分が言ってしまった事に段々恥ずかしさを覚えていき、終いには顔が徐々に熱くなるのを感じる始末。


「えーと・・・大丈夫?顔が真っ赤だよ」


僕の様子を心配したのか、女の子は僕に話しかける。



「だ、だ、大丈夫です!元々こんな色してますから!」


アタフタと手を動かして、必死に答える僕。何もかもがあまりにも恥ずかしいので、今すぐにでもここから早く立ち去りたいという衝動に刈られた。


「・・・なら良いんだけど」



「はい、大丈夫です!気にしないで下さい!」



「ところでさっきの質問なんだけど・・・」


「あーー!!それは忘れて下さい!!ちょっとしたジョークです!!僕は綺麗な人を見ると本当に『精霊ですか?』と訊いちゃう癖があるんですよ!!」


アハハッと無理矢理陽気に言って、さっきの質問をまるで冗談だったかのように言うのだが、女の子は首を傾げた。



「何言ってるの?・・・確かに私は精霊だけど」



「アハハッ、やっぱり精霊でしたか・・・てっ、えぇ!?」



え、本物?マジですか。いや、そんな筈はない。科学が発展したこの世の中に精霊がいる訳が・・・。そうだ、これは夢だ!夢に違いない!でなきゃ、精霊なんて伝説上の生物なんて存在しないんだ!



僕は色々と心の中で呟くと、自分の右の頬をつねった。当然、


「イダダダッ!!」


と言う結果になる。僕は眼を潤ませた状態で右の頬を擦った。


「何してるの?」


精霊さんは少々顔をしかめて、僕に話しかけた。


「いいえ、ちょっとこれが本当に現実なのかな?と思いまして!」


「夢か現実かは勝手に判断してくれても良いよ。私的には、夢であってほしかったけど」



精霊さんはそう言うと、視線を僕の方から自分の近くにある色々な草花などに移した。


「そういえば、ここで何をしてるんですか?」


大分この空気にも慣れてきたのか、少しは口がちゃんと開くようにはなってきた。精霊さんは、チラッとこちらを見るとすぐに視線を草花に戻した。


「水をあげてるの。この子達はつい最近、地上に葉を広げたばかりなの。だから立派に成長するまで、面倒みなくちゃ」


植物に向けて、優しい微笑みを浮かべる精霊さん。その微笑みはまるで、聖母マリアを連想させるようなものだった。それを見た僕はちょっとドキッとする。


せっせと植物に向けて手を動かし始める精霊さん。僕の心の中で何かが渦巻いた。モヤモヤとした何かが・・・。他人であり人間である僕は一切関係ないのになぜか精霊さんが放っておけない気がした。それに何故だろう・・・。こんな様子をどっかで観たような覚えがある。デジャヴと言うやつなのか。いやいや、取りあえず善は急げだ。


「僕も手伝いますよ、精霊さん!」


僕は精霊さんの近くへと歩み寄った。精霊さんは近くへと来た僕を驚いたような表情で見ると、


「人間って、ひたすら命を奪う生き物じゃないの?」


と決めつけたように言う。さすがに人間である僕には心外だ。性格は人それぞれだし、誰にだって命を奪う瞬間はあるかもしれないが奪いっぱなしではない。


「いや、そんなぁ・・・。人間はただ奪うだけじゃないですよ。ちゃんと生命を育んだりします」


僕は苦笑いしながら屈んで、作業着のポケットから飲みかけのミネラルウォーターを取り出した。


帰る途中に自販機で買った水が役立つとは思いもしなかったな~。


キャップを外して、打ち水のように流れ出た水を丁寧に植物にかけていく。



そして、無言のまましばらく時間が経つと・・・。


「あ~・・・、もう空になってしまいました~」


僕は空になったペットボトルを覗きこむと、蓋を閉めて、作業着のポケット中に突っ込んだ。


「そちらではどうですか?」


僕は振り向いて、すぐそこで水やりをしている精霊さんに訊くのだが、そんな質問・・・する必要がなかった。


「!?」



「ん?どうかした?」


手から水が放出されているのだから。


「せ、精霊さんって・・・手から水が出せるんですか?」



「え、普通でしょ」


精霊さんは極々当たり前のようにそう言う。僕はただただ、白くて綺麗な指先から水が何処からともなく出てくるさまをただ戸惑いながら見た。


「そ、そうなんですか・・・」


その光景が余りにも衝撃的で言葉が上手く発せられない。そんな僕にはお構いなしに手から水がどんどん放出されていく。


僕は再び後ろを向いて、ポケットから何か水分になるような物がないかと色々漁る。


「そういえば、訊くの忘れてた。」


僕の背中越しから精霊さんは言った。


「何でしょう」


僕はまた振り向き、精霊さんの方を見た。


「どうして此処に来たの?」


精霊さんは手から水を放出しながら僕の方を向いて言った。


「歌が聴こえたんです。とっても綺麗な歌声だから誰が歌ってるのかな~って」


「そ、そう」とちょっと戸惑った解答をすると背中だけをこちらに向けて、顔が見えない形になった。


見間違えかもしれないけど、精霊さんが今動いたあの瞬間、顔が一瞬だけ見えたんだけど。




顔が少しだけ赤かったように見えた。














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