第三十五話★ 二日目夜/お月見大作戦
賢者の石の明るい灯りがホコリをかぶっていた一台のピアノを灯す。
「ほ~ぅ、旨いもんだなぁ」
天板の上部と湾曲した独特な形の側板、ピアノの外面の全てが気持ち悪いくらいに汚れていた一方……。
天板を持ち上げれば、光を反射してその存在感を放つ金属製の弦。
さらに鍵盤蓋の下の打鍵は新品同様の輝き。
ボクはベルチェに奴隷として売られるために捕まっていた。
ベルチェの頼みで獣人とのハーフ、盲目のカミラに月を見せるためにピアノを演奏することになった。
正確には、盲目のカミラに月を見せることができたら解放してやる……。と。
「それができたら解放してやんよ」
別に、わざわざ拉致して誘拐というリスクを背負わなくても
『ちょっと月が見たいから演奏してよ!』
と頼まれれば二つ返事で承諾したんだけど、奴隷として売られるのはやっぱり避けたい。
外観は残念な状態だけどピアノの弦も綺麗だしハンマーもしっかりと弦を叩いている。
鍵盤もおかしくないし、調律も狂っていない。
ほんの少しの時間だけど、両手を拘束されていたこともありウォーミングアップで一曲演奏した直後だ。
両手両腕に異常はないし、いつも通りいける!
(いっちょお月見大作戦いきましょうかね!)




