第四十ニ話★ 二日目/ボクの思いはエリスに届くか?
白と黒の鍵盤が眼下に広がり、一つ一つのキーがくっきりとわかる。
意識を鍵盤に向けると、恐怖を感じるようなゴーゴーと唸る濁流の音が遠ざかる。
左手薬指の指輪がキラリと光ると同時、鍵盤が音色を奏で始める。
陰鬱な雰囲気でゆっくりとしたメロディー。
だけど、一つ一つの音が互いに共鳴して心に届く。
恐怖を感じさせる濁流をも飲み込むその音色はボク自身のハートにも響く。
ピアノの上におかれた空の小瓶も青く輝く指輪の煌めきを受け止めて輝いている。
いつも以上に賑やかで明るい盤上。
ベルチェとカミラはその音色にウットリと聴き入っている。
単調なメロディーだけど、その中にある孤独な闇夜に希望を与える月の輝き。
もしかしたらカミラとベルチェには第一楽章で感情が高まり見えたのかもしれない。
顔を赤らめモジモジしていたエリスも既にこの第一の雰囲気を感じているかの様子。
カミラは母親の胸にしがみつき身を委ね、ベルチェはカミラの頭をそっと撫で下ろす。
エリスの頰にはうっすらと流れる涙に、この第一がエリスの琴線に触れているのがわかる。
もしも……、もしも! あの時月の光りではなくこの月光だったら違った今を送っていたかもしれない。
不安と悲しみ、孤独と絶望。
儚いイメージのある第一楽章はこうして幕を閉じる。
……。
終止符を打つと、ボク自身エリスとの出会いから今までのことが走馬灯のようにフラッシュバックされる。
でも、エリスとこうして言葉をかわさずとも意志疎通できるとは思っていなかった。
しばらくの間を置いて鍵盤蓋をおろして頭をさげる。
顔をあげると、頰を濡らしていたことに気付き、目元を拭い隣の母娘を見つめるエリス。
カミラとベルチェはそのまま抱き合い余韻に浸っている。
エリスはこの二人になにを思ったのだろうか?
ーーペラリーー
お読みくださる読者様の存在に尊敬と感謝を!
貴重なお時間をいただきまして、すごく嬉しいです。
ブクマや評価、感想レビューなどしてくださると励みになります。
お読みくださる全ての皆様に祝福がありますように!
※活動報告に創作裏話もあります




