【第11話 永遠の森と魔王の真実】
三日後、永遠の森の奥深く。
霧に包まれた古い遺跡の広場に、俺は一人で立っていた。
いや、一人じゃない。
赤ちゃん軍団をマントの中に隠して、七匹全員を連れてきた。
森の木々がざわめき、
黒い霧が渦を巻いて集まる。
現れたのは、漆黒の鎧をまとった長身の男──魔王。
角が生え、瞳は赤く輝き、
背後には無数の影が揺れている。
年齢は……推定数万年。
世界最古の存在の一つだ。
魔王が低く笑った。
「よく来た、若返りの使い手よ。
お前の力を見せてもらおうか」
俺は深呼吸して、右手を翳した。
「俺は戦いに来たんじゃない。
ただ、話がしたかった」
魔王の瞳が細くなる。
「話? 慈悲を振りまくだけの小僧が、何を語る」
「あなたも、長く生きすぎて苦しんでるんじゃないですか?」
魔王の表情が、一瞬だけ凍りついた。
「……何を」
「俺のスキルは、モンスター限定だけど……
あなたはモンスターの王だ。
だから、効くはずだ」
俺は静かに宣言した。
「若返りの一撃──マイナス三万年!!」
青白い光が魔王を包んだ。
魔王の巨体が震え、
鎧が剥がれ落ち、
角が短くなり、
体が急速に縮み、
最終的に……
少年くらいのサイズの、黒髪の少年になった。
「…………っ!?」
少年(元魔王)が膝をつき、
自分の手を見つめて呆然とする。
「これは……何だ……俺の体が……軽い……」
赤ちゃん軍団がマントから飛び出し、
魔王の周りに集まった。
モミジが枝を優しく伸ばして、
ルビーが小さな炎で暖を、
タコ丸が触手で支え、
ピヨが炎の輪で包み、
ソラが風で浮かせ、
クロが尻尾を振って寄り添い、
シャドウが闇の鱗で守るように。
少年魔王が、初めて涙を浮かべた。
「……俺は、数万年……
ただ生き続けることしかできなかった。
仲間も、敵も、すべて失って……
だから、魔王になった。
でも……お前は……」
俺はしゃがんで、少年魔王の頭を撫でた。
「もう、苦しまなくていいよ。
ここから、新しい人生を始めよう」
少年魔王が、震える声で呟いた。
「……名前は……まだ、ない」
「じゃあ、『クロノ』でどうだ?
時間を操るみたいに、俺たちと一緒に」
「クロノ……」
クロノが、ゆっくりと頷いた。
その瞬間、頭の中にメッセージ。
【スキルレベルアップ:レベル5】
【新機能解放:人間型モンスターへの適用可能(魔王限定)】
【これにより、世界の古き存在すべてを救える可能性が……】
森全体が、光に包まれた。
魔王軍の影たちが、次々と霧のように消えていく。
代わりに、解放されたような安堵の溜息が聞こえた。
クロノが立ち上がり、俺の手を取った。
「ありがとう……ユウキ。
俺は、もう魔王じゃない。
ただの……仲間だ」
赤ちゃん軍団が一斉に喜びの声を上げた。
「きゅう!」「きゅる!」「ぷにゅ!」「ぴよ!」「くぅん!」「くぅん!」「くぅん♪」
八つの声が、永遠の森に響き渡った。
俺はみんなを抱きしめた。
「これで八人目。
でも、まだ終わりじゃない。
世界中に、救えるやつがいる」
クロノが微笑んだ。
「そうだな。
一緒に、行こう」
森の奥から、新しい光が差し込んできた。
それは、希望の光だった。
第11話 終わり。
(次回、魔王軍崩壊後の世界──
赤ちゃん軍団、新たな旅の始まり!?)




