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第九十七話☆ 三日目朝/ボク達の結婚式





 入り口の扉は閉められたままだろう。 


 膝を付き祈りを捧げる彫像が見守る先、燭台の炎が揺れる真下。


 空席の目立つ教卓はこの結婚式のために集まった数十人が花嫁と花婿の登場を待っている。




 エリスは1冊の分厚い聖書を手に首を傾げ、「病める時も二人は苦楽を共に……」


 客席から見えないように暗幕で仕切られた教卓の脇。


 エリスはぶつぶついいながら、結婚式といえばあの口上を考えている。


 だけど、さすがのエリスもしばらく聖書とにらめっこしていたが、「エイッ! やめたっ!」

 

 と……、思わず呟いて聖書をポーンと放り投げてしまった。


 ーーオゥ、アウチ!ーー


 分厚い聖書がバサッと落下した瞬間、ボクの耳に変な声?

  気のせいかな?



 聖書をスッと拾いあげて、ホコリをパンパンと払う。


 口上を考えていたエリスに、「ボク達が乗っ取った結婚式なんだから」 とアドバイス。


 聖書をエリスに渡そうとしたけど、「そうだな、ボク達の結婚式だもんな」 と首を振る。


 アレ? なんか含みのあるセリフ?


 だけどそんな疑問もよそにエリスのキラキラと瞬く赤い瞳が笑みを浮かべボクをみつめる。


 エリスは受け取った聖書を片手に、「そうだな! だったらボク達らしくはじめようか!」


 もの凄い含みを感じるエリスのセリフ。


 そんな疑問もよそに、「雰囲気を暖めるために一曲だ!」、と胸を叩いて一冊のノート。

 

 


  譜面台におかれた一冊のノート、ペラペラとページを捲り曲目をチョイス。


 この教会の責任者であり結婚式を執り行う責任者の牧師は不在。


 否……。


 ボク達がこの結婚式を乗っ取ったことで牧師がぶちギレて全てを僕達に委ねたのだ。


 …………。


 そう考えるとエリスのセリフ、ボク達の結婚式という意味に納得。


 もちろんぶちギレた牧師もまだ腹の虫は収まってないとおもうけど、参列席に座っている。



 ベートーベン作曲、ピアノソナタ/悲愴

 

 既に鍵盤蓋を開けて楽譜までセットしてしまい、今さらだけど、礼……。



 鍵盤に指を這わせるとチカッチカと瞬くブルードロップ。


 ゆっくりとしたメロディーに、エリスの代名詞、甘いバニラの香りが溶け込む。


 鍵盤の上では指輪が青い尾を引いて無数の光りの筋を描き幻想的な光景。


 完全武装したエリスも肩の荷が降りたようでボクの直ぐ隣でピアノに背中を預けている。


 「さて……。 ここからが本番だ……」 とエリス。


踵を返し教卓への花道へと一歩。


「リュウ! 後は頼んだぞ」

 と……。


 そう、ここからが本番だ。

  ボク達の結婚式……。


  エリスの提案した運命による入場曲。

 

 甘いバニラの残り香が霧散すらかのように、そして、暗幕がバサッと捲り上がる。


「やれやれ全く! あの亡霊共を追い払ったのはお主じゃな!」

 

 と、この教会の主、牧師が白いヒゲを地面に擦らせ引きずりながら登場!


 「全く……、異世界からの転移者に続き、相変わらず騒動を巻き起こし今度は結婚式まで侵食するか?」


  と、眉を寄せてボクの顔を煙たそうに睨み、「のぅ転移者よ……」


 と、因縁をつけてくる。


 花嫁と花婿は外で待機、後はエリスのハンドサインを待つだけなのに、牧師による乱入。


「あの亡霊共を追い払ったのには感謝すれけど聖域への侵食だけは許せぬ!」

 

 「この行いはメアリーへの冒涜じゃ! 即刻やめてもらおうかのぅ!」


 エリスは結婚式への参列者を丸く収めたようだけど、牧師への怒りは収めきれていなかったようだ。


 

 

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