【第10話 魔王からの使者と、赤ちゃん軍団の決意】
王都の空が、再び静かになった翌朝。
王宮から緊急の使者が屋敷にやってきた。
黒いローブをまとった、顔を覆うフードの男。
魔王軍の使者だ。
騎士団が剣を抜いて囲む中、使者はゆっくりと手を挙げた。
「戦うつもりはない。
魔王陛下の言葉を伝えるだけだ」
王様と王女様が俺たちを呼んだ。
大広間に全員が集まる。
使者がゆっくりと口を開く。
「魔王陛下は言われた。
『老化と若返りの力を持つ者よ。
その力で、我が軍の古き戦士たちを赤ちゃんに戻すなら……
それは我が軍の弱体化に他ならない。
だが、同時に……慈悲の力でもある』」
使者が一枚の巻物を広げた。
「陛下は提案する。
一対一の会談を。
王都ではなく、中立の『永遠の森』で。
そこで、お前の力が本物かを見極めたい」
王様が厳しい顔で俺を見る。
「ユウキ、どうする?」
「行きます」
俺は即答した。
赤ちゃん軍団が俺の周りに集まってくる。
みんな、不安げに俺を見上げてる。
リリアが小声で囁く。
「ユウキさん……罠の可能性が……」
「わかってる。でも、魔王軍のモンスターたちも、救えるかもしれない」
使者が頷く。
「では、三日後。
一人で来い。
……いや、赤ちゃんたちを連れてきても構わん。
陛下は『可愛いものには興味がある』と仰せだ」
使者が去った後、屋敷は重い空気に包まれた。
王女様が俺の手を握る。
「ユウキさん……本当に大丈夫?」
「大丈夫です。
みんながいれば」
その夜、庭で赤ちゃん軍団を集めた。
モミジが枝を震わせて「きゅう……」
ルビーが小さな炎をぷすぷす「きゅる……」
タコ丸が触手を縮めて「ぷにゅ……」
ピヨが羽を伏せて「ぴよ……」
ソラが翼を畳んで「くぅん……」
クロが尻尾を下げて「くぅん……」
シャドウが闇の鱗を震わせて「くぅん……」
みんな、怖がってる。
俺は一人ひとり、頭を撫でながら話した。
「俺たちは、ただ戦うだけじゃない。
長く生きすぎて苦しんでるやつを、救うんだ。
魔王だって、もしかしたら……同じかもしれない」
シャドウが一番先に、俺の胸に飛び込んできた。
「くぅん!」
次にソラ、クロ、ピヨ、タコ丸、ルビー、モミジ。
七匹全員が俺にくっついて、温かさを分けてくれる。
リリアが涙を拭きながら笑った。
「ユウキさん……赤ちゃん軍団、みんな覚悟決まってるみたいですね」
俺はみんなを抱きしめた。
「よし、三日後だ。
永遠の森で、魔王と会う。
そこで、俺たちの答えを見せる」
赤ちゃんたちが一斉に鳴いた。
「きゅう!」「きゅる!」「ぷにゅ!」「ぴよ!」「くぅん!」「くぅん!」「くぅん♪」
七つの声が、夜の庭に響き渡った。
遠くの空に、魔王の本拠地から黒い光が一瞬輝いた気がした。
──決戦の序曲が、始まろうとしていた。
第10話 終わり。
(次回、永遠の森での魔王との対面──
赤ちゃん軍団 vs 魔王の真意!?)




