第五十九話☆ 二日目/夜祈るしかないアイス作り
周囲はここがレジャー施設のような場所をあらわすかのように明るい外灯が建ち並ぶ。
「どうだリュウ! 浴衣だぞゆかた~! ホレホレ~!」
バーダックから貸し出された少し大きめの厚手の浴衣。
見るからに植え付けられた文化なのは今さら説明する必要はない。
エリスは羽織った浴衣をヒラヒラとさせて見せびらかしている。
「さすが浴衣の国から来たリュウ! 似合っているじゃないか」
ベルチェだ。
胸元を晒すように強調して着ている姿はまさしく自信のあらわれ!
「でもやっぱりちょっと寒いよ~」
子供は風の子といわれているけど、現地産まれの現地育ちのお子さまでもやっぱり寒いようだ。
デザインや機能性に関しては異世界という雰囲気。
浴衣というよりもロングコートを羽織っているような感じ。
ボクも賢者の石の加護があるとはいえ、ちょっと寒気を感じている。
さらに、ボクたちのために燃え上がる松明の明かり。
「さてと、それじゃそろそろはじめようか?」
明かりのない夜空の下
屋根つきの炊事場。
もちろん燃え上がる炎の明るさと手元を十分に照らす頭上からの賢者の石。
メラメラと燃え上がり火の粉を飛ばしているカマドの近く
バチバチと薪の水分が弾ける。
「卵は四つでいいのか? 砂糖は?」
ワクワクしながら卵をコロンッと調理台に並べ、砂糖の入った袋をドスンとおくエリス。
「うん、上手く作れる自信はないけど多めにつくりたいから卵は五個で……」
鍋を二つ用意して黄身と白身にわける。
動画配信サイトだと大さじ二杯を黄身と白身にいれていたのを思い出す。
背の小さいカミラがちいさな手で手伝おうと手を伸ばし、「カミラも手伝う~!」 と……。
「リュウ、わたしにもやれる事はあるか?」
それに触発されてエリスも負けじと参戦。
カミラには白身の鍋を頼み、エリスには黄身の鍋を任せる。
この世界にはハンドミキサーや泡立て機はないみたいで箸でやるしかないだろう。
「ふんす!」
袖を捲り、器用に箸を握るエリスは手早く白身を混ぜる一方。
「…………!」
さすがに箸の扱いに不馴れなカミラは箸を握り混むようにしてかき混ぜている。
カシャカシャカシャカシャとリズミカルな箸捌きをみせるエリスの一方。
カシャ、カシャカシャ、カシャカシヤと一生懸命なカミラ。
しかも白身を混ぜるカミラの鍋は水に浮く氷りを下にしているから不安定な状態。
「いつも旅商から買っていたのだが、なるほどなるほど、そうやって作るのだな?」
ベルチェの話しによるとエリスの知らないアイスクリームはエリスが知らないだけらしい。
エリスの箸捌きは絶品で五個分の黄身はあっという間に色がかわり白くなる。
卵だった匂いが砂糖と混ざり美味しそうな香りを漂わせる。
「リュウ、まだか……?」
黄身に関してはこんなもんかな?
「このままの状態で待ってて」
カミラの方はまだかかるかな?
「お兄ちゃん疲れた~!」
カミラの金色の瞳が疲労を訴えている。
「リュウ! おまえはホントに優しいな」
エリスがぼくの思惑に気付いたようだ。
「じゃあ、エリス、次はこの鍋に牛乳二本いれて煮込んでくれる?」
「ふむふむ、沸騰しない程度に軽くなんだったな?」
カマドに鍋を置いてて牛乳に火を入れるエリス。
カミラは必死に頑張っているけれど、ふわふわなメレンゲにはほど遠い。
「かあさんに貸してごらん」
カミラのヘルプにはいるベルチェ。
「こういうのはね、箸を増やすのさ!」
と、さすが長年母親をやってるだけの知恵と工夫!
ガコンガコンと、カマドから鍋をおろしたエリス。
ベルチェからのアイコンタクトはない。
それでもメレンゲ作りにかなり苦戦している様子。
こっちの卵黄ミックスと牛乳が混ざり合う頃には完成するだろう。
エリスの卵黄にまぜながら数回に分けてホットミルクを注ぎ撹拌。
……、そして軽く火入れ。
甘い匂いが広がりトロットロになったところで火からおろす。
「リュウ、こんなもんか?」
ベルチェがかなり頑張ったようで、ツノが立つほどふわっふわなメレンゲも完成したようだ。
あらかじめ用意していた氷水の入ったバケツに鍋をおろして冷やす。




