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第七十五話 三日目朝/明けきらない朝の準備


 …………。

「リュウ起きろ!」


 ズーンと落ちた意識の底から柔らかく聴こえる声に気付く。

 

 「う……、うぅん、もうちょっと……。 もうちょっとだけ」

 

 浮かび上がった意識は再び夢の中へ!

 両手で掴む柔らかい感触を感じながら甘いバニラの香りをむさぼる。


「……、たくっリュウ! それい上はエリスが気付いて怒るぞ!」


  エリス……、エリス……。


 エリスって、誰だっけ? 深く沈み込んだ意識が浮上、そして何かを両手でガッチリと掴んでいる感触。


「ハッ!」


 丸くてぬくもりのある柔らかい二つの何かを手のひらに感じながら気付く!


 「エリスッ!」


 ボクは思わず叫びながら覚醒する。


 「お母さんの胸でよく眠れたか?」


 ボサボサの銀髪で青い瞳のベルチェ。


 ボクの両手はベルチェの胸をガッチリと掴んでいた。


 慌てて飛び起きると、ベルチェは人差し指をたてて唇に当てて「シィィー!」


 と、ジェスチャー。

 

 「安心しな、エリスはまだ寝てるよ。 お母さん! お母さんって、リュウは甘えん坊なんだな」


 と慈愛を感じさせる瞳。


 どうやらボクはベルチェに母親を求めてぐっすりと眠っていたらしい。




 

 うっすらと輝く賢者の石が夜も明けきらない朝を示していた。

 

 「さてと朝御飯を作らないとね!」


 そういって立ち上がり、音も立てずにボクを抱え浮島の向こうへジャンプ。


 完全に消えてしまった焚き火に慣れた手つきで火を起こし、エリスと同じように胸元を軽く叩く。


 エプロンを身につけ、調理器具といくつかの食材を出して朝食の準備をはじめた。


 「そろそろ日が昇るからね、おまえにはやることが有るんだろ?」 と浮き島のピアノを見つめる。


 エリスと全く同じ、ベルチェもまた人の心を読んでくる。


 「あたしはエリスとは違うよ! 母親の勘だよ。 さぁさぁ、うちの寝坊助とおまえの彼女を起こしてやんな! 」



 ボクはベルチェに尻を叩かれるように浮島へと渡った。

 

 

 昨晩のピンクの渡り鳥は何かがでてきそうな木々の間だろうか?


  なるべく足音を立てないようにしながらピアノへとむかう。


 だけど、ピキッ!! と思わず小枝を踏んで冷や汗がドバっと溢れる。



ーー!!ッ……!ーー


 「リュウ! どこへ行く! そっちへは行くな!」 と叫びガバッと毛布を跳ね上げて勢いよく体を起こす。

 

 エリスの元に一歩! それ以上の音を立てないように近づき膝をつく。


 エリスの頭をなでて耳元に、「大丈夫だよ。 ボクはエリスのそばから離れないよ。 約束したよね?」


 と、囁き跳ねあげた毛布を掛けてあげる。



「そうか、なら良かった……。 絶体離さないからなリュウ!」

 

 目覚め掛けた現実に踵を返し、「ムニャムニャ」と再び夢の世界へ……。


 

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