【第14話 深海の古王と、海底の新仲間】
南方の砂漠を後にして、さらに数日後。
俺たちの馬車は東方の海岸に到着した。
ここから先は陸路では行けない。
深海の古王──推定年齢3万年を超える、海底を支配する伝説の存在。
その居場所は、海底の巨大な遺跡だという。
潜水用の魔法道具を王宮から借り、俺たちは海へ入った。
海面を潜り、徐々に深く潜行していく。
水圧が強まる中、クロノが闇のバリアでみんなを守り、
ソラが風の泡で呼吸を助け、
ヒョウが氷の膜で水温を調整し、
サラが砂の粒子を操って視界をクリアに保つ。
タコ丸は特に活き活きしていて、触手を伸ばしてみんなを引っ張っていく。
「ユウキ……あそこだ」
クロノが指差した先。
海底の巨大な遺跡が、青い光を放っている。
その中心に、貝殻のような甲羅に覆われた巨大な王が横たわっている。
【海底の古王 年齢:推定3万1千年】
古王の目がゆっくり開き、泡のような声が響いた。
「陸の者ども……何用だ。
この身は、もう海の底で朽ちるのを待つのみ。
去れ……」
声は深く、諦めが込められている。
長すぎる生に、すべてを諦めたようだ。
俺は水中で右手を翳した。
スキルレベル7の新機能──老化強化を使って、まずは少しだけ老化させて活力を与えようかと思ったが、
いや、まずは基本に忠実に。
「救いに来た。
若返りの一撃──マイナス三万一年!!」
青白い光が海底を照らし、水が振動する。
古王の甲羅が輝きを取り戻し、
体が急速に縮小し、
最終的に……
手のひらサイズの、小さな貝殻の生き物になった。
「ぶく……?」
小さな古王がキョトンとして、水中をふわふわ浮かぶ。
体は柔らかい貝殻で、触るとプニプニする。
みんなが一斉に泳ぎ寄る。
モミジが枝を伸ばして優しく支え、
ルビーが小さな炎を泡の中で灯して温め、
タコ丸が触手で抱き上げて遊ばせ、
ピヨが炎の輪を水中で回して光のショーを、
ソラが風の渦でみんなを浮遊させ、
クロが尻尾を振ってじゃれ、
シャドウが闇で影を作って休憩所を、
ヒョウが氷の息で冷たい遊び場を、
サラが砂の粒子を操って海底の砂で遊び場を作り、
クロノがそっと手を差し伸べて「仲間だ」と伝える。
小さな古王が、ゆっくりとみんなに溶け込んでいく。
「ぶく……ありがとう……」
俺は小さな古王を抱き上げて言った。
「名前は『カイ』でいいか?
海のカイ……似合うだろ」
「ぶく♪」
カイが嬉しそうに泡を吐いた。
その瞬間、頭の中にメッセージ。
【スキルレベルアップ:レベル8】
【新機能解放:範囲操作(一日一回に限り、周囲の複数モンスターを同時若返り可能、最大3体)】
これで、群れで苦しむモンスターたちも一気に救える。
リリアが水中マスク越しに笑った。
「これで十一人目……赤ちゃん軍団、ついに二桁超えましたね」
俺はみんなを見回した。
モミジ、ルビー、タコ丸、ピヨ、ソラ、クロ、シャドウ、ヒョウ、クロノ、サラ、そして新入りカイ。
十一匹の小さな仲間たちが、海底で輪になってじゃれ合ってる。
クロノが静かに言った。
「次は西方の山脈か。
天空の巨鳥……あいつは飛ぶのが得意だから、面白そうだな」
俺は頷いた。
「そうだな。
世界はまだ広い。
救えるやつが、きっとたくさんいる」
海底の遺跡が優しく光る中、
俺たちは浮上した。
カイが俺の肩に乗って、泡を操ってみんなを楽しく浮上させてくれる。
タコ丸と相まって、海中移動が遊びみたいだ。
旅は続く。
赤ちゃん軍団の冒険は、ますます広がっていく。
だが、海面の上に、
新たな影がちらりと見えた気がした。
──それは、残された古き者たちの気配か、それとも……。
俺はみんなに微笑んだ。
「よし、次は山だ。
みんな、準備はいいか?」
十一匹が一斉に鳴いた。
「きゅう!」「きゅる!」「ぷにゅ!」「ぴよ!」「くぅん!」「くぅん!」「くぅん!」「きゅう♪」「くぅん!」「すう♪」「ぶく♪」
十一つの声が、海底に温かな響きを広げた。
第14話 終わり。
(次回、天空の巨鳥との対面──
赤ちゃん軍団、空高く飛ぶ!?)




