第八十七話 三日目朝/結婚式への参加
ほーちゃんの足元がキラキラと紅く瞬いている。
あの怪しいお店のルビーの蹄をベルチェが慣れた手つきで嵌めたのだ。
「ほう~、ベルチェは料理だけでなく馬の世話も完璧とは思ってなかったぞ!」
ほーちゃんの蹄をササッと整え綺麗にし、馬具を取り付ける姿にエリスは感心していた。
「ほ~、こんな山奥で肉料理か!」
香ばしい匂いの正体は軒先で串に刺した肉を並べて焼いて白煙をあげてるお店だ。
「いらっしゃい! いらっしゃい! バーダック名物の焼き鳥だよ~!」
と、どうやら焼き鳥らしい。
まだ時間が時間なのか、数人しか並んでいない軒先で、大きな声で叫ぶ。
「レグルス天国からの直送! レグルスの焼き鳥だよ~!」
丸々と肥えた料理人が白煙に目を真っ赤にして涙目で叫び、思わずボクと目が合う。
「うちの娘のマリオンの結婚式がこれから行われるんだ! サービスで焼き鳥を振る舞ってるんだ!」
一人一串の三本を涙目で目をシパシパさせ、笑顔で渡してくる料理人。
「豪華な結婚式じゃないからできれば沢山の人に祝って貰いたいんだ!」
と、どうやらこのおじさんの子供マリオンの結婚式らしい。
涙目でボクにドサッとボリュームのある大きな焼鳥を渡してくる。
思わず受けとると、日本の焼き鳥とは段違いの大きさとボリューム。
このおじさんが涙を浮かべていたのは煙りではなく喜びの感情が爆発してるからだろう。
「ギルドに奏者を依頼して最高の結婚式をオレからプレゼントしたかったんだけど……」
と涙をあふれさせながらグスッグスッと鼻水を啜りながら踵を返すおじさん。
「あー……、結婚式で新郎新婦に最高の演奏をプレゼントするのは親の努めなんだよな」
エリスがこの世界の伝統と風習を説明してくれる。
「まぁ、わたしみたいな獣人との結婚なんて基本的に認められてないからなんとも言えないけどな」
人間同士の結婚に劣等感を抱いているのかベルチェがフンッ! と鼻を鳴らしてケチをつける。
「そういえば、ギルドへ結婚式の奏者を依頼してくるのはよくあるけどな」
ギルドに依頼があっても希望に沿うことができないそうだ。
「ギルドに依頼されても派遣できないし、できたとしてもロクでもない演奏ばかりだ……」
ピアノを演奏できたとしてもそれが残念なものだとエリス。
「だったらボクが!」、思わず叫ぶ。
「サービスで振る舞っているだけなのにそれにすら仁義を通すのだな」、とエリス。
エリスはふふふと笑い、奴隷解放大作戦の時にボクが使った仁義という言葉を使う。
「報酬は発生しないけどいいのか?」
ボクは報酬なんて求めていない! だから「仁義!」、と一言だけで答える。
「じゃあ、おじさんに話を聞かないとな!」
焼き鳥を振る舞われその肉がレグルスのものだと聞き、あのレグルス? と思った。
だけど、ベルチェがあのレグルスとは違う食用のものだと説明してくれてひと安心。




