【第16話 永遠の別れと、新たな始まり】
禁断の森を抜け、世界のすべての古き者たちを救った後、俺たちは王都に戻った。
赤ちゃん軍団は今や十二匹を超え、馬車は狭くなり、屋敷の庭はいつも賑やかだった。
でも、旅の終わりが近づいていることを、みんな感じ始めていた。
ある朝、庭でみんなを集めた。
モミジ、ルビー、タコ丸、ピヨ、ソラ、クロ、シャドウ、ヒョウ、クロノ、サラ、カイ、テン、そして最後に救った禁断の森の古き樹霊『リーフ』──十三匹の仲間たちが、俺の周りに輪になって座った。
「みんな……ありがとう。
俺のスキルのおかげで、君たちを救えた。
でも、もうこれで、世界は平和になった。
長く生きすぎた苦しみから、みんな解放された」
クロノが少年の姿で、静かに言った。
「ユウキ……俺たちは、どうなる?
このままずっと、赤ちゃんのままでいいのか?」
みんなの目が、俺に注がれる。
小さな体で、でも強い意志を持って。
俺は深呼吸して、右手を翳した。
これが、最後の一撃だ。
「老化/若返りの一撃──最終解放!!」
青白い光が庭全体を包み、みんなの体を優しく照らす。
光が収まった瞬間、頭の中に最後のメッセージが響いた。
【スキルレベルアップ:レベル10(最終)】
【集大成機能解放:年齢自在制御】
【対象者たちは、自分で好きな年齢を任意に決められるようになります。
小さくも、大きくも、自由に。
この力は、永遠に君たちに宿る】
みんなの体が、少し震えた。
モミジが最初に反応した。
小さなトレントの体が、ゆっくりと成長し、
元の古のトレントに近い、優しい大人の樹人の姿になった。
でも、すぐにまた小さく戻って「きゅう♪」と笑った。
「これで……俺たちは、いつでも戻れるんだな」
クロノが、自分の手を握りしめて呟く。
彼の体も一瞬、元の魔王の姿に戻ったが、すぐに少年に戻した。
ルビーが小さなドラゴンから、ちょっとだけ大きく成長した姿で火を吐き、
タコ丸が触手を伸ばしてみんなを抱きしめ、
ピヨがひよこから不死鳥の雛くらいに、
ソラが子ドラゴンから翼を広げて飛べるサイズに、
クロが子狼から少し逞しい狼に、
シャドウが子ドラゴンから闇の翼を広げ、
ヒョウが子竜から氷の息を強く吹き、
サラが小さな精霊から砂の嵐を操れる姿に、
カイが小さな貝から海の波を呼べるサイズに、
テンが雛鳥から空を飛べる巨鳥の雛に、
リーフが小さな樹霊から森を守れる大樹に。
みんなが、自由に年齢を変え、笑い合う。
小さくも大きくも、好きな時に。
でも、その喜びの後、庭に静けさが訪れた。
クロノが、最初に口を開いた。
「ユウキ……俺たちは、帰るよ。
それぞれの元いた場所に。
長く離れていた故郷を、守るために」
俺の胸が、痛んだ。
「みんな……」
モミジが小さな枝を伸ばして俺の手を握り、
「きゅう……ありがとう。
でも、森が待ってる」
ルビーが肩に乗って頰をスリスリし、
「きゅる……また来るよ」
タコ丸が触手でハグして、
「ぷにゅ……湖に帰るけど、忘れない」
ピヨが頭上で回って、
「ぴよ……谷の炎を守る」
ソラが風を起こして、
「くぅん……空を飛ぶよ」
クロが尻尾を振って、
「くぅん……影の森へ」
シャドウが闇を少し広げて、
「くぅん……アビスの底に」
ヒョウが氷の息を優しく吹き、
「きゅう……氷原を冷やす」
サラが砂を舞わせて、
「すう……砂漠を潤す」
カイが泡を吐いて、
「ぶく……海を穏やかに」
テンが羽をパタパタさせて、
「ぴぃ……天空を舞う」
リーフが葉を揺らして、
「りー……禁断の森を守る」
そして、クロノが俺の隣に立ち、
「俺は……世界を回る。
でも、いつでも戻ってくるよ。
お前は、俺の最初の仲間だ」
涙が、止まらなかった。
みんなを抱きしめ、一人ひとりに別れを告げる。
小さくなった体が、温かかった。
夕陽が沈む中、みんなはそれぞれの方向へ去っていった。
小さくも大きくもなれる力で、故郷を守るために。
リリアが俺の肩を叩いた。
「ユウキさん……寂しいですね。
でも、みんな幸せそうです」
俺は空を見上げた。
テンが飛ぶ影が見え、ソラの風が感じられ、ピヨの炎が遠くに輝く。
「ああ。
これが、俺のスキルの本当の意味だったんだ。
救って、自由を与えて、別れる。
でも……永遠の絆は、残る」
王都の屋敷は静かになった。
でも、心の中は、十三の声で満ちている。
「きゅう!」「きゅる!」「ぷにゅ!」「ぴよ!」「くぅん!」「くぅん!」「くぅん!」「きゅう♪」「くぅん!」「すう♪」「ぶく♪」「ぴぃ♪」「りー♪」
それが、俺の宝物だ。
──完──




