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オイシイ話 〜毒薬商ガルドは、悪徳大臣から『王子に食わせる極秘レシピ』の相談を受ける〜

掲載日:2026/06/02

 王都の裏通りに店を構える商人ガルドは、表向きは香辛料商だ。


 だが裏では毒物にも詳しかった。


 どの毒が即効性で、どれが自然死に見えるか。どの薬草を混ぜれば検査をごまかせるか。


 そんな知識を求める客は意外と多い。


 もっとも、表沙汰にはならないが。


 その日、店に意外な客が現れた。


 王国財務大臣バルモアだった。


 汚職の噂が絶えない男である。


 噂によれば純金の像を造らせたこともあるらしい。


 しかも隣には幼い王子と護衛まで連れていた。


「城下の見回りだ」


 そう言って店内を眺めていた大臣は、ふいにガルドの耳元へ顔を寄せた。


「話がある」

「どのようなお話で?」


 大臣は周囲を見回す。


 王子に聞かれたくないのか、声を潜めた。


「……オイシイ話だ」


 ガルドは目を細めた。


 なるほど。


 そういう話か。


 王子たちが店の品を見て回る間、大臣は別室へガルドを案内させた。


 大臣が慎重な手つきで机に木箱を置いた。


 質の良さそうな布で覆われ、中は確認できない。


「お前は専門家らしいな」

「……どこでそれを?」

「評判は聞いている」


 ガルドは慎重にうなずいた。


「多少は心得があります」


 大臣は満足そうに言った。


「実は王子に食わせたいものがあってな」


 ガルドの心臓が跳ねた。


 やはりか。


「本当に王子に?」


 念のためもう一度確認した。


「ああ、王子にな」


 大臣は即答した。


 ガルドは思わず息を呑んだ。


 王子暗殺。


 なんという大仕事だ。


「……レシピは?」

「私のオリジナルだ」

「証拠は残らないのですか?」

「もちろんだ。消えてなくなる。王にも誰にも気付かれん」


 完璧だ。


 ガルドは感心した。


 噂は本当だったらしい。


 この男は想像以上の悪党だ。


「完成したものを見てほしい」


 ついに本題が来た。


 大臣は箱の布を取り払った。

 


 ガルドは固まった。


 箱の中には、小さな旗が立った料理が並んでいた。


 ハンバーグ。


 エビフライ。


 卵料理。


 色鮮やかな野菜。


 笑顔の形に盛り付けられたご飯。


「……は?」

「どうだ?食材はどれも一級品だ。金の王子像はお気に召さなかったようだが、これなら王子も大喜びだろう」


 ガルドは引きつった笑みを浮かべた。

 

「実に……オイシイ話でございますな」


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