第六十話/2日目 子供のような二人
「本当はバニラエッセンスとかあったらいいんだけど、牛乳で我慢かな?」
「バニラエッセンス? それはなんだ?」
「エリスがつけてる香水なんだけど、それは食用じゃないよね?」
「ン? これか? ほんの少し身体につけるだけでそういえばちょっと甘いぞ」
もしかしたら! エリスの香水をペロリ。
バニラ特有のドロリとした液体。
バニラの風味と甘さに、「これだっ!」 と、思わず叫ぶ。
一方で、これも過去の転移者が持ち込んだのだと納得しておく。
エリスの香水もバニラエッセンスで間違いない。
冷えたアイスの原液に数滴垂らす。
「凄く美味しそうなにおい!」
「ちょっと味見~♪」
とエリスは子供みたいな顔で指を原液に浸けてペロリと一舐め。
満面の笑みを浮かべる。
「あっエリス様ずるい! カミラも~!」
と、カミラも指を原液を浸けてペロリ……。
「いつものと違うケドおいしー!」
いつものと違う?
エリスとカミラの感じかたに自分の指で掬ってペロリと舐める。
ほどよい甘味とバニラの甘味で問題はないと思うけど……。
なにが違うんだろう? 日本のアイスとほとんど違わない味だとおもうけど……。
甘すぎたのかな?
エリスもカミラも頬を抑えて幸せそうな表情。
ちょっと気になるけど、これならいけると思うんだけど……。
「任せろリュウ! 小瓶ならいくらでもあるぞ!」
と、最後の冷凍工程を前にエリスがいくつかの小瓶。
「おしっこの小瓶はダ~メ!」
「せめて大きめのキレイな水袋がいいかな?」
「ならこれか!」
エリスが用意した空の水袋にゆっくりとアイスの元をうつし氷室へと寝かせる。
あとは一時間~二時間かな?
「リュウ!、あれだけ頑張ったんだ、そろそろ食べれるんだろ?」
確かに、あれだけ頑張って作ったんだから作ったものをすぐに食べれると思ったエリス。
だけど残念。
「まだまだだよ~、一時間か二時間くらいかなぁ?」
氷室にたぷんたぷんのアイスの原液を寝かせて氷室の外へ。
「アイス早く食べた~い!」
と、同じ年代の子供のように目をキラキラさせるエリスとカミラ。
だけど、こうしておあずけをさせられて、うなだれてしまう。
「一時間か二時間といったか? それはどのくらいだ?」
項垂れても負けじと食らいつくエリス。
そういえば、この世界の時間に関する認識はどうなってるんだろう?
「そうだなぁ……。」
時間に関しての説明は簡単に出来ないので考える。
月光第一が確か6分前後だったっけ?
「アノとき弾いた第一を十回かかな?」
エリスはあの時の演奏を思い出しながら、さらに項垂れると
「」アイス……、食べたい」と呟き肩を落とす。
エリスは氷室の入り口に座りこみアイスを待つつもりらしい。
もしかしたらエリスは食いしん坊なのか? そんな事を考えていると、「一回目……」
と、ゆっくりとしたリズムで首を上下させているカミラ。
そのままエリスの橫に腰をおろす。
まさかのカミラまでもが食いしん坊?
「アイスはどんな食べ物?」
「冷たくて口の中でスーって溶けて甘い牛乳みたいな味!」
「ほ~、それを旅商のやつらが?」
「うん。 おかあさんが冷やしてくれて、凄くおいしいよ!」
「甘い牛乳か~、なるほどなぁ……。」
エリスとカミラが氷室の前で仲良く楽しそうにアイス談義をしている。
どうやらこの世界でのアイスは液体でそれを冷やしてアイスにするかのようだ。
「やっぱり、カミラとベルチェは引き離すんじゃないんじゃないかな?」
完全に引き離すわけではないことはわかっている。
だけど、生活時間のほとんどを離れ離れにさせるのは、引き離すのとおんなじだ!
ボクはそんな事を考えながらもエリスが決めた処分といえど胸がチクチクと痛む。




