【第9話 魔王軍本隊の影と、赤ちゃん軍団の守り】
王都の空が、再び暗くなった。
今度は先遣隊なんかじゃない。
本格的な魔王軍の侵攻部隊だ。
城壁の上から見えるのは、
黒い霧に包まれた大群。
先頭に立つのは、巨大な影──
『アビスドラゴン』。
魔王直属の古竜で、推定年齢1万年以上。
闇の息吹で街を一掃しようとしている。
王宮騎士団が総出で防衛線を張るが、
アビスドラゴンの咆哮だけで騎士たちが膝をつく。
「グオオオオオオ……人間など、闇に還れ!!」
王女様が俺の袖を掴んだ。
「ユウキさん……お願い! あれを止めて!」
「わかった。みんな、準備はいいか?」
赤ちゃん軍団が一斉に俺の前に並んだ。
モミジ、ルビー、タコ丸、ピヨ、ソラ、クロ。
六匹の小さな体が、今日も戦う気満々だ。
俺は城壁の上に立ち、右手を翳した。
「今日の一発……若返りの一撃──マイナス一万年!!」
青白い光が空を切り裂き、
アビスドラゴンの巨体を直撃した。
闇の鱗が剥がれ落ち、
翼が縮み、
体が急速に小さくなり、
最終的に……
俺の腕に収まるサイズの、黒い子ドラゴンになった。
「くぅ……くぅん……?」
子ドラゴンが俺の腕の中でキョトンとして、
小さな瞳を潤ませた。
その瞬間、魔王軍の兵士たちがパニックに陥った。
「アビス様が……赤ちゃんに!?」
「撤退! 撤退だ!!」
闇の軍勢が一気に後退していく。
王都の空が、再び青く戻った。
子ドラゴンが俺の胸にすり寄ってきて、
「くぅん……くぅん♪」と甘えるように鳴いた。
俺はそっと頭を撫でた。
「名前は……『シャドウ』でいいか?」
「くぅん!」
シャドウが喜んで、俺の頰をペロッと舐めた。
王女様が涙目で駆け寄ってきた。
「ユウキさん……ありがとう! 街が救われた……!」
王様も城壁の上から深く頭を下げた。
「これで魔王軍の侵攻は一時的に止まった。
お前たちのおかげだ」
リリアが俺の隣で微笑む。
「七人目ですね……赤ちゃん軍団、どんどん強くなってます」
庭に戻ると、七匹の赤ちゃんたちが輪になってじゃれ合ってる。
モミジが枝でみんなを優しく包み、
ルビーが小さな火で暖を取らせ、
タコ丸が触手で遊ばせ、
ピヨが炎の輪で遊園地みたいに、
ソラが風で浮かせて、
クロが子狼らしくじゃれて、
新入りのシャドウがみんなに混ざって「くぅん♪」。
俺はみんなを見ながら呟いた。
「これで七人。
でも、まだ魔王軍にはもっと古いモンスターがいるはずだ。
救えるやつを、全部救おう」
シャドウが「くぅん!」と力強く鳴いた。
小さな体で、闇の翼を少しだけ広げて。
その時、遠くの空に、
さらに巨大な影が浮かんだ。
──魔王の本拠地から、何かが動き出した気配。
俺は笑った。
「次は本物だな。
みんな、準備はいいか?」
赤ちゃん軍団が一斉に鳴いた。
「きゅう!」「きゅる!」「ぷにゅ!」「ぴよ!」「くぅん!」「くぅん!」「くぅん♪」
七つの可愛い声が、王都に響き渡った。
第9話 終わり。
(次回、魔王の使いが王都に使者として訪れる──
赤ちゃん軍団 vs 最終決戦の序曲!?)




