第六十四話 2日目/夜馬車小屋へ避難!
はじめは気のせいかと思った。
「キャッ!」
だけど、すぐとなりでメアリーの楽譜を覗いていたエリスが悲鳴をあげた。
ーー!!ーー
「冷たッ!」
一体なにが起きた!?
「雨漏りだ!」
ベルチェが叫ぶ! ポタッとすぐ目の前、見開いていたノートに大きな水滴が落ちる!
事の重大さを認識してボクは叫ぶ!「馬車に避難だ!」
ノートを閉じてエリスに渡してログハウスの出入口から飛び出す。
バシャバシャとバケツをひっくり返すような雨。
賢者の石の照明で前後を照らし、先頭で誘導。
「こっちだ! 急げ!」
「ヒイィィィ!」
「濡れちゃう! 濡れちゃう~」
泥水を蹴り上げ直ぐ脇のほーちゃんが待つ馬車小屋へ。
「確かここの自警団の人が『一番のお風呂とお宿』をとかいってなかったか?」
「お風呂に関しては最高だったケドまさかお宿が雨漏りするるなんて……。」
馬車小屋はすぐ近くのはずだったけと、その距離を移動するだけで着ているものはずぶ濡れとなる。
エリスが着ているものをその場で脱ぎだしながら答える。
「まぁ今までロクな連中しかこの町にこなかったからしかたないだろう!」
ベルチェがいつの間にか用意したタオルで頭をふきながら浴衣を脱ぎ捨てる。
「でも、馬車小屋は無事だからいいよね。 よかったねほーちゃん」
「ブルルルル~~」
馬車小屋にしては雨漏りもしない薄暗くて広い作りの小屋。
「それに関しては仕方なかろう、このバーダックは商人の町。人よりも物が優先されるからな」
つまり売り物とそれを運ぶ馬や荷車の方が優先だと、エリス。
「ここに来る連中は基本的に荷車で寝泊まりが当たり前なんだけどな!」
ここの常連のベルチェが説明する。
「でもお兄ちゃん、どうして馬車の影? こっちの方が広いよ?」
黄色い声を耳にしなら馬車を挟んでこちらの狭い側。
「ブルルルル」
ほーちゃんが長い首をこちらに向けて大きな目で見つめる。
「リュウ……。 転移者のほとんどがそうだけどこの世界では向こうよりもそんなに恥ずかしがることはないんだぞ!」
と、エリス。
「それとも転移者は何か違うものでも付いてるのか?」
馬車の影から堂々とした佇まいで何も隠そうとせずにエリス。
前からエリス、後ろからベルチェ。
「同じ風呂に入った仲じゃなかったか?」
挟みうちにされて、「お兄ちゃんの小さかった~」 ……、と!
カミラまでもが参戦して笑いながらとどめを刺してくる。
「ヒイィィィ! ほーちゃん助けて~」
ボクは1人びしょ濡れのまま馬車の客室に逃げる。
「ほぉーらぁリュゥ~うぅ~!逃げなくてもいいぞぉ~」
とエリスがギシギシと馬車の床板を揺らしなが賢者の石片手に迫る。
闇夜で光る猫の目のように赤い瞳をらんらんと輝かせ一歩ずつゆっくり。
「エリス! 落ち着け! 落ち着くんだエリス!」
ボクは尻餅をついてエリスから逃げるように馬車の奥へ。
「リュゥ~ゥゥゥ……。」




