第六十七話☆ 二日目夜/鳴いたカラスを笑わせるには…………。
「リュウ……。ホントにスマン!」
元の世界でいうならば、ゲリラ豪雨に近い雨だった。
そんなゲリラ豪雨にベルチェとカミラは、「それにしても凄い雨だったなぁ!」
「バリバリドドーンッ! って、かみなり怖かったよ~グスッグスッ!」 と涙を溢していた。
「こっちでは割とあるけど、そっちではどうなんだ?」
と、こっちの世界では割とある現象だと言う。
「気温の変化や季節の変わり目で良くあるし、最近では突発的な大雨もよくあるぞ!」
「カミナリゴロゴロ、ドカーン! おへそとられてない?」
と、不安気な表情でお腹をだしてくるカミラにボクはそんなことない!
と思いながら、ここも故郷の風習や伝承が根付いていることに思わず軽く肩を落とす。
「今度からカミナリ様におへそみつからないようにしないとね!」
と、ホッコリ笑顔で返す。
当然の事ながらこの雨で露天風呂は全く使えなくなったのは言うまでもない。
雷もどこか遠くへ、そして雨も上がり汚れた身体を清めるため、やむなく炊事場へ。
火を焚いて湯を沸かし、ボクは一人でなんとかなったものの、エリスに関してはベルチェの介抱で綺麗にしてもらっていた。
この大惨事でぼくとエリスがなかなか馬車から降りてこない事に不安を感じたベルチェ。
そして、それについてきたカミラ……。
「全裸で抱き合い死んでるかと思った」 と、ベルチェ。
慌てて、ボクとエリスポーションを飲ませた一方、カミラは鼻を摘まんで「おかあさん! くさ~い!」 と顔をしかめたそうだ。
着替えが終わり、エリスが落ち込んだようにスマンと謝罪した事に直ぐに違和感を感じた。
いつものエリスなら『あっはっはっはっは!』 と楽しそうに笑い……。
お漏らししてしまったことに関しても、『唾もつけたしマーキングもしてやったぞ! リュウ!』
とか言って、『これでおまえは完全にわたしのものだ!』 と、胸を張るはず。
それが、ベルチェの介抱の後、「お漏らしししてしまった……、グスッグスッ……。」
と、泣き出してしまったようで着替えも終わり馬車小屋に隠れているところをベルチェに呼ばれた。
ボクの着替えはあの騒動で全滅してしまい、着る服がなくなってしまった。
全滅した服はカミラが洗ってくれると言うことで、着る物がなくなったボクは……。
「これしかないから仕方ないよね? 」
…………。
と、ベルチェに出されたのは奴隷解放大作戦の時に着た、黒いケープのワンピース。
この格好でエリスの前に立つのは嫌だと思った。
絶対にいやだ! 死んでも嫌だ…………。
そう思ったけどエリスがこんな状態になってしまったのならそうもいかない。
カツラもさせられ化粧もバッチリ決められ、スカートをヒラヒラさせてエリスの前で
「リュウにおしっこかけるつもりはなかったのに……、おしっこかけてしまった……」
と、お漏らしした事を気にしているわけではなく、おしっこをかけてしまったことに落ち込んでいたのだ。
「どうしよう……リュウに嫌われてしまう……、リュウに嫌われてしまう」 と念仏のように呟いていた。
「エリス? 大丈夫だよ、そんな事でボクは嫌いにならないから安心して」
エリスの目の前、エリスの目線に合わせるように腰を折る。
そして、「ボクはエリスにずっと側にいるよ。 って約束したよね? 覚えてる?」 と、続けエリスの頭をポンポンと撫でるように触る。
「ホントに?」
「ホントだよ! だからボクを信じて」
うつむいていたエリスが少しだけ顔をあげて一瞥するとエリスがビクっていうと反応したのがわかる。
「グスッ! グスッ!、グスン……。」
と目元をこすり涙を拭いながら紅い瞳をさらに赤く充血させながら顔をあげると、ゴニョゴニョゴニョと小さな声で何かを呟く。
なにを呟いたのかわからず、「ん?」、と聞き返す。
「……いの……、かく……。ロセ!」
エリスはもう一度呟くが聞こえなかった。 もう一度「んっ?」 と聞き返す。
するとエリスは声を震わせながら言った。
「我が生涯、一生の不覚……」
と、どこかで聞いたようなフレーズ……。 そしてエリスは続けて言った。
「クッ○ロセ!」
一瞬、エリスの事を本気で心配した自分がバカみたいに思った。
あの有名なフレーズ、“一生の不覚”に続き“クッコロ”まで……。
こんな名台詞まで根付いていたなんて! しかも、このネタはそんな昔ではない。
ということは、つい最近も誰かが転移してきたということか?
そんな益体もないことを一瞬だけ考えてしまった。
だけどその反面エリスの異世界ミーハーな部分が出たことにボクは安心する。
そして、エリスを後ろから包み込むように抱きしめ、エリスの体温と臭いを堪能。
「プレドちゃん! だーい好き」
泣いたカラスがもう笑った……。 と言わんばかりのエリスの復活。
直ぐ後ろを振り返ると、ベルチェとカミラがやんわりした笑顔で親指を立てていた。




