第七十三話 二日目夜/転移前の世界の都市伝説
赤く染まる夕焼けで西日が眩しい。
あと三十分もすれば日も沈み夜の帳がおりる。
下校時間はとっくに過ぎている。
タイムリミットは見回りで戸締まりの確認をする教員が来るまでの間。
ホームルームが終わり部活動が始まり。
『おい、響ぃ! 課題曲は進んでるか?』
演奏部の顧問、飯田普太朗先生だ。
「いぇ……。 それがまだ決まってなくて……」
『そうか……。 響は部員じゃないからしかたないけど無理しなくてもいいぞ!』
「いえ……。 部員じゃないからこそやらせてほしいんです!」
『無理しないようにな
……。』
そう、ぼくは演奏部の部員でもない帰宅部だ。
それが、演奏部の大会やコンテストがある時だけ参加するゴースト部員。
理由は多々あるけど、いちばんの理由はピアノ教室に通うため。
『リュウ! 結果がでなければピアノ教室はやめてもらうぞ!』
そう! 父に認められなければならないという一番の理由。
一通り弾ける自信はあるんだけど周りと同じ、中途半端な課題曲ではインパクトがない。
だから誰も弾かない曲で勝負にでたい。
十八時十五分。
壁に掛けた時計の針がタイムリミットをカウントダウンしてる。
ベートーベンにショパン、ドビュッチーにバッハ……。
壁に掛けられた音楽家の有名人の肖像画。
何人もの有名人が並ぶ肖像画の中、“メアリー=スレイブ=モナー……”
と彼女の名前はあった。
シワシワの顔面に凛と大きく見開いた迫力のある瞳に魔女のような鷲鼻。
あるはずのない肖像画であり、見たことがない音楽家。
「誰だっけ?」
ーーカチリ!ー
時計の針が音をたてて時間を刻む。
柔らかく静かな音色から始まり徐々に大きく膨らむようなマシュマロのようなイメージ。
卒業式といえば定番の曲。
ショパン作曲、“エチュード~別れの唄”
音楽室に伝わる都市伝説のひとつ。
十八時十八分になるとどこからともなく聴こえる別れの曲。
しかし、その別れの曲は何の前触れもなく、聞いた事がある別の音色に変わる。
何かがおかしい…………。
ボクは違和感に気付く。
音楽室の都市伝説といえばこんな話じゃないはず。
それにコンテストはつい最近終わったばかりのハズ。
別れの唄の音色が耳障りな不快な不協和音に変わり、ピアノの前に座っていたハズのボクはいつの間にか誰かと交代。
誰かがデタラメにピアノを演奏していたのだ。
『リュウ…………!』
誰かがボクを呼ぶ。
聞き覚えのある馴染みのある声。
『リュウ…………』
胸を誰かに擦られている感触にスゥ……ッと目覚める。
赤い瞳に白くて長い瞳。
エリスだ。
「どうしたりゅう! うなされていたぞ……。」
ボクを心配するように真っ青な顔。
「変な夢でもみたのか?」
まさにその通りだ。
「うん。 変な夢すぎてあはは……。」
ブルっと顔をふり意識を切り替える。
「おしっこでも飲んでスッキリするか?」
ボクにとって一番目が覚める言葉。
さすがエリスとしかいえない。
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※活動報告に創作裏話もあります




