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第五十五話★ 二日目/リラクゼーションタイム



 座れば調度腰元まで沈む深さのお湯。


 地元では、赤色だったり、無色透明だったり、地域によってさまざまな水質だったり湯加減も違う。


 こっちの世界では薄い黄色の不思議な琥珀色。


  まさか、湯治場である温泉のお湯も馬のおしっこが使われていたり?

  

 ボクは今日だけで数回ポーションを馬のおしっこと言われ飲まされ続けてきた。


 馬のおしっこならまだいいかもしれないけど、終いには、『私のおしっこだ』 とエリスのおしっこを飲まされてしまった。


 

 もちろん、ポーションが馬のおしっこでもエリスのおしっこでもないと説明は受けた。



まぁ、いくら疑っても口に含んだ時の匂いや味は無味無臭だからそのとおりだと思う。

  

  だけどここまでおしっこ、おしっこと連発されるとおしっこを疑ってしまうのは仕方ない。

 

 温泉のお湯の匂いもそう、おしっこの独特な匂いもなければアンモニア集もなかった。

 

 なら大丈夫だろうと、開放的な露天風呂。


 ゆらゆらと立ち上る白い湯煙を吸い込み、ゴツゴツした不揃いな岩肌に身を預け、脚を伸ばす。


 お湯の温度も熱すぎることもなく、ぬるくもない。


「ウヒィ~、いい風呂」


 全身から体内にじわじわと染み込むような感覚。


 「さすがに、頑張り過ぎたかな?」


奴隷開放作戦は見事に成功し、この騒動を収拾するためバーダックの自警団。

 

 だけどボクの演奏がよほどよかったらしく、数少ない町民と別の旅商からのアンコールでその後数曲のリクエストに応えた。

 

アンばぁちゃんの勧めで始まりの町から逃げ出すようにエリスと逃避行。 

 

 逃避行のはずが思わぬ出来事の連続。


 ベルチェとカミラ母娘に見事に誘拐され、ボクはどこかヘ売られそうになっていた。



 そう、ベルチェとカミラは奴隷商人だ。


 奴隷商人として異世界から転移してきたものを捕まえては転売していたらしい。


  だけど、この母娘にはボクみたいな異世界人を捕まえるのにはワケがあった。


 盲目のカミラの情動を激しく刺激して視力を回復させる事。

 

 その為に、お題として一冊のノートを渡され、『月を見せろ!』 と言われた。


 渡されたノートはかなり古く、この世界に誰かが持ち込んだ楽譜だった。


 いくら、ボクがピアニストでも楽譜なしですべての曲目を弾くのはさすがに無理。


 だけどありがたいことにこのノートにはいくつかの楽譜がかきうつされていた。


その中の一曲。

ベートーベン作曲の月光。


 ボクは迷うことなく演奏!


 “ベートーベン作曲、ピアノソナタ第十四番” 月光ソナタ。


 そう、この曲目は感情をはげしく刺激して空に浮かぶ満月を見せることができる神曲。


 ボクは見事そのお題をクリアしたのだけど……。





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