二日目/神様お願いです!助けてください
ロスカートの舐めるような視線を全身で感じながら本日二度目の寒気。
一泡吹かせるためのセットリストはいくつか用意してある。
だけど、それで上手くいくかわからない。
だけど、今のこの状況はそれ以上の問題。
視線によるプレッシャーで身体が動かない。
そこへ、さらに追い討ちをかけるように
「ピアノが弾けるって~? どーれぇぇぇ!?」
と、今度はダミ声による威圧。
だめだっ! 正直いって恐い!
エリスに義理だの人情だのいっておきながらこのザマだ。
情けない……!
作戦失敗?
…………。
鍵盤蓋も開けられず、鍵盤にも指が掛からない絶対絶命なピンチな状態。
そしてさらに追い討ちをかけるように一言、「ほぉ~! メアリーが喜びそうないい指してるじゃねーか!」
ボクの視線は鍵盤蓋を開けようと踠く指先。
「どうした、日本人の小僧ピアニストだなんていって弾けねーのか?」
悪役の挑発。
(神様お願いです。 ボクに力を与えてください。 そしてこの作戦が無事に成功しますよう(に!)
思わず神様に祈った。
「小僧、最後の情けだ。」
悪役はボクにチャンスを与える。
「鍵盤を開けてみろ!」
ボクに鍵盤蓋をあけろという
事はボクに戦場に立てというのと同じ。
戦場に立てればなんとかなるかも……! そう思った。
だけどそれは罠だった。
鍵盤蓋についた赤黒い汚れ、さらに鍵盤自体も赤い染みや茶色い染みが沢山浮いている。
「」グッフッフッフッ」 と、イヤらしい笑い声。
「きたねー鍵盤だろ?」
悪役のお頭はロスカートといったっけ?
この男のいう通り、鍵盤の汚れは鍵盤に触るのを躊躇うような汚さ。
「その汚れは、このピアノが食ってきた人間の跡だ!」
それを聞いてボクの指先は鉛のように重く、指を鍵盤の上にあげるのを不可能にしていた。
ボクの視線もおなじ。
鍵盤に吸い込まれるように目が離せなくなった。
(ゴメン、エリス……。 ボクにはもう無理……!)
作戦を諦めはじめたその時だ。
人差し指で背骨をなぞるかのような、ゾクゾクとした寒気。
ぼくの視線が上がり、天板の裏側。




