第七十七話 三日目朝/寝坊助プリンセスのおこしかた
「もう少しだけ寝させてくれぇ……。」
枕にしていたほーちゃんに預けていた背中からドサッと落ちても起きようとしない。
エリスはやっぱり朝に弱いらしい。
鍵盤の上を踊るように右手と左手。
ブルードロップがキラキラと瞬いているのを首を動かして必死に追い続けるレグルス。
レグルスがブルードロップに興味を示していた瞬間だ。
ーーカンッ! カンッ!ーー
ーー!!ーー
と二回、映画やドラマで定番のフライパンを叩く音!
「朝だぞ~! 起きろ~起きないと朝飯抜きだぞ~!」
と、定番のセリフ。
ブルードロップを、追っていたレグルスが首を引っ込めて辺りを、キョロキョロと警戒。
「かーさんおしっこ~……」
カミラがほーちゃんに咥えられて、吊るされたままま寝ぼけている。
「おしっこは外でやりな~! そんなところでしたらほーちゃんになげられるぞ~!」
この母娘の豪快な日常の一端が垣間見える。
「うみゃー! 漏れる! もれるぅ!」
と、おしっこが我慢できなくなったようで、目覚めたところでほーちゃんにおろされて、ほーちゃんの影で用をたす。
香ばしいパンとスープの香りが漂ってきたところでベルチェは叫ぶ!
「リュウッ! どこへ行く! そっちはダメだ!」 と、突然の大声。
ボクは一瞬首をコテンと倒してベルチェを見ると片目を閉じてウィンクで返される。
なるほど! エリスを起こすための一計だね?
「助けてぇ~! エリス~!エリス様ぁ! ルフィが~!」
夢の世界の領主を起こすことにボクも一計に便乗。
「リュウッ!」
エリスはバサッと毛布を跳ねあげてスタッ! と立ち上がるころには暗かった空が明るく淀みはじめていた。
さすがベルチェとしか言えない。
「おはよう、エリス。いい夢見れた?」
ピアノの演奏を中断してエリスに声をかける。
「リュウ!」
エリスは叫びながらボクを捕まえるように飛び込んできた!
座っているぼくに膝を付いて腰に手を回すとボクの感触を感じるようにお腹に頬擦りして見上げる。
寝起きのエリスは髪の毛がぐちゃぐちゃでまだ眠そうな表情だけど、そのままたちあがる。
それにあわせて椅子からたちあがるとエリスとギュッと抱き合う。
エリスの細い背中をポンポンと叩いたその瞬間!
昨晩のエリスとのやり取り、エリスが出したお酒を突っぱねた事がフラッシュバック。
「リュウ?」
ボクの目を覗きこむように見詰める赤い瞳。
内心、彼女を見詰め返してそれ以上見詰める事ができない。
もちろんエリスが見詰めるボクも拒むこともできない。
エリスの瞳が不安気に見詰めている。
ボクは、心の中で腹を切り土下座!
(ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさいっ! おしっこでもなんでも飲むから許してください!)
心の中で叫びながら、ボクも未成年がお酒を飲んでいけないことをキチンと説明しなければと思った!
「気にしてないから大丈夫だ!」
エリスは小さな声で言った。
「ありがとう! エリス! それでも、ちゃんとエリスの話し聞くから……」
エリスを強く抱きしめ耳元で、ささやく。
そして、「ありがとうエリス、愛してるよ」 と二言目を囁く。




