第五十四話 二日目/ダダダッ! ダーン!扉は叩かれる!
「おっ? おっおっおっおっお?」
ロスカートがおどろいたような奇声をあげる。
天板にうつりこむのは白い手に腕をとられ、たたらを踏むように後退するロスカート。
白い手はあの時、ボクの手を掴んで鍵盤へと持ち上げ、そしてエリスの暴走を止めた……。
そして三度目。
ロスカートは白い手に引っ張られ、ドスンッ! と尻餅をつく。
「うげぇ!」
コレ以上もない出来事の連続で心を拘束する鎖から解放されたような感覚!
ぼくはこの瞬間を逃さないことにした。
ーーダ、ダ、ダ、ダーン!ーー
予定していたセットリストを変更。
まずは挨拶代わりに力強く最初のフレーズ!。
まるで、全ての音をぶん殴り叩きのめしたかのように!
今まで、何らかの音があったような気がするけど、全ての音が遠ざかり静寂に包まれる。
ボクを中心に三百六十度に魂を揺さぶるような音圧。
メアリーにどんな伝説や逸話や噂話があったかわからない!
だけどそれを利用しての指折り。
そしてそれ以上にピアノで人を傷つける行為……。
鍵盤の上では賢者の石からの灯りを反射。 まるでボクの心情をあらわすかのように閃光を放つ指輪。
鍵盤の上を飛び交うように尾を弾いて煌めく。
「なんだ!? この音色は……!」
ロスカートが尻餅をついたまま呟く。
「こんなピアノ……、聴いたことがないっ!」
「なんて力強い音なんだ!」
「これがピアニストの実力……」
方々から聴こえる声。
ボクの演奏が聴くもの全てに届いているようだ。
頭に響き、耳をえぐるような音色。
暴力的なまでに殴り付けるメロディーから一転、すぐに聞く者を包み込む優しい音色。
ベートーベン作曲“運命”
この曲は名前の通り力強いインパクトがありどんな状況に身を落としても必ず道は開かれる。
と……。
あなたに必ず祝福は訪れる。
天国への扉を選ぶか?
それとも地獄への扉を選ぶか? それはあなた次第!
ということをこの運命は奏でているのだ。
運命はどんな罪人も悪党も運命の扉を叩けば誰にでも許されるチャンスはあると……。
幸せが訪れ、希望もあるということを伝えているのだ。
ぼくのピアノに身動き一つせずに耳を傾けるロスカートと亡霊団のメンバー、そして奴隷。
もちろんエリス。 そしてベルチェにカミラ。
僅か七分前後の演奏、最後のフレーズが力強いメッセージで聴くもの全ての心に刻みこむ。
ベートーベンの楽曲!あのフレーズは終末をイメージさせる音色なのですが、実はドアをノックする音を、イメージしてるとしたら信じますか?
確かに、あのダダダダーン!の音色実際にノックのリズムですよね?
もしかしたら彼はそこから着想を得たのかもしれませんよね?
もしかしたら、寝坊してしまった彼が盛大なノックに起こされて……、とか、そんなポカから生まれた曲かもしれないし。
真相はわからないけど、空想の余地があると思いませんか?
ダダダダーン! お読み頂いてホントのありがとうございます。
ブクマ、感想、評価などいただけたら励みになります。
お読みいただいたすべての皆さんに運命のノックが聴こえますように☆!
な~んてね……。




