【第8話 魔王軍の先遣隊と赤ちゃん軍団の初実戦】
王都の屋敷で穏やかな朝を迎えたはずだった。
突然、空が暗くなった。
庭の上に黒い影が広がり、
不気味な咆哮が響き渡る。
「グオオオオ……人間ども、魔王の名の下に滅びよ!!」
魔王軍の先遣隊──
黒い翼を持つ中級デーモン三体と、
それを率いる大型の魔獣『シャドウウルフ』が、屋敷の庭に降り立った。
シャドウウルフは体長10メートルはあり、
年齢は少なくとも1500歳。
魔王軍の尖兵として、王都近郊を荒らしまわっていたらしい。
王宮騎士たちが慌てて駆けつけるが、
デーモンの闇の魔法で次々と吹き飛ばされる。
リリアが俺の袖を強く握った。
「ユウキさん……これはまずい! 王宮に援軍を!」
「待て。俺たちで何とかする」
赤ちゃん軍団が一斉に俺の前に並んだ。
モミジが小さな枝を広げて「きゅう……!」
ルビーが小さな炎をぷすぷす吐いて「きゅるる!」
タコ丸が触手を伸ばして「ぷにゅぷにゅ!」
ピヨがふわふわ浮かんで「ぴよぴよ!」
ソラが小さな翼をパタパタさせて「くぅん!」
みんな、戦う気満々だ。
俺は深呼吸して、右手を翳した。
「今日の一発……若返りの一撃──マイナス千五百歳!」
青白い光がシャドウウルフを直撃。
巨体がみるみる縮み、
黒い毛が柔らかくなり、
牙が小さくなり、
最終的に……子犬サイズの黒い子狼になった。
「くぅん……?」
子狼(元シャドウウルフ)がキョトンとして、
俺の足元にちょこんと座った。
三体のデーモンが慌てて叫ぶ。
「何だ!? 隊長が……赤ちゃんに!?」
「撤退だ! こんな化け物がいる!」
デーモンたちが逃げようとした瞬間、
赤ちゃん軍団が一斉に動き出した。
レベル4で解放された「潜在能力引き継ぎ」が発動。
モミジが枝を伸ばしてデーモンの足を絡め取り、
ルビーが小さな火の玉を連発(威力は弱いが連続で当たる)、
タコ丸が触手でデーモンをぐるぐる巻きに、
ピヨが小さな炎の渦を巻き起こし、
ソラが風を操ってデーモンを浮かせて転ばせる。
赤ちゃんなのに、連携が完璧。
デーモンたちはあっという間に転がされ、
騎士たちに捕縛された。
子狼が俺の足にすり寄ってきて、
尻尾を振る。
「くぅん♪ くぅん♪」
俺はしゃがんで頭を撫でた。
「名前は……『クロ』でいいか?」
「くぅん!」
クロが嬉しそうに飛びついてきた。
王宮騎士たちが呆然と見守る中、
王女様が庭に駆けつけてきて、
子狼を見て目を輝かせた。
「また増えた!! 今度は子狼さん!? 可愛すぎる……!!」
リリアが俺に微笑む。
「ユウキさん……赤ちゃん軍団、今日初めて本格的に戦いましたね」
「しかも勝った」
庭に六匹の赤ちゃんモンスターが集まって、
俺を中心に輪になってじゃれ合う。
モミジ、ルビー、タコ丸、ピヨ、ソラ、そして新入りクロ。
俺はみんなを見ながら呟いた。
「これで六人目。
魔王軍のモンスターも、救えるやつがいっぱいいるはずだ」
クロが「くぅん!」と力強く鳴いた。
その声に、遠くの空から新たな黒い影が近づいてくるのが見えた。
──まだ、終わらない。
第8話 終わり。
(次回、魔王軍本隊の影──
赤ちゃん軍団 vs 大規模侵攻の始まり!?)




