朝
昔の日本は木などが沢山生えており、とても豊かでした。しかし、時が流れていくに連れ、森はどんどん減っていったのです。
理由は簡単です。
人間が木を切り取っていくからです。
そんな作業が続き、
時は2070年。日本は爆発的に人口が増え、それに伴い、森林を伐採して建物を建築する物件が多くなった。そんな中、とある工場から怒鳴り声が聞こえる。
ダー、ダー、と機械の中から大量の商品が流れてくる音を聴きながら僕、彼岸花 凩(ひがんばな こがね)は社長の怒号をダイレクトに受けていた。
「いい?彼岸花ちゃん!私達工場で働く人は時間は命なの!この職場で働く人なら分かってるはずよ!?」
「本当にすみませんでした!!」
ペコリと謝る僕の前には、囚人が着るような作業服を身に纏った社長の姿があった。
丸坊主に剃った輝かしい頭が印象的で、鼻の下にはちょびヒゲがある。体格はプロレスラーのようにガッチリとした体の男だ。
そして、その社長の一番の特徴はオネェ口調なことだ。
僕もこの会社に入って数日だが未だに慣れない。
「はぁ・・・困ったものねぇ。何で遅れちゃったのかしら?」
「そ、それは・・・」
社長が腕を組んで、僕に訪ねてきた。言えない・・・。あんなファンタジックな出来事があったからなんて・・・とても言えない・・・。そもそもの理由は、1時間前に遡る。
雀特有のチュンチュンという鳴き声で僕は目覚めた。いつも通りの朝。僕は特に何ら変わりなくベッドから上半身を起き上がらせる。
そして、半分寝ぼけながらもしばらく睡眠によって動かしてなかった体を解すように、腕を上の方へと伸ばしたり、体を左右に捻らせたりと筋を伸ばす。これが僕の日常なのだ。
一通り終ると大分眠気が覚めていくのを感じると、ベッドから体を起こす。
そして、ベッドの横に配置されている木製の机の上の携帯へと手を伸ばし、時間を確認する。
・・・。これが僕の心情だった。時計が告げたあまりにも残酷な通告で言葉を発するどころか何にも思えなかった。僕は静かに携帯を元の場所に戻し、再び聖域の方へと体を埋めた。
しかし、所詮は現実から逃げたに違いがない。すぐにベッドから飛び起き、また携帯の時間を確認した。
AM6:00
この時間は既に僕の勤めている会社の社員のほとんどが来ている。確か点呼を取るのは、6:30位だ。それまでに僕の存在が工場までに確認されたら何とかセーフだ。
だが、仮にそれまでに来れなかったら僕は社長の怒りを買ってしまうことになるだろう。 そんなのは御免だ。何が何でも防がなくては・・・。と、僕の脳内で色々な言葉が駆け巡った。だが、その為には電車で通勤する必用がある。確か、この時間帯で通る電車は・・・AM6:15だ。で、現時刻は・・・AM6:05だ。
いかにもギリギリなのが分かる。しかし、僕は安心していた。なぜなら、家から駅まで歩いて5分程度で着くからだ。走ってなら2~3分位で着く。
僕は急いでパジャマを脱ぎ捨て、仕事の作業服を身に纏う。そして、時間短縮のため朝食は何も食べず、歯だけを磨いて家から出発した。
これでなら、間に合う!そう僕は安堵の表情を浮かべながら住宅地の曲がり角を曲がろうと走っていた。そして、住宅地の曲がり角を曲がると、その直線の道路の向こうに駅が見えた。
だが、ここで油断する僕ではなかった。とことん目的は達成されるまでは手を抜かない。これが僕のポリシーだ。
一気に僕の走る速度が上がった。
その時、もうすぐ駅と言うところで、目の前に公園らしき入り口が現れる。俺は公園を避けて駅に行くという選択肢が頭になく、そのまま突っ切ることにした。
「ウオォォォ!」
そう大きな声で言いながら、公園を走る。さすがに6時という時間は早すぎるのか、子供や大人は一人もいない。
もうすぐで公園の出口に着く。そう思った時だった。
「何!?」
突然、白い霧のようなものがどこからか出てきて、出口を自分の視界から消し去った。
俺は驚きのあまり足を止め、周りを見渡した。
しかし、周りは霧によって隠され、よく見えない状態だった。
「これは・・・不味いですねぇ・・・」
出口を見失った僕は苦笑いを浮かべて呟いた。