【第1話 ゴミスキルは慈悲だった】
俺は異世界に転生したその瞬間、
やっぱり俺の運は最悪だと悟った。
「次、ユウキ様! どうぞお手を!」
神殿中央の水晶玉。
周囲では「神聖剣」「時空魔導」「無限の加護」みたいなキラキラスキルが次々出て、拍手と歓声が沸き起こる。
俺の番。
水晶玉に触れる。
淡い青白い光が立ち昇り、文字が浮かぶ。
【固有スキル:老化/若返りの一撃】
【効果:モンスターに対してのみ発動
対象の年齢を±(意図した年数)だけ操作可能
【評価:F】
会場が静まり返って、
「ぷっ」
「老化……? 若返り……?」
「モンスター限定で一日一回って……何の意味がw」
「ジジイ製造機じゃんwww」
爆笑の嵐。
女神様まで困ったように微笑んでる。
「ユニークではありますね……頑張ってください」
頑張ってください(棒)
式典終了後、俺は他の勇者たちが王宮に連れて行かれる中、ひとり裏口から放り出された。
街の冒険者ギルドへ行くと、
銀髪の受付嬢が申し訳なさそうに近づいてきた。
「ユウキさん……ですよね? 登録をお願いします」
「……はい」
カードにスキル名を書く俺を見て、彼女(リリアと名乗った)は首を傾げる。
「老化/若返り……ですか? どんな効果なんですか?」
「モンスターの年齢を好きにいじくれるらしいです。一日一回だけ」
「……はあ」
完全に「ゴミスキル認定」された顔だった。
Fランクタグを受け取って、早速森へ。
まずは定番のスライム退治だ。
青いスライムがぷよぷよ寄ってくる。
(とりあえず試してみるか)
俺は右手を翳して、軽く念じた。
『+10歳』
青白い光がスライムを包む。
ぷちん。
スライムが一瞬で崩れて消滅した。
【スライム 年齢:3日 → 13日(スライム巨大化)】慌てて『マイナス10歳』で元に戻す。
次は別のスライムに今度は『-2日』。
光って、
スライムの体がほんの少し小さくなっただけ。
【スライム 年齢:5日 → 3日】
【状態:健康】
「……マジで意味ねえ」
俺は頭を抱えた。
その時。
奥からズンズンと地響き。
現れたのは、苔と蔦に覆われた巨大な樹人──古のトレント。
【古のトレント 年齢:3427歳】
俺のスキルが勝手に反応し、頭の中にメッセージ。
【老化or若返り】
……待てよ。
俺はニヤリと笑った。
(お前、生きすぎてるだろ)
でも殺すのはもったいない。
俺は深呼吸して、静かに宣言した。
「若返りの一撃──マイナス三千年!」
青白い光が森全体を包んだ。
トレントの巨体が、まるで映像を逆再生するように、
葉が鮮やかに緑を取り戻し、
幹が太り、
苔が消え、
一気に若木の姿へと変わっていく。
「ゴゴゴゴ……ゴ……?」
咆哮が途中で途切れ、代わりに小さな、幼い声が響いた。
「きゅう……?」
そこに立っていたのは、
人の背たけくらいの、めっちゃ可愛い小さなトレント。
葉っぱの髪を揺らして、キョトンとした顔で俺を見上げている。
【幼木のトレント 年齢:427歳(健康)】
俺、思わずしゃがみこんで手を差し伸べた。
「……おいで」
小さなトレントがトテトテ歩いてきて、
俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
ふわふわで、木のいい匂いがする。
俺は完全にやられた。
(これ……最強じゃね?)
その瞬間、俺の中で何かが確実に変わった。
ゴミスキルだと思ってたこの力が、
実は世界一優しいチートかもしれないって。
第1話 終わり。




